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THANKS DRESS SHOW ~Miyabi & Yukikoペア~ ⑥

こちらの記事のつづきです。

信頼して待つ勇気

Miyabiさんは
ドレスデザイナーaicoさんの
bom bom ドレスが好きで
「いつか着てみたい」
と思っていました

6月、私が千葉で
ドレスを着たときには
私のインスタの投稿に
コメントをくれて

私がドレスイベントの
会場探しをしているときの投稿には
「もう募集は
終わっちゃいましたか」
とコメントをくれて

その前のめりな姿勢に
強い思いを感じた私は、
「募集するときには
優先的に声をかけるね」
と約束をして
それが実現しました

「ありがとうを伝えたい人と一緒に
ペアでドレスを着て
ランウェイを歩く」
というコンセプトを伝えたとき、
Miyabiさんが選んだのは
友人のYukikoさんでした

aicoさんはドレスを制作するため、
そして私は
イベント当日に
二人の関係性を紹介する
ナレーション原稿を作るため、
オンラインでのヒアリングを
セッティング

ところが、
Miyabiさんは体調を崩して
ヒアリングは延期になりました

「体調が回復した」
と連絡が入って
ヒアリングを実施したのが
イベントの10日前

二人に質問をしたものの、
ナレーション原稿の核となるような
エピソードが聴けないまま
終わってしまって
正直、困ったなと
頭を悩ませます

ナレーターチームが
原稿読みの練習をする時間を考えると
原稿は2日後くらいには仕上げたい
という焦りも出ました

そこで、
「他のペアに比べて
エピソードのインパクトが
ちょっと弱いので
追加インタビューさせてください。
二人の関係性を表す
コレ!というものを入れたいです」
と伝えました

実は、私のこの一言が
その後、二人を悩ますことに
なってしまったのです

後から分かったのですが、
Miyabiさんは
「私がこのイベントに
参加してよかったのか」
と思い悩み、

Yukikoさんは
「Miyabiちゃんのペアの相手は
私じゃない方がよかったのでは…」
と思い悩んでいました

二人には申し訳ないことをしてしまった
と反省したのですが、
後々、二人はこのイベントに
欠かせない存在だったということが
明らかになっていきます

ランウェイ用の音楽を
選曲している最中に、
Miyabiさんから
「ちょっとしんどいので横になります」
との連絡が入りました

Miyabiさんの体調が
まだ万全ではないと感じた私は、
無理せずに自分のペースで
準備を進めてほしいということ、

そして、

今回、私も
頭で考えて動くのではなくて
「今この瞬間、何をしたいか」
の連続で過ごしながら
イベントの準備をする
チャレンジをしているから、
Miyabiさんたちも
実験だと思って
自分の感覚に従って
動いてみてほしい

ということを伝えました

私は元来とても怖がりで、
きっちり段取りを組んで
早めに準備を進めるタイプ

でも、数か月前の演奏会で
ロビーでの写真展示に
チャレンジしたときに
アイデアが降りてきたのは
演奏会の2日前でした

「人は安心したいから
早くに色々なことを決めたがるけど
アイデアは直前に降ってくる」

それを実感しつつあった私は
「起こることを信頼して
感覚が来るまで待つ」
ということをしたかった

とはいえ、
期限があるものを
自分の感覚で動きたくなるまで
待つというのは
かなり怖いこと

そんな私の思いに
Yukikoさんは賛同して
予祝をしてくれました

「ゆっこさん、
イベント大成功
おめでとうございます!
Miyabiちゃん、
誘ってくれて本当にありがとう。
aicoちゃんのドレスが
めちゃくちゃ素敵で、
全員が輝いていて、
私たちは私たちらしい
ランウェイを見せられて、
思いっきり楽しめたね!
会場のお客さんも素敵で
最高の一日だった!」

今、改めて
Yukikoさんの言葉を
読み返してみて、
その言葉通りになったことに
深い感動を覚えます

Miyabiさんにとっても
これはきっと
必要なデトックスなのかもしれない
と思いました

と言いつつ、
現金なもので
イベント5日前になったとき
Miyabiさんから連絡が来ないことに
ソワソワし始めました

ただ、
その日は一日用事が入っていて
たとえMiyabiさんに
連絡したとしても
私は動けません

「今は、今やるべきことに集中して、
明日連絡をしよう」

そう思ったら
気持ちが落ち着きました

翌朝、
Miyabiさんに連絡を取ると
「今日、Yukikoちゃんと
打ち合わせをします」
と返事が来ました

ランウェイの曲は
Yukikoさんのインスピレーションで
ビョークの”Hyperballad”に決まり、
Miyabiさんへのインタビューは
イベント3日前の夜に
実施することになりました

