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純セレブスピーカーで最高の音を目指す Vol3 【非固定理論の実践】

こんにちは、井川(twitter @ikawa611)です。

今回の記事では前回に考察した『ユニットとエンクロージャーを分離』する『非固定理論』に関して、更に考察していき具体的な実践方法について解説します。基本的な理論は前回の記事に書いた通りなのですが、微妙に考えが変わった部分や、追加で分かってきたことも多数あります。本記事は前回の記事と密接に関係していますので読んでおいてください。


【理想的なユニットの固定方法】

私の考えるスピーカーユニットの固定方法の根本的な考えは前回の記事で紹介した①②③のうち、①と②を最大限引き出し、③を排除するということです。

①『ユニットを固定しない』

②『ユニット背面からの音が箱を揺らす』

③『ユニットそのものの振動が箱を揺らす』

①『ユニットを固定しない』ことによってスピーカーユニットは自由に動き、どこまでも飛んでいくような軽やかな音を出すことができます。また②『ユニット背面からの音が箱を揺らす』によってスピーカーユニット単体では実現できない豊かな音を箱全体がスピーカー化することによって実現できます。③『ユニットそのものの振動が箱を揺らす』に関しては、ユニットと箱がお互いに干渉し合うことで無駄な音が鳴ってしまうというデメリットをユニットと箱を分離することで解消することができます。また③に関してはGoofyさんのツイートを参考にすると、ユニットが箱を叩くことによって箱が揺れ、箱の振動がユニットに帰ってきてしまうことで、ユニットに関係ない振動が加わることでユニットの動作がおかしくなるいという側面もあるようです。


ここで問題となってくるのが、『①③』の要素と『②』の要素の両立が難しいということです。①③のためにスピーカーユニットを紐などで吊ることで固定すると、ユニットの周りに隙間ができてしまい②が弱まる。一方②のためにユニットをガムテープなどでガッチリ固定すると、隙間はなくなる一方で①③の部分での問題は発生するという矛盾が発生してしまいます。この問題をある程度解消する一般的な方法としては、箱に対してスピーカーユニットを上向きでのせるだけという方法や、エンクロージャーが和紙の和紙スピーカーを製作するといった方法ですとこれらの問題がある程度はバランスがとれます。

この問題に対して私が現在ベストであると考える解決策が『(固めていない柔軟な素材の)和紙や半紙などにスピーカーユニットを固定し、それを箱につける』という方法です。和紙や半紙は柔軟なのでスピーカーユニットの動きを制限せず、また柔軟性ゆえにユニットと触れ合うことでの無駄なノイズ(③の要素)が発生しずらく、ユニット背面からの音をそとに漏らさないように音響特性の良い和紙半紙で密閉しているので②の要素も最大限活かせます。ここまでが前回の記事で解説した基本的な部分です。しかしこの理論を実践する上で和紙半紙の厚さはどうするのか、ユニットと和紙半紙の接合はどのように行うのか、ユニットの自由度はどの程度が良いのかなどという実践的な面は前回の記事では書いていませんし、記事を書いたときはそのようなことに対しての理解ができていませんでした。記事公開後に追加でかなり実験を行った結果、ある程度分かってきたために本記事で解説します。


【ユニットの前方向への微細な振動を活かす】

スピーカーユニットは音声信号が入力されるとコーンが前方向に振動した後にコーンが後ろに戻っていきます。スピーカーユニットをガッチリ固定すると、コーンが前方向に振動したときにその動きが大きく伸び伸びとしないように強烈なストップがかかります。純セレブスピーカー理論ではユニットをしっかり固定しないことによりこの前方向への動きを自由にさせてやることで伸び伸びとした音を実現させるわけです。そしてユニット全体の前方向への振動はかなり微細なものですので、スピーカーユニットを固定したあとに大きく前後に動くほどの自由度は必要ありません。しかし、微細な振動ですので半紙や和紙を使用する場合でもユニットの前側からの直接な抑圧が少しでも加わると微細な振動が殺されてしまうため、基本的には半紙和紙の外側からユニットをつけた方が良いです。私自身当初は半紙自体が柔軟な素材であるためユニットの振動に合わせて半紙も動くので、内側からつけてもユニットの自由度を損なわないだろうと考えていましたが(箱につけるよりはよっぽど自由度は高いですが)、ユニット全体の振動はかなり微細なものであることに気づいてから、半紙の外側からの固定に変えてみると別次元に伸び伸びとした音が出てきました。

