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管理なしで組織を育てるを読んで思うこと

管理なしで組織を育てる
武井浩三(著)

アリの社会形成を学んだのちに、組織を生き物であり、有機的なものだと考えて、その考えに従って実践している人がいることを知りました。タイトルと帯にあるように「管理なし」「PDCAを回さない」「目標・予算・指示命令は不要」という組織を育てるという、あることが当たり前のことがない組織がうまくいく想像できなかったので、読んでみることにしました。

それこそ水と日光で育つ植物みたいな組織で、肥料や散水の管理もしていないけれど、ちゃんと花が咲き、実ができるというように成果と利益が出る組織というイメージであっているのだろうか?と自信なく読みました。

気になった箇所が多すぎて付箋だらけになりました。

どんな本か

筆者が「良い組織にするためには?」というストーリーがまとめられている本です。図があり、文章も武井さんが考えていることをそのまま話しているかのように書かれているので、理解しやすくわかりやすいです。

こうすれば「管理しない経営」ができるみたいな本かと思っていましたが、今も完璧ではないので組織づくりを体系的にまとめて「教える」のはしっくりこないので、正直にストーリーを語ることで参考にしてもらいたいという思いでこの形になったそうです。

「餅は餅屋に」という話から文章を書くのはやつづかさんという方がされていて、武井さんは最後の「謝辞」以外自分の手で書いていないという衝撃の事実が「おわりに」に書かれています。それは「良い本にするためには?」ということが考えられた結果なんだと思います。

筆者の思い

今、組織の中でどうしようもない歯痒さを感じている人へ。

もしかしたら皆さんの脳裏には、自分の組織がうまくいかないのは「あの人」のせいだ、という、誰かを責めたい気持ちもあるのではないかと思う。それらを否定はしないけれど、視線を「人」から「組織の形」へと移してみると、新しい発見があるはずだ。

これを読んでいるあなたが、今の働き方や組織に疑問や違和感を覚えているのだとすれば、これからお伝えする僕らの考え方や実践を、新しいやり方を切り拓くヒントにしてもらえれば嬉しい。

仕組みや環境を整えればみんなが会社のことを考えて動けるということをロジカルに整理して世の中に伝えることで、他の会社でも管理しない経営ができるようになるはずだ。それが世の中に広がっていき、やがては資本市場のあり方まで変わっていくのが僕の理想だ。 

読んでのまとめスケッチ

比較で気になった項目をピックアップしました。

読んで思ったことと気づいたこと

自然に則った組織として、コントロールは放棄し、成長の阻害要因は徹底的に排除したら、メンバー一人ひとりが、そして会社が自然と強くなるという結果になったということです。「自然の摂理に則った経営」でこれが実現できるなら、全ての組織はもうこの形でいいのではないかという結果に思えます。

逆を知ることで今を知る

自然な経営とは何か?管理しない経営とは何か?なんとなくわかるように思えますが、簡単には想像できず、すぐに理解することができませんでした。いつも過ごしている組織が世間一般的な管理する組織であるからだと思います。

この本を読み、管理しない組織を知ることで、今の組織がいままでよりもクリアに見えてきたので、今の組織の特徴や問題と比較することで整理したいと思います。

逆を考えると今がわかることとして、日本語しか知らないと日本語の特徴や特殊性はわかりませんが、英語を学ぶことで日本語の特徴がわかるようになるのが良い例かなと思います。

S+V+Oといった主語述語がある文法とは違い、曖昧な文法だと気づいたり、アルファベット26字(大文字入れても52字)に対してのひらがな・カタカナ・漢字のあまりにも覚える文字数が多いことへの驚きだったり、英語から日本語の特徴を知ることができるイメージだと思ってもらえればと思います。

自然の摂理に則った経営とは

自然の摂理とは?ということですが、逆で考えると不自然なことをやらないということなのかと思います。アリのような自然の社会性生物や環境に合ったものが結果として残るようなことを自然と考えて、それ以外のことを不自然と考えてみます。気になる項目を挙げて行ったら、かなりながくなってしまったので、気になるところをチョイスしてみてもらえればと思います。

