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ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲

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槇原敬之のカバー曲の中から、私の琴線に触れた作品を紹介します。
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ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#9 番外編「愛が止まらない ~Turn it into love~」

 槇原とは関係ないのだが、以前、別の記事で日本のアイドル・デュオ、Winkの「愛が止まらない ~Turn it into love~」(1988年)に言及したことがあった。  実はこの曲もカバー作品であった!(知らなかったのは私だけ?)  カイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)の1988年の作品だ(作詞・作曲:AITKEN MATTHEW JAMES、STOCK MIKE、WATERMAN PETER ALAN)。  その名も「Turn it into love

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#8 「君に、胸キュン。」

 最後に2-③「原曲の方が優れている」のパターンから事例を示しておこう。  これはY.M.O.の作品だ(1983年。作詞:松本隆 作曲:Y.M.O.)。  何だこれ(笑)。  これほど強烈なインパクトをもつオリジナルを超えることなど出来るだろうか?  それでもこの曲に胸キュンして、カバーしよう! と思い立った槇原のような歌い手がいるから、自分はその存在を知ることができたのである。 (終わり) このマガジンの最初の記事

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#7 「Hello, my friend」

 私はこの曲を知っていた。  松任谷由実でしょ。  1994年の作品だ(作詞・作曲:松任谷由実)。  しかし私は、この曲をじっくり聴いたことがなかった。  今回、槇原のカバーで初めてじっくり聴く機会をもって、私の心は震えた。  唄い出しの「ハロー、マイ・フレンド」の意味が分かったからだ。  これは、もう二度と会うことのない友だち、自分の胸の中にだけすんでいる友だちに対する呼びかけ、つまりは心の中の独り会話なのだ。  私はこれまで、松任谷由実をよいと思ったことがなかった。

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#6 「秋の気配」

 私はこの曲を知らなかった。 「こんなことは今までなかった ぼくがあなたから離れてゆく」  ウソのような事態が進行しているというのに、まるでドローンを飛ばして俯瞰するように、状況を客観的に観察している自分がいる。それほどに自分の心は冷めてしまった。  そんな〝心の季節〟の変わり目を、「秋の気配」に託して歌にできるのは誰だろう?  またしても彼だった。  オフコースの作品(1977年。作詞・作曲:小田和正)。  原曲がすでに素晴らしいが、アレンジがシンプルだ。  カバーし甲

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#5 「Rain」

 私はこの曲を知らなかった。  槇原のオリジナル曲と言われれば、そのまま信じていただろう。  検索すると、秦基博(はた・もとひろ)が出て来た。  私は秦基博をよく知らない。  名前の字面だけは、見たことあるな、という程度だ。  新海誠の『言の葉の庭』(2013年)のエンディングテーマだったのか。  私はそのアニメ映画を視たことがあるのに、この曲はスルーしていた。  しかし、ここで終わらなかった。  秦基博のもカバー曲で、オリジナルは大江千里だったのだ。  1988年の作品

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#4 「流星のサドル」

 私はこの曲を知らなかった。  だから頭の下降する旋律が、ゴダイゴの「Monkey Magic」(1978年)に似ているなと思った。  オリジナルは久保田利伸であった。  1986年の作品らしい(作詞:川村真澄 作曲:久保田利伸)。  槇原敬之と久保田利伸というスタイルのまったく異なるミュージシャンを比較するのもどうかと思うが、私は槇原版の方が優れていると思った(1-①)。 「愛を止めないで」の記事で「球持ちのよいピッチャー」という表現をしたが、ここでも槇原の方がタメがある

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#3 「銀の龍の背に乗って」

 これも私は原曲を知っていた。  視てはいないが、ドラマの主題歌だったらしい。  作詞・作曲は中島みゆき(2003年)。  中島みゆきには、たとえ曲を知らなくて目隠しされていたとしても、唄い出しを聴けば「中島みゆきでしょ!」と一発で判るような特徴的な声があるので、唯一無二、他との比較を許さないようなところがある。  しかし私はこのカバーを知って、ボーカリストとしての槇原敬之を見出したと思った。  オリジナルを聴いた時には「また中島みゆきが唄っているな」くらいにしか思わなかっ

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#2 「愛を止めないで」

 私は原曲を知っていた。  いつ・なぜ知ったかは覚えていないが、日本人をやっているとそのうち知ることになるくらい今でも広く流通している曲ではなかろうか。  オフコースの1979年の作品である(作詞・作曲は小田和正)。  自分が生まれる前。そんなに古い作品だったのか。  槇原バージョンが心地よいと感じるのは、曲が盛り上がっているところでも決して走らないことである。  テンポが乱れない。  野球で言えば球持ちがよい投手をイメージさせる。  小田ファンには怒られるかもしれないが、

ボーカリスト槇原敬之に学ぶJ-POPの秀逸曲#1 カバー曲をいいなと思う時

 カバー曲という音楽ジャンル(?)を侮れないな、と思ったのは、德永英明の「寒い夜だから…」を知った時であった(『VOCALIST 6』(2015年)収録)。 「寒い夜だから…」と言えばtrfである。1993年の作品だ。作詞・作曲は小室哲哉。  trfと言えば、ボーカルの背後でダンサーが踊りまくる姿が目に浮かぶ。  ところが、これを「壊れかけのRadio」(1990年)の德永英明が唄うとこうなる。  柔かい雨に濡れたように、しっとりしてしまう。  そして、悪くない。  カバ