また同様に考えてユニット前側からのガムテープなどの固定も微細な振動をころしてしまうためにそのような接着系は使わない方が良いです。ただし半紙などで上側からがっつり抑えてしまうよりはいくらかマシですので必要に応じて使用してもよいかもしれません。

次に和紙半紙自体の厚さをどうするかという問題について。和紙半紙の内側からユニットを固定する場合は厚みによって、和紙半紙の振動度合いが変わってきますので難しい問題になりますが、上で考察したように和紙半紙の外側からユニットを固定する方が良いのであれば和紙半紙を折り畳んだものをいくつか重ねて厚くしつつ、振動吸収性と密閉性、ユニットの安定性を上げた方が良いです。半紙和紙は柔軟な素材であるがゆえに、ある程度の厚みにならないと音エネルギーを箱の中で密閉することができずに、ユニット周りから音が漏れてしまいます。元々はその音漏れを防ぎ、②『ユニット背面からの音が箱を揺らす』を最大限に活かすための方法ですので、厚くする必要があります。また薄いとユニットと和紙半紙はぶつかる音でペチペチという音がしている感じもしますので振動吸収性を上げる必要があり、厚いほうがよいです。そして重要なのが分厚いほうがユニットの安定性が上がるということです。実際に実験してみると分かるのですが分厚くしても分厚くしても、ユニットの前方向への微細な振動に関連する自由度はほとんど変わらないです。一方で分厚くすればするほど、スピーカーユニットの上下左右はガッチリと固定された安定した状態になります。自由度で重要なのは前方向への微細な振動に関する自由度であり、そこと関連しない部分はガッチリと固定していた方が安定した音が出るために、上下左右はしっかりと固定されている方が安定した良い音が出ます。私自身半紙をかなり薄い状態で使ってみたところスッカスカな音になったという経験をしています。

結論としては『半紙和紙を折り畳んだものをいくつか重ね、そこにきつめに穴を開けて、スピーカーユニットを挿し込むだけ』という方法が一番ベストであると考えれます。普通のユニットを挿し込む場合は折り畳んだ和紙半紙の内側がビラビラになる場合があると思うので、穴の内側をテープなどでまとめておくと良いと思います。

ちなみに、和紙半紙が厚いほうが良いのと同様の理由で、和紙半紙は箱に対して両面テープやガムテープを利用して強固につけた方が安定した音がするので良いと思われます。箱に空ける穴の大きさは、和紙半紙が微細に振動する程度には大きくした方が良いです。私自身は最終的に本記事のサムネイルの画像のような状態にしました。

しかし、この方法にも問題点があります。普通のユニットの場合は磁石の重みで重心が後ろによっているために安定した状態にならないことや、きつめに穴を開けるとユニットの形状によってはコーンの振動が箱の中に入らず半紙和紙に当たってしまう場合があることです。

また重たいユニットの場合は柔軟な状態の和紙半紙で支えることが難しいです。このような問題は上向きにするといくらかは解決するとは思いますが、上向きにするとユニットと半紙和紙がぴったりくっつき過ぎるためにそれらの相互干渉が起きる可能性もありますし、この固定方法によって正面向きでも安定して使えるというメリットもなくなってしまいます。またスピーカーユニットの前後方向への自由度を考えれば、その点において重力の影響を受けない正面向きの方が良いのではないかというのが、私自身の考えです。解決案としては紐などを利用して和紙半紙のみに頼らずに安定した固定を目指して、ユニットのねじ止め用の穴や磁石の部分を紐で支えてやると良いと思います。ただし安定させるために大掛かりなことを行うと箱内部の音響状態が変わってしまう可能性もあります。


【AuraSound スピーカーユニットの特殊性】

私が11月にずっと向き合ってきたスピーカーユニットの2つが『AuraSound』というメーカーのユニットになります。1インチと2インチというかなり小型で軽いユニットであり、特殊な形をしています。この2つのユニットは本記事の固定理論との親和性が異常に高いという特殊なユニットになっているため解説します。このユニットで作成した純セレブスピーカーが本記事のサムネイルの2つのスピーカーになります。

