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踊る大競馬戦〜第1話〜『プロローグ』

ひとけのない深夜1時‥

鬼気迫った表情の男が

暗い夜道を一人歩いていた‥

『この世に神様なんていない‥
最後の競馬勝負もダメ‥
もうやるしかないんだ‥
全ては家族の為だ‥』

男は独り言を呟きながら

周りの家を見渡した‥

そして男は‥

柵のあるいかにも
お金持ちが住んでそうな
家の前で立ち止まった‥


『よし‥この家にしよう…』


男が柵の上にひょいっと登り
下を向くと犬小屋が見えた‥


『よし‥もしも、犬に吠えられたら‥
こんな事はやめよう‥』

男は犬に吠えられる事を期待しながら
男は柵から飛び降りた‥

犬小屋をみると立派な
ドーベルマンのような犬が
男など一切気にせず
一心不乱に大きな骨にかぶりついていた

『なんだよ‥ちくしょう‥』

残念そうな男は、はいれそうな窓を見つけて
窓の前でまた立ち止まった‥

『よし‥もし‥窓に鍵がかかっていたら
こんな事はやめよう‥』

男は鍵がかかっている事を願いながら

窓に手をかけ静かに力を加えた‥

 窓は‥

いとも簡単に‥

開いてしまった‥


 『なんで開いてるんだよ‥ちくしょう‥
もう‥でもこんなお金持ちの家で
防犯システムが無いわけない‥』

『有名会社の防犯システムなら
5分以内に警備員が駆けつけるはずだ‥
もしも、警備員が駆けつけたら‥
こんな事やめて帰ろう‥』


物音ひとつする事なく
10分が経過した‥

『もう‥やるしかないという事か‥』

男はついに家の中に入る決心をした‥

『何かネットで売れそうな物が
一つでもあったなら
それを盗ってすぐに帰る‥
全ては家族の為だ…』

男は音が出ないように
慎重に窓から家の中に侵入した‥


真っ暗な家の中は何も見えなかった‥

部屋はおそらく10畳程度の
居間のようだった‥

ようやく暗さにも目が慣れ
ぼんやりと部屋の全体が見えてきた‥

なにやらあぐらをかいてる
人影のようにも見えたが
こんな時間に家の人があぐらはあり得ない‥

おそらくお金持ち特有の等身大
歴史上人物の置物だろう‥

でもこんな大きな置物は
持って出れるわけがない

(それにしても暗くて何も見えない‥
もう、一瞬だけ電気をつけて
盗める物を確認して
すぐ電気を消そう‥)


男はそう決心し部屋の電気をつけた‥

すると‥

『おいっ!‥』

突然の掛け声に驚き振り向くと
そこには‥
置物ではなく人が座っていた‥

(まさか‥
私のような泥棒が
入ってくるのを待ちぶせし
捕まえる気だったとは‥
私の初めての犯罪は
成功する事なく
終わりを迎えた‥)

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