バンドをやりたくて上京。そして性懲りも無く今も続けてる。1990年代編⑭(飲食バイトでの話。宿敵キャプテンA)
飲食店でアルバイト→徐々に酒浸りに→職場での立ち位置が微妙になっていく。
負のループにはまりつつあった時期にさらに頭を悩ませる人物が現れた。
それはAという青年。
歳は同い年。
やつの好きなブランドはCAPTAIN SANTA。
縁無しの眼鏡をかけ、二言目にはやたらとワインや美食を語る。
妙に高級志向。
ストリート的なものや庶民的なもの、下町っぽいものは最初から馬鹿にしてかかる鼻持ちならない性格。(しかしAの出身はいわゆる下町地区であった)
店の近くにあった町中華で食事している人を馬鹿にしたようなことも言っていた。(そこには俺も良く食べに行っていた)
「おばあちゃんの誕生日は家族みんなでお祝いするんだ」とか話していた。
一見無害なお坊ちゃんぽい見た目とは裏腹に攻撃的な一面もあって、後から入ってきたスタッフに対しては必要以上に当たりがキツい。
権力のある人物にはどんどん擦り寄っていくようなところもあった。(店に遊びに来る店長の友人には当時テレビに出ていたような有名シェフも居た。ただしその人物は超暴力野郎で後述のKさんはミートナイフで尻を刺されたこともあるらしい)
なんというか自分とは趣味嗜好が真逆、全く理解のできない人物それがAだった。
俺は職場の人間関係には気を配ってうまく立ち回るほうだ。
職場なんかでわざわざ敵を作るまでも無いと考えている。
それは今も同じで、結局「仕事」というものに週の殆どの時間を拘束されているわけだから、そこでわざわざストレスを溜める要因を増やしたくは無い。
どこでも揉めているケースっていうのは、ちょっとした面子を潰されたことや、本来の伝えるべき主張になにか私怨的なことをトッピングをしていることで本質とは違う意地の張り合いになっているとか、そういうのが多い気がしてならない。
ものすごい苦手なタイプであるAとも最初はうまくやっていこうと思った。
勘違いも甚だしいAも料理に関することは一生懸命だった。
なにしろせっかく大学を出たのに小さなレストランで働きたいとやってきたのだ。
※ちなみに当時の俺は「なんで大学まで出ておいて飲食業をやりたがるの?」という見識の狭い見方をしていて、船橋市時代の居酒屋はヤンキー上がりや少年院上がりの人ばかりだったし「飲食業の気風って結局そんな感じだろ?」と勝手に思い込んでいた。
Aの料理に関する情熱は結構なこととしても、彼にとってはそもそもバンドをやりながら飲食の仕事をやっているという俺の姿勢も気に食わなかったらしい。
長らく不景気が続く上、コロナ禍も経験した現代ではよりハードルが上がってしまったかもしれないが、飲食業というのは基本的に独立志望の人が多く「どうせなら自分の店を持ちたい」という考えが主流のようだ。
俺はどうだったかというと「音楽と仕事を両立したい」「だけどサラリーマンは無理」「料理が好き」といったところから「手に職をつければなんらかの方法で音楽と仕事を両立していけるかなー」くらいの考えだった。
説得力が無いかもしれないけど、酒浸りになりつつも仕事をサボっていたことは一度も無かった。
が、この時期自分でも少々わけがわからない状態だったのは認める。
飲食を扱うようなところはある程度の厳しさや規律は必要だとも思う。
ただ、Aには「人は人」という考え方はなかったらしい。
Aのルールでは「店を持つ気もないようなやつとは一緒に働きたくも無い」ってことなんだろう。
俺に対してだんだんとあからさまに感じの悪い態度で接してくるようになった。
前回、酒をたくさん飲むようになったきっかけをここに書きたくないと記したけど、それだと伝わらないだろうから、少しぼやかして書くことにする。
親しくしていた人がある日、ひどい犯罪被害に遭った。
もちろん一番つらいのは被害に遭った当人に決まっているけれど、自分の周りにそんなことが起きたのがとてもショックで信じられなかった。
目が覚めている間はそのことを忘れたくてしょうがない。恥ずかしながらそれが過度な飲酒につながった理由だった。
そのことを職場の人に相談したりはできなかった。(だから急にグダグダになったとしか思われなかっただろう)今考えるとちょっと休職したりすればよかったかもしれない。
そこに追い討ちをかけて店の親会社の意向で給与形態が変わり月給も下がる。
人間関係もギクシャクしだしていたし「もうここには居れないな」と思い辞めてしまう。
数年後、当時の先輩から電話がかかってきて「同僚だったKさんが恵比寿に自分のお店を開いたので集まろう」と誘いを受けた。(Kさんもまた常にしょうもないことばっかり言ってる人で、チーズの匂いを嗅いでは下品なことを、、)
一瞬迷ったけど、気まずくなったとは言えA以外とは元々は仲良くやっていたんだし、久々にみんなに会ってみようと思い出かけていった。
その当時は友達のやっていたレーベルを手伝いつつインディーズ系の音楽の流通・制作をしている事務所で働いていて(まあ、この会社ものちにいろいろとありすぎた、、)アル中気味も抑えられていて金は無かったけど最悪の時期と比べたらかなり活き活きとしていた。
久々に会った店長からも「店にいた頃よりイイ顔してるよ」と言われた。
そこにはAも居て、俺としては当時のことはもうどうでも良くなっていたので「一緒に働いていた時は俺も至らないところがたくさんあったね」と自分から話しかけにいった。
先輩として頼りなかったであろうことは事実だからその面はちゃんと話しておきたかった。
こんなやつでももしかしたら少しは分かり合えるかも?とも思った。
しかし、Aが俺に取った態度は
「シカトしてその場を立ち去る」だった。
その場に居たAの彼女(一緒の店のスタッフ)が見かねて「ちょっとー!〇〇さん(俺の名前)、ああ言ってるよ!もうっ!」とフォローしてくれたけど。
それはまるでクソつまらないドラマのワンシーンみたいな風景だった。
追伸 その十年くらい後に電車の中で偶然にも目の前にAが座っていたということがあった。もちろん話しかけてくることはなかった。こちらもさすがに無視した。こういう二度と会いたくないやつに限って遭遇してしまうということが自分には何度かある。
「CAPTAIN SANTAを着ているやつは信用しない」って作家のゲッツ板谷さんがどこかに書いていたのを読んだことがある。
自分も本当にそう思いますよ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?