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画像認識プログラムを作ってみよう - 第一章「画像認識の技術について」 - 第二次人工知能ブーム(知識表現)

第一次人工知能ブームでは、明確な答えを導き出すことができる問題のみに限定し、解決策を導き出すことが可能でした。しかし汎用性にかけ、ゲームやパズルを解くためのアルゴリズムでしかありませんでした。さて、第一次人工知能ブームの欠点を踏まえた上で、第二次人工知能ブームではどのような進化を遂げたのでしょうか。そして、なぜに終焉を迎えることになるのでしょうか。

 前項にて説明したとおり、第一次人工知能ブームの問題点は「Toy Problem(トイプロブレム)」と呼ばれ、文字どおりゲームやパズルを解くための「おもちゃの問題」の解決しかできませんでした。知能と呼ぶには程遠く、衰退することになります。
 次に人工知能ブームが起きたのは、1970年代後半から1980年代前半です。第二次人工知能ブームと呼ばれています。
第二次人工知能ブームは、「知識表現」がキーワードです。この「知識表現」を実装した人工知能は、「Expart System(エキスパートシステム)」と呼ばれています。"Expart"という単語の意味が示すとおり、その道の「専門家」の知識に特化した人工知能システムです。
たとえば、患者の病状から適切な薬を提案するシステムです。患者から「咳が出る」「鼻水が出る」「熱がある」などの病状から当該患者は「風邪を引いている」と判断し、その患者に適当と思われる「風邪薬」を提案します。そのシステムには、「病状」とその病状に該当する「病名」、そしてその病名から適切な「薬」を記録した知識ベース(データベース)を保持しています。その知識ベースを用いることで、専門家の持つ知識をシステムが利用できるようになります。
第一次人工知能ブームと比べれば、実務に即したシステムの構築が可能です。
しかし、エキスパートシステムにおいては、その名の示すとおり、専門的な知識にのみ特化しています。その知識をシステムに記憶させる作業において、人がコンピューターが解析可能な状態としてデータを登録しなければなりません。現実世界におけるさまざまな問題点を解決するには、その分のデータを人がシステムに登録しなければなりませんでした。
問題は、それだけではありません。人類は常識的な枠組みのなかで判断して行動しますが、この「常識的な枠組み」(フレーム:Frame)が人工知能には難しいのです。これを、「フレーム問題」(Frame Problem)と言います。
 フレーム問題の具体的な例を見てみましょう。わかりやすい例が、一般社団法人人工知能学会(JSAI)のホームページに掲載されておりましたので、引用させていただきました。

人工知能搭載のロボット「安全くん1号」は,人間の代わりに危険な作業をするロボットです.爆弾が仕掛けられている部屋から貴重な美術品を取り出してこなければなりません.安全くん1号は美術品の入った台車を押して美術品をとってきましたが,不幸なことに爆弾は台車にしかけられていたので,安全くんは爆発に巻き込まれてしまいました.

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これは安全くん1号が,美術品を取り出すために荷車を押せばよいということは分かったのですが,そのことによって,爆弾も一緒に取り出してしまうということは分からなかったためでした.
安全くん2号の悲劇そこで,この問題を改良した「安全くん2号」が制作されました.安全くん2号は,美術品を取り出しに部屋に再び向かいました.しかし,美術品を運び出すには台車を動かせばよいと思いついたあと,台車を動かしたときの影響を
もし台車を動かしても,天井は落ちてこない.
もし台車を動かしても,部屋の壁の色はかわらない.
もし台車を動かしても,部屋の電気は消えない.
もし台車を動かしても,壁に穴があいたりしない.
‥‥‥‥
と順番に考えているうちに爆弾が爆発してしまいました.

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これは,べつに台車を動かしても天井は落ちくるという影響は生じないのですが,一応考えてみないと,影響があるかどうか分かりません.しかも,台車を動かしても影響を受けないことは無数にあるため,考えるのに時間がかってしまうためです.
「爆弾と美術品以外の関係のないことは考えなくてもいいのではないか?」と思うかもしれません.しかし,この場合も,壁,天井,電気などありとあらゆることについて,爆弾や美術品と関係があるかどうかを考えているうちに爆弾が爆発してしまいます.このように,たとえどんな方法をとっても,途中で世の中のありとあらゆることについて考える必要が生じてしまいます.これがフレーム問題です.
What's AI - 人工知能の話題 - フレーム問題
https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AItopics1.html

引用元に記載されているとおり、このフレーム問題は、人工知能研究の最大の難関と言われています。我々人類にとっての常識を、コンピューターに理解させるのは非常に難しいのです。
人類は、この世に生を受けてから、五感を通じて常に周囲から情報を入手し、学習することで、常識を会得しました。ある特定の分野においては「専門家」としての知識を有するエキスパートシステムも、単なる常識を理解できず、第二次人工知能ブームも下火を迎えることになるのです。

・第二次人工知能ブームのキーワードは、「知識表現」。
・「知識表現」を実装した人工知能は、エキスパートシステムと呼ばれていた。その名のとおり、その道の「専門家」の知識を有する。
・たとえ「専門家」の知識を有していても、人類にとってあたりまえの常識が理解できない「フレーム問題」に直面し、第二次人工知能ブームも次第に下火を迎える。

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