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ハナショウブ関連 言葉の整理 広瀬典丈

 他言語では普通、アヤメ属(アイリス)をまとめる呼び名がありますが、現在日本語では確定していません。似た花葉の区別を巡る混乱もありますので、ハナショウブ関連のについて4項目、私の考え方を述べます。

アヤメ=綾目は布の織り目。アヤメ草=綾目草とは葉が織り重なって茂る様を指す一般名だった

1.アヤメグサ
 ①歴史的順序で、アヤメ綾目布の織り目アヤメ草(綾目草)とは織り重なって茂るイネ科など単子葉植物の様を指す一般名だった。
 ②「ほととぎす鳴くや五月(さつき)のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」十世紀「古今和歌集」。この時代のアヤメ草代表は今で言う匂いショウブ綾目を対比させている。
 「ほととぎす啼(なく)や五尺の菖草(あやめぐさ)江戸期芭蕉五尺アヤメも真っすぐ上に伸びるの形容で同じ発想。因みにハナショウブと葉がそっくりな匂いショウブサトイモ近縁でアヤメ属とは異なる

アヤメグサ・花アヤメが菖蒲と記述され、ショウブと呼ばれるようになった。→ハナショウブ

2.アヤメグサ・花アヤメが菖蒲と記述され、ショウブと呼ばれるようになった経緯
 ③8世紀以来の「花アヤメ」はハナショウブ原種ノハナショウブなどアヤメ属の広呼称。ハナショウブが栽培化されたのは十六世紀以降。
 ④10世紀奈良時代の漢学者がアヤメグサに、間違って菖蒲の字を当て、花アヤメ花菖蒲と記述された。
 ⑤菖蒲を(アヤメ)でなく(ショウブ)と呼ぶ人が増え、ショウブハナショウブの呼称が定着。さらにハナショウブハナが略されるようになった。対して、匂いショウブ名も広がりつつある

カキツバタは「伊勢物語」「歌枕八つ橋」とも対比連想が重ねられて来た

3.カキツバタ
 ⑤カキツバタ十世紀伊勢物語」第9段「唐衣着つつ慣れにし妻 しあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」「歌枕八つ橋とも対比連想が重ねられて来た経緯で、特別扱いされる。
 ⑥水辺に群生する水もの花材ハナショウブは垂れた花びら基部に黄筋が入り、カキツバタ淡黄斑紋がある。万葉集にも7首読まれ、名称由来は染色に使う花摺り描き付け花による。花アヤメカキツバタも指し、花札のアヤメカキツバタと思われる。

19世紀末以降アヤメという呼称が流布したアヤメ属の花

4.「現在アヤメと呼ばれているアヤメ属
 ⑦ショウブハナショウブ名が普及しても、アヤメ属総称としての花アヤメアヤメ名は残り、今も使う人は多い。
 ⑧ところが、花びら基部網目模様があり、草地自生するアヤメ種がある。19世紀末アヤメとはこれをを指すとする主張が生まれ、現在はこの考えが流布している。


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