複雑な上下関係がある:ヒエラルキー型組織
ホラクラシー型組織

上から下への複数階層のピラミッドのようなヒエラルキー型の組織ではなく、アリやハチの女王とそれ以下みたいな感じです。会社も役員は1人必要だそうで、選挙で選んでいるそうです。役員とそれ以外は平社員で、この役員も上司ではないので、全員で平面的に存在する組織です。

みんなで話し合いながら考え続けて行く方が、自分にもみんなにも、会社や社会にとっても良いと思っている。僕だけでなくそれぞれの社員についても、みんなが精神性を高めてエゴのない会社を作りましょうーみたいなことは難しいと思っている。それよりは、エゴの入り込まないような仕組みや環境を整えることの方がシンプルで簡単だ。だから、誰もが自分のためではなく会社にとって良いこととは何か?を自然に考えられるような方法を追求してきた。

ということで上下関係のないフラットな組織構造になってます。「これをやりたい」という意思を持った人がリーダーシップを発揮し、周りから認められた人が自然にリーダーになり、周りの人がパズルみたいに組み合いながら会社として必要な機能を実現する組織だそうです。

クルマを作りたいと思って、いろんな形のLEGOの今あるパーツから形を組み立てていくような感じかなと感じました。パーツは短いや長い、薄いや厚い、まっすぐや斜め、など違いますがパーツ自体に優劣はないですし、どこかに必要なパーツとして位置できるのでイメージに近かったです。

個人のエゴで決められていく:一方的に命令して従わせる関係
対等な関係でみんなで進める

みんなで相談して決めているので、うまくいってないよね、やめたほうがいいんじゃない、という意見が言いやすい。「良くないな」「おかしいな」と思っていることがあれば誰もがそれを表明できて、どんどん変えていけるということが、とても重要だと書かれています。

階層主義で合意主義(反対は平等主義でトップダウン式)の日本の場合で、平等主義になるとこの考え方で物事を進めていけそうな気がしました。上司が言っているからという忖度があるとなんかよくわからないし、意味なさそうだけどやってしまうことがあると思います。

脱線しますが、民主主義や三権分立などの今の社会システムは、互いが互いを管理する形にして、1人の優秀な人ならうまくいくけど、最低な人が担ったら瓦解する社会システムではなく、意思決定スピードは遅いけれど最悪な状況にならないようにする仕組みのようです。いろんな失敗の元に今の社会が形成されているんだなと前に思ったので、記載しておきます。

負担がずっと限られたメンバーにかかる:頑張る人が頑張る男気経営
色んな人がいつも組織として持続していける状態

個人の頑張りやムリを元に成り立たせるのではなく、パレートの法則をうまく活用している状態で、個人によるムラを活用しながらムダにも時間を割いて2割が主の業務をしている状態かなと思います。

「発揮できる能力は全部発揮してね」
「足りない部分はそれを持っている別の人がやればいいい」
「その人が持つ能力を世の中に対して最大限使い切る」

ということが理想だそうなので、ムラとムダにも全集中な組織状態です。大変です。

無駄なことが排除されない:仕事が減らずに増えていく
誰もやりたくないなら、その仕事はそもそも必要のない仕事だった

「こんなことやりたくない」と文句を言いながらやっているのなら、「やらなけれいいじゃん。誰もお前にやれとは言ってない」と言われておしまいとのことで、誰もが無駄だと思うような仕事は、自然になくなるという自然選択がされていくそうです。これも雑多な仕事(ブルシットジョブ)が増えることが多い世の中で、うまく仕事を減らせる仕組みだなと感じました。

※ただし、これによる弊害として「いいから黙ってやれ」とは言えなくなるという面倒くさい面があるそうです。

前の世代の最大効率が続けられている:アナログ時代の最大効率の組織
環境に合わせた最適な行動をする

アナログな世界では1対多のコミュニケーションが最も効率的な情報の伝え方だったので、組織形態も合わせたヒエラルキー型組織が普及してきたそうです。ボトムアップで意見をあげていく形がとられていたりしますが、大企業ほど上下の差が大きいので意思含めて情報が届きづらいように思えます。

チャットソフトなどのデジタル活用が一般的になってきたので、多対多のコミュニケーションを取るようにしていくことがこれからは最大効率としてその環境に合わせた組織が作られていくのかもしれません。とはいえ、多対多のコミュニケーションを行うためにも、日常的なコミュニケーションを活性化していくことが必要で、そのためには1〜3が有効だそうです。

