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本能スイッチを読んで思うこと

本能スイッチ
博報堂ヒット習慣メーカーズ(著)

歯磨き粉にミント味がふくまれているのは磨いた後に綺麗になった感じがするからだそうで、実際に綺麗にする効果はないそうです。「なんでそんな本質的ではないことがおこなわれているか?」が説明されている本があるので購入してみました。疲れた時によく飲んでいるエナジードリンクのパッケージや液体自体にビビットなカラーがついているのは、色の心理効果による発奮効果のために付けられているそうです。

つい買ってしまいました。

どんな本か

本能スイッチとは人間の本能を刺激する、一見無駄だけどついつい欲しくなってしまう演出のこととされています。本来は習慣化するために必要な要素で触媒というそうです。歯磨き粉なども身近な商品や状況について、〈メリット〉x〈本能スイッチのタイプ〉x〈仕込む場所〉=〈本能スイッチ〉という式で説明されています。

ヒット習慣メーカーズのメンバーが普段の業務を通じて発掘したさまざまな本能スイッチの具体事例を余すことなく紹介していきますので、それはそうだねというものから、へぇ〜というものまで色々あって楽しめます。 

読んでのまとめスケッチ

5つのタイプは1番ハラ落ちした例を選びました。

著者の考え

私は広告会社でマーケティングも仕事をしていますが、成功しているマーケティング例を見てみると、論理的に説明しにくいことが多く含まれていているなと感じるようになりました。なぜ歯磨き粉はミントの味がするのか?なぜエナジードリンクは独特な液色をつけているのか?など、一見無駄なことに、成功の要因が詰まっているのです。

ついやりたくなる衝動を顧客体験に組み込んでおく必要性を普段の業務を通じて強く感じたのが、この本を執筆したきっかけです。本書をきっかけとして、面白い商品が生まれ、社会がもっと楽しくなったら、それ以上の喜びはありません。

読んでの感想

一見無駄なようでも意味がある要素を考え、組み合わせで答えを見つけていく方法が読んでいて、なんとなく成功する形を見ることができました。最後のケーススタディをやってみるとやり方も少しわかるので、実際にできるようになるのは難しいと思いますが、そのヒントをもらえる本でした。

そのヒントとなる重要な考え方は、
「アタマで考えるんじゃなくて、ハラワタで考えるんだ」
「“あえて”の発想法」
であると思います。

「あえて」というと学生時代の建築学科で同期が教授の質問に対し、「あえてこういう設計にしていいます」と言い切ったら、教授にボロカスに言われていた記憶があります。とりあえず逆にしてみた!以上の理由がなかったのが怒られたわけだと思いますが、まずは基本を学んでほしいという思いもあったと思います。

20年くらい前の話は置いといて、正しい答えを真面目に出していくときには、「あえて」という考えは出てこない気がします。社会人になってからは特に、まともな議論で正しく計画がされることが良いこととされ、より効率的に合理的に考えるようになってきます。それはそれで良いと思うのですが、最善の案は出せたとしても、最高の案を出すことは難しいのでは、と感じました。

その常識の外に出るためには、“あえて”と考えてみる方法が簡単にいつもと逆を考えれるので、この発想法がハラ落ちする最高の案が生み出せる可能性があると思います。

常識内で正しい(=効率的、合理的、道徳的)とつまらないので売れない。
→それを打ち破るには常識の外に出ないといけない。
→その常識を打ち破るためには、「“あえて”の発想法」で考える。
→その結果出たアイデアを「正しいけどつまらない<正しくて面白い<正しくなくて面白い」の価値基準で評価する。
→その結果、無駄だけど味のある本能スイッチを刺激するアイデアが整理できる。

ざっとまとめるとこんなイメージかと思います。

いま、必要とされている(購入されている)ものが生み出される背景には、ハラ落ちする本能的な思考が存在していると思えました。

発想法は“あえて”と考えるとして、その発想のもとになる知識が必要となります。最高の料理方法を知っていても、材料がなければ料理は作れないみたいな感じです。結局は知識がないと何もできないと思っていたら、その通りのことが本にも書かれていました。

インプットは多ければ多いほどアウトプットは多くなります。材料が多ければ出せる料理も多くなるけれど、材料も素材や調味料など様々なものがないと複雑な料理が作れません。なので、インプットも一つのことにこだわると偏り過ぎてしまうんだろうなと思っています。

もちろんインプットを一点集中して深く深く潜っていくことで、面を突き破って突破することが出来て、技術革新が起きることがあると思います。研究者の方が常識を覆す発見をされているのがその理由です。ただそんなスペシャリストではない自分は広く知識をとり、掛け合わせて考える方が性に合っているな(とうよりそれしかできないな)と当たり前のことを思いました。一点突破の知識を取るのではなく、ここでも“あえて”逆の知識をとりにいくとで、偏りすぎなくなること、相違点だけでなく類似点に気づくことができ、知識を広げられると思います。

そう思った理由は、Spotifyで「a scope」という番組を最近聞いています。COTENの深井さんがメインキャスターの番組です。その番組でキリスト教を聞いて仏教との違いを聞いていて、キリスト教すごいなぁと思った後、仏教の回を聞いたら、いやいや仏教もすごいじゃんとなったことから来ています。

深く掘ることも必要だけど、1箇所だと周りが見えなくなってしまうので、色々な視点を知り、知識の面・把握している範囲を広げていく感覚が必要なんだなと感じました。視点が1点だと掘り進んだ先にしか視点がないですが、別の場所にも掘った穴があると知っていると穴の外に出てて俯瞰的に地上をみることができて、そういう視点を他に持つことが重要だと思います。それぞれの場所から掘っていくと近い穴と少し繋がってきたりすることもあり、新しい発見もありそうな気がします。

常識もある時代のある場所のある文脈、関係性からによるものなので、局地的な情報です。そこを前提にしていると深く周りが見えなくなってしまいます。常識から逃れるには“あえて”違う時代、場所、コンテクストから考えることが必要です。時間軸を入れた世界地図のようなマップを意識しながらインプットも思考もアウトプットもできるようになるとすごいことができるようになる感覚を得れたもののそこに到達できるのかは不明です。俯瞰して見える思考が重要で、結論メタ認知が重要だということにおさまりました。

自分の話になりますが、物事を考える際に既存のルール内で正しい答えを出すことは割とできると思うのですが、そのルールを無視して前提を考え直してより良い答えに到達することはなかなか出来ないし、そのように考えることが苦手だと自覚してます。

惑星の動きを天動説でうまく説明することはできるけれど、地動説をとなえて説明することはできない人間で、コペルニクス的な人間ではないなぁと感じてます。そんなコペルニクスな人はそもそもすくないかもしれませんが、偶然にも良い思考法をこの本から学ぶことができたので、ついてたなと思いました。またインプットは色々と多方面に気になることを気になる順に学んでいってもいいんだなと思うことができ、安心感を得られました。

「あえて」と言った同期もその作品が発表会の作品に選ばれていたので、教授のハラワタに届くものがあったからだと思いますが、ある程度は説明できないとダメなんだなと改めて思いました。

そんな時にも、〈メリット〉x〈本能スイッチのタイプ〉x〈仕込む場所〉=〈本能スイッチ〉という式をで後付けの理由を考えることに使えるし、使ったほうが良いと思います。

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