見出し画像

画像認識プログラムを作ってみよう - 第一章「画像認識の技術について」 - AIの民主化

三度の人工知能ブームを迎えた現在、しきりに「AIの民主化」が叫ばれています。これまでの人工知能ブームは、優れた知能を持つ技術者の考案したアルゴリズムによって開発された人工知能が主体でした。しかし、昨今の第三次人工知能ブームは、優秀な技術者が必要なことはもちろんのこと、それ以外にもインフラの整備が重要となってきます。

 本書で紹介する画像認識のWeb APIは、Google/Amazon/Microsoft/IBMの4社がサービスを提供しています。いずれの4社も、世界的な大企業です。大企業だからこそ、優秀な技術者が集まっているために昨今の人工知能ブームをけん引しているとも考えられそうですが、実はそれだけではありません。
前述のとおり、第三次人工知能には、ビッグデータの存在が不可欠です。そのビッグデータを所有している企業かどうか、はたまたそのビッグデータを処理できるハイスペックなサーバー群を保有しているかどうかが、人工知能を開発可能かどうかに大きくかかわってきます。
そうなると、人工知能を開発可能な大企業だけが人工知能を占有することも可能となってしまいます。後述しますが、近い将来、人工知能がすべての人類の知能を上回るとされている「シンギュラリティ」(技術的特異点)を迎える際、人工知能を利用できるのが大企業だけに限られてしまっていては、大変不公平です。
そこで、「AIの民主化」という考え方が提案されました。つまり、誰もが簡単に人工知能の恩恵を受けられるようにしようとする考え方です。本書で紹介する画像認識のWeb APIについても、この「AIの民主化」という考え方に沿って提供されているサービスだと言えます。我々は、ビッグデータもハイスペックなサーバー群も所有していませんが、手軽に人工知能を利用することが可能なのです。
 「AIの民主化」を提案したのは、スタンフォード大学からGoogleに移籍したFei-Fei Li(フェイ-フェイ リー)氏です。2017年3月8日にアメリカのサンフランシスコにて公開された「Google Cloud Next 2017」の基調講演にて、「AIの民主化」を提案しました。「AIの民主化」が提案されるまえにも、すでに上記の大企業はWeb APIによってさまざまな機能をもつ人工知能サービスを提供していましたから、Fei-Fei Li氏の発言によってAIの民主化が促進されたわけではありません。実際、2016年9月、Google(正確にはGoogleの親会社であるAlphabet社)、Amazon、Microsoft、IBM、Facebookの5社によって、「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」というNPO団体が設立されています(さらに2017年1月には、Apple社も加わっています)。
 今後も、こういった考え方によって人工知能が普及していることを理解しておくとよいかと思います。

・第三次人工知能ブームでは、「AIの民主化」が叫ばれている。
・「AIの民主化」は、ビッグデータとハイスペックなサーバー群を所有する大企業以外でも、誰もがかんたんに人工知能を利用できる環境を構築するのが目的。
・Alphabet、Amazon、Microsoft、IBM、Facebook、Appleによって、「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」というNPO団体が設立されている。

よろしければサポートをお願いします!サポートで頂いた費用は、コンテンツのための設備費等のために使わせていただきます!