1.ITを活用したコミュニケーション内容の可視化
2.雑談しやすい環境づくり
3.ブレイン・ストーミングで力関係の偏りをなくす

確かに、何か言うと反対されたり、意見を出しても取り入れなかったり、とにかく話しづらい環境では多対多の環境でも結果1対2、3になっちゃっていることあるなぁと思いました。まずはできる環境を作らないとデジタルをどれだけ活用しても、0.1づつバージョンが更新されていっているだけで、現在の環境に最適な形なバージョンアップがなされていない状態かなと思っています。

組織の形に人を当てはめていく
個人の意識ではなく、仕組み作りで組織を変える

視線を「人」から「組織の形」に目を向けていくことを進めていくと、このような取り組みになっていくのかと思います。

組織ありきだと人が当てはめられていってしまい、ピーターの法則(優秀な人が上がっていくけど、割り当てられてた業務ができなくなって無能な上司となってしまうようなこと)が起きてしまうという悲しいことが起こりえます。組織(体制)ありきで人を無視した形なのかと思われます。

将棋で無理やり例えると、桂馬が前の戦で活躍したという理由で銀のポジションに入ってしまうと、後ろに下がるべき時でも斜め前に進んでしまい、敵に取られて負けてしまうことが起きちゃいます、多分。桂馬は斜めちょっと前に進むという特性(個性)を理解して桂馬は桂馬の位置にいるべきだよね、だけでなく、歩が前で飛車角が真ん中で後ろの王とそのほかがいる並べ方から変えていく、ということが「人」から「組織」に目を向けるということだと思いました。それはもう従来の将棋ではないのですが、将棋の盤で将棋ではない形で将棋を指して新たな形を創造していくことになるかなと思います。ので最初は理解されないのだと思います。とはいえ多くの場合、現実では歩が9枚あるとは限らないので、適した組織にしていこうという考えが良いのではないかと思います。

目標管理型の評価:目標設定の形骸化
存在価値での評価

「成果」ではなく「実力」を給料の基準にする。人の存在価値みたいなものによって決まる。「存在価値」=「会社の資産を増やす力」と考えられてます。本来評価されるべきなのは、PL(損益計算書)ではなくBS(貸借対照表)にあたる、会社の資産を増やす動きだ、とも書かれています。

それはそれでいまいち意味が理解できないので、仕事でいうと発注者との信頼関係、協力業者との友好な関係、組織内の知識や経験の整理、部下や派遣社員の成長、などの数値化できないけど大事なことと考えて良いかと思います。

数値化しづらい上に今の行動がどう影響されるかもわからないので、結果でしかわからないことも多く、さらに事前の目標設定が難しくなるのが難点です。そして自分ではなく周りからしか評価を受けづらいので、評価方法の変更も必要になりそうです。

情報を隠そうとする意識:機密事項の設定とアクセス制限
あらゆる情報をオープンにする

評価と給料も見せてしまってもいいんじゃないかという気もします。この前、チームの人に普通に見せましたが、見られるが嫌だなという気持ちもなんとなくわかります。ただ見せることで透明性があがり、納得できる組織に近づくように思えます。

客観的なデータが充実すると結果と効果が目に見えるので、会議の時間が笑えるくらい短くなるそうです。そのためにはデータにアクセスしやすい状態にすることが必要で、データの入手と整理をITを使うように考えることが重要になります。

ただ、その前にどのようにデータを取るか、データをどうタグ付けや関連付けしてまとめておくかに頭を使うことが必要になります。データ活用やIT利用と言われる中、みんなが理解しながら変化していかないのはこの部分を考えて実現することが、みんなのコンセンサスを取ること含めて、難しいのが1番大変だからかと思ってます。

ちなみに給料をみんなで決めると「あの人があの金額ならあの人はもっと貰えていいはずだ」みたいな声が上がり、給料バブルが起きて、はじけて大変なことになるそうです。

インフレ続ける社会を前提としている:資本主義社会
インフレの時もデフレの時も同じようにサステイナブルである社会

「社会システム」は「インフレし続ける社会」つまり無限成長の世界を前提に作られてきたことがわかる。これから求められる社会は、インフレの時もデフレの時も同じようにサステイナブルである社会。

