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『イリアス』と『オデュッセイア』を読み通すための道案内 (10)

前半の時系列

『オデュッセイア』も全24歌からなるが、第12歌までの前半は、オデュッセウスがイタケに戻るまでの冒険譚である。
 時間順に次のような出来事がある。

トロイア戦争終結
→祖国イタケに向けて部下と出発
→嵐
→キュクロプスの島へ
→オデュッセウス、キュクロプスに酒を飲ませて目を突き脱出
→アイオロスの島へ
→アイオロス、嵐を袋につめる
→オデュッセウス、出発
→宝が入っていると部下が誤認して、袋を開放する
→嵐
→オデュッセウス、アイオロスの島へ戻される
→オデュッセウス、島を追い出される
→テレピュロスへ
→ライストリュゴネス族に部下を食われる
→脱出
→アイアイエの島へ
→キルケ、毒を飲ませて部下を豚に化かす
→オデュッセウス、部下を救出
→キルケ、オデュッセウスに指示「冥府へ行き、予言者に会え」
→冥府へ
→部下・母・英雄の亡霊と会う
→予言者テイレシアスと会う
→アイアイエの島へ
→キルケの指示「セイレーンを避け、スキュレから逃げ、トリナキエ島で家畜を殺すな」
→出発
→セイレーン避ける
→スキュレと遭遇、部下が死ぬ
→危険な潮のある岩を回避
→トリナキエ島へ
→部下が家畜の牛を殺す
→嵐
→オギュギエ島へ
→オデュッセウス、カリュプソに軟禁される(7年間)
(アテネ、ゼウスに相談
→アテネ、イタケへ テレマコスに父の捜索を指示
→テレマコス演説、出発
→テレマコス、ピュロスへ ネストルに会う
→テレマコス、スパルタへ メネラオスに会う
→求婚者たち、テレマコスを待伏せへ)

→ヘルメス、オギュギエ島へ カリュプソを説得
→オデュッセウス、筏を作る
→嵐
→パイエケス国に漂着
→ナウシカア、オデュッセウスを救出
→アルキノオス、オデュッセウスをもてなす
→オデュッセウス、身分を明かし、これまでの経緯を語る

 ここで注意すべきは、語りの順が時系列とは異なるということである。
 第1歌~第4歌はテレマコスの話である。
 上の記載で言えば(アテネ、ゼウスに相談~求婚者たち、テレマコスを待伏せへ)までの太字で示した部分。これが冒頭に置かれる。
 続く第5歌でようやくオデュッセウスが登場するが、そのときの居場所はオギュギエ島である。時系列で言えば下の方。第5歌から第9歌の途中までを使って、オギュギエ島からパイエケス国まで旅をする。
 そして、第9歌~第12歌までは、オデュッセウスがパイエケス国王のアルキノオスに聞かせる体験談なのである。すなわち、時系列で言うと一番初めに遡って、「トロイア戦争終結」から「オデュッセウス、カリュプソに軟禁される(7年間)」までのことが語られる。
 これで、これまでの旅のすべての過程がカバーされる。

(次回に続く)

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