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恋は盲目が故、STAUBの通販詐欺に遭った話

新年のアウトレットセールでSTAUBの鍋を買った。
かねてより欲しくてたまらない物だったが、今回購入に至ったのはセールで安かったから、というのが主因ではない。ちょうど1年前、この鍋を買いそびれたリベンジなのである。
厳密に言うと、購入はしたが商品を手に入れることができなかった。

恥ずかしすぎて友人にも話していないのだが、去年ネット通販詐欺に合った。

事の発端は、付き合って間もない元彼との何気ない会話だった。
「STAUBの鍋が欲しいのよね」「他の鍋より断然美味しく仕上がるらしいね」というやり取りをLINEで交わした後の深夜1時過ぎ。
微睡みつつも彼との愛しい会話を反芻しながら何気なくネットで検索してみると、一気に目の覚めるページを見つけてしまった。
なんとあの高級鍋が驚異の70%以上OFFになっていたのだ。

定価25,000円程の物が8,000円台で売り出されている——そんなサイトを見つけたら、日々ネットに触れている令和の人間ならば躊躇う事なく詐欺を疑うだろう。
ところが、何を隠そう私は好きな男性のこととなると我を忘れるし財布の紐が緩むタチなのだ。
バレンタインには電車を乗り継ぎ激戦区の百貨店まで入手困難なYVANのチョコを買いに行き、彼氏とのピクニックでは手作りお菓子の材料に4千円近く費やす。
そんな私が、彼氏と話題になったばかりの代物の破格セールを見つけてしまったのである。
「これ買ったら彼との会話が弾むし手料理も振る舞えるし、今このセールで買うしか!」と意気揚々と会員登録を済ませポチってしまったのである。

異変に気づいたのはすぐだった。
デビットの利用履歴はすぐに反映されたのだが、数分待っても注文メールが届かず「?」が浮かんだ。
それだけなら翌朝まで待ってもよかったのだが、私にはいくつか思い当たる節があった。
そのサイトには公式のロゴマークこそあったものの、何だか不自然な日本語がちらほら見られた
でもまぁ海外のメーカーやしちょっと日本語拙いんかな〜とスルーしてしまったが、思い返せばクレジット決済しようとしたら何度も失敗して結局デビットだと即決済できたのも不思議だった。
あとそもそもこの破格は何だ??
信じられない価格は信じてはいけなかったのではないか??

そこからの行動は早かった。
注文キャンセル依頼の問い合わせメールを送り、会員登録は削除できなかったので虚偽の情報に塗り替え、普段使用しているあらゆる他サイトを血眼で洗い出しIDとパスワードを変更した。
できる事をやり尽くした頃には朝の5時半、あと4時間もしないうちに新年の仕事始めの時間だった。
まさか自分がこんな典型的なネット詐欺に遭うとは思いもしていなかったので、お金も個人情報も抜け抜けと悪徳業者に差し出してしまった事がとにかく情けなくて仕方がなかった。
高校の家庭科の教科書に載っていた"通販詐欺に気をつけよう"の記事をふと思い出し、学生時代の教育が一切活かされていない己自身の不甲斐なさに泣きべそをかいた明け方だった。

実際の詐欺サイト画面

ろくに睡眠も取れぬまま、仕事前に銀行に向かいデビットカードを利用停止してもらった。
事件が起きたのが夜中だったので、朝一ですぐ停止できたのは不幸中の幸いだった。
返金に関しては、利用明細が明らかになるまでは銀行では対応できないとのことだった。
その後消費生活センターや警察署を行脚したが、いずれも「お金を取り返すことや犯人の特定は不可能」との回答しか得られなかった。
お国オフィシャルの組織もお手上げとなれば、こちらも諦める他ない。商品が届くのは既に諦めているし、あとは個人情報が悪用されないよう祈ることしかできない。

結論から言うと、やはりSTAUBの鍋は送られてこなかったし返金もされなかった。
代わりにこんな荷物が届いた。

推定原価20円のちゃっちい指輪が2つ


ゴミ箱にぶち込みたい気持ちを抑えて再度交番まで駆け込んだが、「海外となると管轄外なので追うのが難しい。被害届を出してもあなたの労力を費やすだけなので、署内の被害共有だけはしておく」とのこと。ごもっともです。
結局証拠品の写真だけ撮影してもらい、この事件はやむなくお終いとなった。


という事件があったのが1年前の新年。
その後STAUBの鍋を手に入れることはなかったし、彼に鍋料理を振る舞うこともなかった。
そんな悲しいことを思い出し、ひとつ過去の清算として今回念願のSTAUB鍋を迎えたのである。
これからよろしくね、料理の相棒。
まずは美味しいポトフでも作って独り占めしよう。
それからいつかもっと愛する人と温かいお鍋を囲もうね。


余談だが、この詐欺にあった話は元彼には打ち明けられなかった。元彼の中では少しでも聡明な女で在りたかったのだ。
友達もこんな詐欺に遭うような単純な人はいないので、恥ずかしくて言えなかった。
唯一職場の先輩にだけ打ち明けたら、朝5時半まで夜なべしてパスワード変更したくだりで爆笑してくれた。大好きな先輩である。


散々語った後だが最後にひとつ弁明しておくと、私は決して世間知らずではないし、騙されやすいタイプでもない。
学生時代に無料マッサージの謳い文句に釣られて1時間近くクリニックの個室に閉じ込められてしつこく脱毛の勧誘を受けたり、街角で写経を頼まれたついでに連れられた事務所でよく分からない人のセミナーの勧誘を受けたりしたが、断じて詐欺被害に遭った経験はない。
今回の件も、購入前にサイトのレビューで怪しい評価がないか確認した。(評価を鵜呑みにしたことも爪が甘かったのだが)
きっと皆さんも自分は詐欺被害に遭うわけないとお思いかと思うが、恋で盲目になったり破格セールに出くわしたりするとこのようなザマに陥るかもしれません。どうかお気をつけください。

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