この2つのユニットは小型で軽いために半紙で簡単に支えることができます。そして重要なのがユニットが筒状になっており、筒の真ん中にねじ止め用のプラスチックが生えているという特殊な形状です。この形のおかげで、半紙にきつめに穴を開けて挿し込むだけで上下左右がガッチリ固定され、またユニットの重心に近い場所で支えているために重心がどちらかに偏る問題も発生せず、接着剤などを一切使わずにかなり強固に安定した状態になるため前方向への微細な振動に対する抑圧もありません。つまり特別な工夫をしていない和紙半紙固定をするだけでユニット周辺のありとあらゆる問題が解決され、理想的な状態にかなり近くなります。

これらのユニットは小型であるにも関わらず許容入力が大きいので大音量でも使用可能なため、小型ユニットではオーケストラなどの再生が難しいといった問題がないという点において特に向き不向きなく使うことができます。


【紙ゴミの詰め方について】

前回の記事でも紹介した、箱の内側を覆うように紙を入れる技ですが、枚数で比較したところ1枚までが限度な感じがしました。またこの技は箱が比較的小さいときに有用な感じがしています。箱が大きいと箱に対して音振動が伝わるまである程度余裕があるために、内側を紙で覆うと必要な振動までカットしてしまうのではないかと思います。実際私自身大きい箱の場合はこの技は使わない方が良い音に感じました。

また少し原理が似ている紙の詰め方に関して、Goofyさんのツイートが非常に参考になります。

この紙の入れ方も箱が小さいときに、ユニットから遠い部分は蜜で柔らかい紙が不要な音振動が箱に伝わるのを適度にカットしている感じがしてます。ユニット周辺では固めな大きい紙を入れることで音を箱全体に拡散させて、変に音を吸収しないようになっているのではないかと思っています。この方法も箱が小さい場合は有用ですが、箱が大きい場合には覆うように紙を入れるのと同じ理由で微妙な感じがします。またこの基準に拘り過ぎると音が偏るので、なんとなく自分の感覚で調整もした方が良いです、

私自身はAurasound1インチの純セレにはこの2つの方法のハイブリットで紙ゴミを詰めていい感じになりました。一方、2インチの方はこの方法では最初うまくいかずに、他のいろんな紙の詰め方を試したのですが全く満足のできるものにならずに困り果てていました。そこで思いついたのが、箱の厚みを2cm減らして箱の大きさを小さくして上記の紙の詰め方をするということです。なんとなく箱が大きすぎて音が膨らんでいる感じがしていたのですが、これをすることで好みの音に近づきました。

他にこの2つのスピーカーに対して行った紙ゴミの詰め方としては、箱の角8か所に丸めたティッシュをつけるということです。オーディオの部屋において、角の部分は定在波が発生して良くないため、そこに吸音材を配置しようというルームチューニングから発想を得て、それはスピーカー内部でも同じであろうと思い実行しました。ティッシュむき出しだとティッシュ特有の吸音してつまらない音になるという特徴が出てしまうために、上から何かしら紙で覆う必要があります。この処理をしてやると低音のにごりが減ってはっきりした音が出てくるようになる感じしています。理屈はよくわかってないので、参考にした動画を貼っておきます。

紙ゴミの詰め方に関しては、ユニットや箱、好みによってまったく違ってくるため、私自身の好みにするためにこんなことしてみましたよ程度の話です。

【終わりに】

結論としては『和紙半紙を折り畳んで分厚くして、外側からそこにユニットをつけ、それを好きなエンクロージャーにつけよう』ということです。

2020年11月は今までで一番純セレブスピーカーに対して真剣になった月になりました。正直あまりにも真剣にやり過ぎて「しばらくスピーカー作りたくないなあ」なんていう気持ちになっています(笑)。と言いつつもそのうちまた新しいスピーカーを作ってしまうと思いますが。。。

11月に色々実験をする中でスピーカーユニットの非固定理論に関しては自分の中では完結し、またダンボール製のものに関しても満足のいくものが完成しました。次に真剣に純セレブスピーカーを作るのは和紙スピーカーになると思います。

前回のnote記事に対してたくさんの方から反応が返ってきてとても嬉しかったです。何人かの方は記事購入やサポートもしてくれて、本当にありがとうございます。今回の記事もtwitterなどで感想をいただけるととても嬉しいです。では今日もセレブ!


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