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階層構造とブルシットジョブについて

いま、友人たちと『失敗の本質』の読書会をやっています。そして、副読本として、淵田美津雄、奥宮正武著『ミッドウェー』の推薦があったので、それも合わせて読んでみました。すると、階層構造の非効率性は昔の日本軍だけのものではないことがよく分かってきました。現代の組織や社会構造に関わることと、最近よく言われるブルシットジョブとの関連性について簡単にまとめてみました。
 
勤続年数に比例して自動的にポストが上がっていくシステムを「年功序列」といいます。『ミッドウェー』を読むと旧日本軍はまさにそのシステムの上に成り立っていたことがよく分かります。作戦を立案する中間管理職クラスまではスペシャリストが揃っていますが、意思決定を下す、現代の組織でいう役員・本部長クラスになると、途端に担当分野の専門外ばかりになります。彼らができることといったら「承認」だけです。そのクラスになると、求められるのは「能力」ではなく「器」になります。部下から上がってきたものに黙って判子を押すだけ、これができるかできないかで器量が測られます。ある作戦参謀は、自分が立てた企画がほぼノーチェックで全部通ってしまうことに、国家の行方を左右する行為を自分一人が決めていいのか、と悩みを告白しています。こういった階層構造は社内組織に限ったことではありません。現代の日本の社会構造においてもあります。○○省が出したレポートがあるとします。しかし、それを書いているのは役人ではありません。大抵の場合、作成はシンクタンクに委託しています。シンクタンクの研究員が手を動かしているのかといえばそうでもありません。その下請けか、元をたどればアルバイトか派遣社員が調査結果をレポートにしている場合も多々あります。上流に行くほど何もしていないという構造です。
 
もう一つ、『失敗の本質』や『ミッドウェー』を読んでこの階層構造はすごいなと思ったことがあります。ミッドウェーの海戦は太平洋上で行われていました。そして、その数千キロ西には、連合艦隊の主力部隊がいて、そこに作戦本部が置かれていました。作戦本部では、長官、参謀クラスが集まって、現地からの報告に一喜一憂していました。そして、これは東京の大本営でも同じでした。さらにその上のクラスが、同じように情報を聞いて一喜一憂していました。経営会議の場をスポーツバーに持ち込んで、偉いさんたちが集まってサッカー観戦をしているのをイメージしてもらえたらと思います。いい報告が入ってくると、「殿、うまくいきましたな」という雰囲気で腰巾着が上司を持ち上げる。こういう階層構造に何十人という人がいると、仕組み的に、誰も責任の取りようがないと思いました。これがまさにブルシットジョブを生み出す構造だといえます。

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。