環境を変えれば人間の行動が変わり、やがては意識も変わっていくことがある。とも書かれています。SDGsやESGなど社会として求められるものが変わっているので、今後の社会で求められる組織も変わっていくように思えます。

そう考えると今の社会も歴史の流れから今の資本主義になっているので、環境の中で求められた社会になっていると言えます。その流れで組織も生まれているので、今までの組織が悪いとか、誰か個人が悪い、ということではなくその時々で1番良いと考えられる、もしくは自然と今の組織が生まれてきているとも思えます。資本主義で全体として豊かになり、貧困と飢餓は少なくなっているので良い面もあります。大きな流れの中の変化していく一部分としての今を生きているという感覚を得ました。

否定したくなる時の対応

今回の本は、今の組織とかなり逆なので、整理する中で本に書かれている組織が正として、今を完全否定するような形になってしまいました。

なんとなくよくあることとして、自分の今を否定されていると感じると防衛のために反射的に否定したり、粗探しをする、重箱の隅をつつく、判例を提示したりとしてしまいがちだと思います。ちょっと冷静になれば、そのことについてめちゃくちゃ考えている人に、パッと思いついたことで否定したところで、そんなことに関してはすでに考えられていて、解決していたりする問題だったりするんだろうなと思います。

ザメンホフの作った世界共通言語のエスペラントの話やマルクスが書いた(エンゲルスが2、3巻はまとめた)資本論の話を聞いていてそう思えるようになりました。

今回は参考文献としてあげてあるティール組織の本や経営に関する本など難しそうな本の一覧を見ていると、反論したとしても、自分の中にある知識で出しえる論理だけで否定しているだけだったりするので、結構浅かったり、感情よりの意見になってしまうだろうなと思いました。

本を読んで否定することを書こうとする前に、何を学べたか、何が良い箇所か、これからどう考えていくか、という思考が必要なのだろうなと改めて思いました。それでも自分と合わないところは、そう言った意見もあるんだな程度で考えておくのが良い気がしました。

変わる社会とそれぞれの組織

IT技術の進歩でどこにいてもある程度仕事ができるようになったりで、テレワークや時短勤務などの導入された働き方があり、より多くの人が自分に沿った働き方が出来るようになってきていると思います。社会の変化により自然と組織が変わり、それがプラスに影響する組織もマイナスに影響する組織もあると思います。

その中でどういう組織にしたいか、なりたいかを考えて、その方向に進んでいる組織を真似してみるというのが効率よくて、割と導入しやすい方法ではないかと考えました。

本にも管理しない経営を実現したいという会社に対しては、「とにかく情報を透明にしましょう」と言って、ある意味、形から入ることを勧めている。

自然経営の価値みたいなものはまだ分からなくても、とりあえず給料をオープンにしてみると、隠れていた課題が見えるようになり、みんなで議論をせざるを得なくなり、組織は勝手に自然経営的なものになっていく、という順番だ。

本書p189

と書かれています。なりたい組織の形の一部を入れてみて、それぞれの組織で隠れていた課題を発見し、議論して進めていくということが良さそうです。全てがうまくいくかわからないけれど、議論の結果に合わせたそれぞれの形があっても良いのではないかと思います。

個人もそれぞれにあった形があるのと同様に、その個人が集まってできている組織も組織ごとにそれぞれの形があり、それぞれの経営があります。「自然に摂理に則った経営」が理想ではないかと最初に書きましたが、それぞれの組織にあった形を社会の変化に合わせていき、みんなが働きやすい形を目指すことこそが、自然の摂理に則っていて、その結果うまれた経営がその組織にとっての無理のない自然な形なんだろうなと思いました。


最後に

確かに、と思った分を紹介して終わります。

制度やルールを作るよりも、なるべく自由度を上げて、一人ひとりに任せるのが、みんなの幸せにつながる方法なのではないだろうか。だから僕は、会社として努力すべきなのは制度やルールを細かく作ることではなく、みんなの自由に任せても、暴走しないでちゃんと一つの会社でいられる状態をいかに作るか、ということだと思う。

本書p192


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