ようこそ給食カレーの世界へ
今年はとっても素敵な経験をさせていただきました。
7月18日の『10000人カレー』で自作のカレーを大勢の方に食べていただけました。
関係各位の皆さまに心から感謝いたします。
こちらのイベントを知った時、かなり悩みました。
コロナ禍前は、地元の公共施設でささやかな料理教室を開いてカレー作りを教えていましたが、もう3年もできていません。
そろそろ何かやりたい。出展者として参加してみたいけれど、きっと作る側の皆さんはこだわりのスパイシーなカレーの達人ばかりなんだろうなあ。食べる側の方も舌の肥えたカレー好きばかりなんだろうなあ・・・。
たくさん作って大勢の人に食べていただくなんてとてもとても・・・
ん?たくさん、大勢、それって大量調理?
世の中に、カレーの名店を食べ歩く人間は数あれど、大量調理の給食のカレーを保育園から中学校まで何校も食べ歩いた人間は、そうそういないんじゃないだろうか・・・?。
私の過去はいくつもの現場を渡り歩いてきた“ワケあり給食のおばさん”。
ぶっちゃけ、仕事ができなさすぎて一か所に定着することが許されなかっただけなんですが、
おかげでいろんな現場の給食カレーを食べ、調理にかかわることができました。
さんざん悩んで参加メンバーに入れていただき、
出店名は「懐かしの給食カレー」としました。
調理のポイントは次のとおり。
○鶏ガラと屑野菜でだしをとる。
○玉ねぎを二回に分けて炒める(ベース用と食感残す用)。
○肉は小間肉を使う。
○バター&油と小麦粉とカレー粉でを作る。
○大豆の水煮を砕いて入れる。
○カラメルソースで甘味とこくを出す。
○しょうゆやソースで味付けする。
○仕上げにガラムマサラを加えていまどきのスパイシーさも取り入れる。
すべて、これまで関わった現場で見てきたこと、教わってきたことを私なりに再現しました。
イベント当日は、他の皆さんの本格スパイシー・カレーのなかで、“浮いた味”ではありましたが、たくさんの方に食べていただけました。
幸せな幸せな時間でした。
さて、子どもたちが大好きな給食カレー。
衛生管理の観点から限られたスタッフのみが入れる学校給食の現場で、どんな調理が行われているのでしょうか。
委託会社が調理する現場では、学校栄養職員(栄養士)がレシピを作り、調理員はそれを忠実に調理するため、その栄養士さんの味がその学校の個性になります。自治体直営の現場ではまた少し事情が違うようです。大規模給食センターの現場もまたそれぞれの事情があります。
私がいたのは委託会社の東京と横浜の現場でした。
大量調理の現場でも出汁(だし)は重要。
給食室の朝は、回転釜と呼ばれる大鍋に湯を沸かすところから始まります。
そこに、朝イチで肉屋さんがお肉とともに配達してくれる鶏ガラや豚骨を入れて煮立てます。肉類を入れるときは、冷蔵庫から釜までの導線を確保し、白衣の上に専用のエプロンや手袋をつけ、決して素手で肉に触りません。他の物を生肉で汚染しないよう、最大限の配慮がされます。さらにしっかり手を洗って消毒してから他の仕事につきます。
同時進行でどんどん野菜が切られていきます。この段階で出る、野菜の皮や切り落とした部分、にんにくやショウガの皮などが、きれいに洗浄されてガラの釜に入ります。
クズ野菜とガラでとった出汁は適時アクをすくい、最後にすべてきれいに濾してスープストックが完成します。
別の回転釜でルーを作ります。
バターとサラダ油を熱し、小麦粉を加え、ダマが消えてミルクティー色になるまで大きな金べらでじっくり炒めます。
火を止めてからカレー粉を入れて混ぜます。できあがったら大きい食缶に移しておきます。
またまた別の回転釜で、ニンニク・ショウガのすりおろしを炒め、玉ネギ、肉、にんじんの順番で炒めていきます。
現場によっては玉ネギを2段階に分け、ベースとして煮溶かす炒め玉ネギと、食感を残す玉ネギとに分けたりします。肉は鶏も豚も主に小間肉です。牛肉は、自治体にもよるのでしょうが、狂牛病以来めったにお目にかかれない代物になりました。
全体にじゅうぶんに油がまわったところでスープストックを入れて煮こみます。
にんじんがやわらかくなったら、切っておいたじゃがいもを投入。
そしてルーが入り、調味料が入り、ジャガイモがやわらかくなるまで煮込みます。
ここでさらなるポイントが。すりつぶしもしくはくだいておいた大豆の水煮が入ります。
これは、豆嫌いな子どもたちに、豆を食べてもらおうという苦肉の策。
学校によってはここで釜を低学年用、中高学年用のふたつに分け、ルーの辛さを加減します。
釜の中の温度はノロウイルスが死滅する86℃まで確実に上げます。スープはもちろん大きな肉、野菜に至るまで、温度計を差し込んで計ります。
学校によって、ガラムマサラを加えたり、カットトマト缶を加えたり、別鍋で作っておいたカラメルソースを加えたりします。
栄養士さんの味見が入り、OKが出たら完成です。
提供時間にもよりますが、11時30~50分くらいが完成時間の目安です。
最近の給食カレーは、行事食としての顔もあります。
運動会の前にはカツカレーが提供されます。
卒業前のカレーはスペシャルメニュー。とんかつとチキンカツを選べるイベント給食もあります。
最近は本格的なバターチキン風やキーマカレーも登場します。
いかがでしたか?懐かしいだけでなく、進化していく給食カレーの世界。最上の調味料は子供たちの笑顔と「いただきます」です。これはきっと、いまも昔も同じですね。
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