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夏が逝ったね

好きな夏の終わりの曲
•SPEED『熱帯夜』
•スピッツ『夏が終わる』
•研ナオコ『夏をあきらめて』

 SPEED『熱帯夜』の間奏部分で1番好きなセリフ、「夏が逝くね」のところをカラオケで歌う時に私が思い浮かべるのは、爽やかな半袖のTシャツで過ごす夏の終わりの日暮れごろに初めて二の腕あたりに物足りなさ(肌寒さ)を感じた時の、あのちょっとした虚しさだ。秋はこんな風に、半袖を着ていることに少しの物足りなさを感じる瞬間を全員に届けるべきだと思う。腰低く申し訳なさそうに、どっしりと頼り甲斐のある夏の背中から少しづつ少しづつ顔を出すような登場の仕方をするべきだ。しかし今年の秋は夏の背後に身を隠してきたような奥ゆかしさは微塵も感じられず、夏の後ろから一気にぴょんっと右隣りに着地し、両手ピースを高らかに上げて惜しげもなく全身を露わにした。つまり、クーラー無しでは汗ばむ夜を越えた次には、クローゼットの奥から急いで長袖を引っ張り出すような夜だったのだ。
 なぜこれほど秋に謙虚さを求めるのかというと、きっと結局夏が好きだから。目の前の夏、実際に体感する暑苦しい夏はそれほど好きではない、というか嫌いなのだが、夏という概念は好き。こんなロマンティックな概念を、全員が生きているだけで経験し体感できるというのが素敵。こういう馬鹿らしい考えがわたしとっての煌めいた生きる糧なので、アラサーになろうがいつまでもこんな戯事を夢見ていたい。脳内の夏を神化させすぎている余り、わたしのロマン的夏なんて過去も未来も一生見ることさえできないのだけれど、1コンマ1ミリでも夢見る夏と現実の暑苦しい夏の接着面を感じたくて、花火を見たりかき氷食べたりしても、まぁそんな………ですよね。でも、夏の楽しみ方ってこれしかない、よね?

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