思い込みが外れてアイデアが降りてくる

すると、
その日の真夜中に
aicoさんから
泣きのメッセージが入りました

「ごめんなさい。
粘ったんだけど、
二組分のペアドレスのアイデアが
どうしても降りてこない。
悔しいけど、今の私には難しい」

「よかったら今から
おしゃべりしない?」
と私は提案しました

ペアのドレスを創るのは
aicoさんにとって
初めての挑戦でした

「ペアにしなくちゃ!」と思うと
各々の個性が立たなくなってしまう
というジレンマに陥っていました

そして、
8人分のドレスの
色や雰囲気を被らないようにするのに
苦戦していました

私は、aicoさんに
ここまでチャレンジしてくれたことへの
感謝を伝えて、
「ペアとはこうあるもの」
「色や雰囲気が被ってはいけない」
という概念を一回捨てて
好きに創ってみてほしいと言いました

ホッとして気が楽になったaicoさんに
早速、素晴らしいアイデアが
降りてきました

こうして、
翌朝からaicoさんの
怒涛の快進撃が始まります

一方、私も
Miyabiさんたちの
ナレーション原稿作りに
不安を抱えていることを
aicoさんに打ち明けました

「コレ!といった二人のエピソードが
まだ聞けてなくて」
とこぼす私に、
aicoさんはあっさりと言いました

「あの二人には
コレといったエピソードは
ないと思うから、
追加で聞いても出てこんと思う。
なくてもええんやない?」

aicoさんのこの一言で
私も気が楽になりました

翌朝、
aicoさんとの会話の内容を
夫に話していたときに
気づきが起こりました

私は、
「ナレーションで
二人の物語を共有した上で
観客にランウェイを見てもらう」
という形に囚われていました

だから、
「全てのペアに
ドラマチックなエピソードが必要」
と思い込んでいました

よくよく考えてみたら
色々なペアがあっていいわけで

「むしろこのペアは
ナレーションは必要ないんじゃないか。
ショー開始と同時に
いきなり曲を流して、
トップバッターとして
ランウェイを歩いた方が
二人の個性を生かせると思う」

と夫が言いました

たしかに、
二人はすでに何度か
舞台にチャレンジしていて
舞台慣れしているし、
アーティストとしての
世界観を持っているから
その存在感だけで十分に魅せられる
と思いました

それに、
「ナレーション→ランウェイ」
のパターンを4回繰り返すのは
お客さんも途中で
お腹がいっぱいになりそう

そんな気づきを
aicoさんにシェアしたら、
「二人はショーの案内人やな」
との返事がありました

イベント開催の3日前に
ようやく最後のパズルのピースが
ぴたりとハマりました

ショーの案内人である魔女と妖精のドレス

ランウェイに使う
ビョークのミステリアスな曲を
何度も聴き込んだaicoさんが
二人のために用意したのは
魔女と妖精のドレスでした

ドレスの写真を見た二人は、
アーティスト魂に
火が付きました

Miyabiさんは
魔女のドレスに合いそうなウィッグを
ネット検索して数点注文し、
ヘッドドレスも作成

ウィッグの準備をする

Yukikoさんは
頭に自作の花飾りを
付けることに

さらに二人は
「aicoちゃんのお父さんが制作した
白い花のオブジェをレンタルしたい」
と申し出ました

二人のこだわりや
ショーにかける意気込みを感じて、
当日はたくさんの人たちが
二人の本気の遊び方に
魅了される予感がしました

イベントの前は
いつも気持ちが落ち着かずに
オロオロしていたというMiyabiさん

そんなMiyabiさんに
「落ち着いて」と声をかけるのが
Yukikoさんの役目でした

今回のMiyabiさんは
終始落ち着いていて
どっしりとした安定感がありました

体のデトックスを経て、
本来の彼女が
現れたのかもしれません

二人ともリラックスをして
ランウェイを存分に
楽しんでいたのが印象的でした

トップバッターの二人が
果たした役割はとても大きくて

魔女と妖精のなりきり具合や
白い花のステッキを
客席に向かって振るパフォーマンス、
そして、
振り付けを間違えたことを
笑って楽しむ二人の姿は、
「ここでは何をやってもOKなんだ」
という安心感を
他のペアたちに与えました

魔女Miyabiの
慈愛に満ちた微笑みは
観客を夢の世界に優しく誘い、
振り付けを間違えた後の
妖精Yukikoのとっさの機転は
そんな魔女の心を支えました



「このペアの第一印象が
”個性の強い怪しい二人”だったから
謎めいたドレスを創りたかった」
というaicoさん

はじめは
赤と黒のピエロのような
ペアドレスを創ったのですが、
ランウェイの音楽を聴き込むと
魔女と妖精のイメージが
降りてきました

そして、
最初に創ったドレスを
あっさりと手放しました

そんな彼女の
粘り強さと潔さから
このペアドレスは生まれました

ショーの案内人の役割を
見事に果たした二人は、
その後は客席から
愛の眼差しを送り続けていました

魔女と妖精の涙とほほ笑みが
今も私の心を温め続けています

【THANKS DRESS SHOW ⑦】へつづく

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