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“知る“を経験して糧にする。美容室がBARを経営する本当の理由

渋谷の深夜食堂「BAR Lm.」

IJK OMOTESANDOが、2019年に2店舗目としてオープンしたBARです。”美容室が系列店としてBARを持つ”。その常識を逸した取り組みは、多くの方から注目していただけました。

しかし、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言により、美容院と共に売上は大幅減。通常営業と異なった数ヶ月は、お弁当のテイクアウトや美容室のスタッフによる配達も行いました。

なぜ美容室がBARを経営するのか? 多くの方が疑問に思うはずです。オーナーの芝原は、「BARでの経験は、美容室の仕事にもつながる」と話します。この言葉の意味とは、いったい何でしょうか。

今回は、IJKのオーナーの芝原 俊輔、店長の釼持 恵梨香、副店長の川井 美緒のボードメンバー3名が、「BAR Lm.」について語ります。


”大切なブランドの為”に異業種を選んだ、芝原の選択

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ー美容室の2店舗目が飲食店ということは驚きました。はじめからBARを出そうと考えていらっしゃったのですか?

芝原:あまりないですよね。でも、美容室で考えたこともあります。

ーなぜ、そうしなかったのですか?

芝原:会社が上手くいかなくなると思ったんです。IJKってスタッフ同士の仲がすごく良いんです。美容室で2店舗目を出すことなったら、経験値的にエリカかミオ、どちらかを行かなせなきゃいけなくて、そうなるとスタッフ間の結束力みたいなものが無くなってしまう気がしました。

毎日顔を合わせることで信頼感が強くなり統率が取れている状況だったので、この状況を捨てるのは惜しいなと。

ー確かに、系列店であろうと同じ仲間が別の場所に行ってしまうのは悲しいですよね。

芝原:別店舗に行くかもってなったら2人としても嫌だろうし、僕自身も行かせたくないなと思っちゃうんですよね。結局、誰かが別の店舗に行っちゃうこと自体が無理なんです。だから結果として、一つの業態に1店舗しかお店は出さないようにしようって決めました。

ー会社の為にあえて同業種で出さなかったんですね。

芝原:本当に大切にしていることを、小さなことで壊したくないというのもあります。

ー大切にしているものとは?

芝原お客様が僕らに持って下さっているイメージを、大切にしたかったんです。2店舗目を出して、そこが管理しきれなかったら意味がない。今ある統率感が崩れて、お客様が持っているIJKブランドのイメージが壊れてしまったら、元も子もありません。

ーお客様のことも考えていらっしゃるんですね。

芝原:IJKなら他のエリアに出店したとしても、絶対に勝てる自信があります。だけど、月に数十万円の小さな利益を本部に入れるために、このリスクを犯すならビジョンをしっかり持って1店舗で突き進んだ方が良い。そういう結論に至りました。

ー飲食店にした理由は?

芝原:これはタイミング的にそうなりました。うちはプロバスケチームのスポンサーをやっているんですけど、たまたまそこが持ってるスポーツバーを買うことになったんですよ。だからBAR。それと、単純にお酒が好きということもあります(笑)

ーそうなんですね(笑) スタッフの皆さんは結構利用されるんですか?

川井:けっこう利用します(笑)

釼持:毎日通っています(笑)

ーなるほど、お酒好きにはたまりませんね。ただ、異業種を2つ経営するのは大変ではありませんか?

芝原:単純に大変ですよ。美容室と飲食店では考えることが違います。でも、いざやるならやっぱり本気でやりたいなと思って。だから、名前もIJKは使わず、それに続くアルファベットを取って「Lm.」という名前にしました。


社員の得のために、経営者としてやるべきこととは

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ー美容室とBARのスタッフさんは、別々のスタッフが働いているのですか?

芝原:Lm.の方には、プロの料理人を呼んでいます。宮永という店長を筆頭に、あとはアルバイトが2人。それと、美容室の方からアシスタントがバイトで入ったりしてます。

ーアシスタントがアルバイトに入るんですね。

芝原:実はこれもちゃんと意味があってやっています。昔、自分の給料が低くてすごく生活に苦労した経験があったんですよね。それがすごく嫌で。今の子たちにはそうなってほしくなくて、だったら自分が働く場所を与えることでお金を稼ぐための選択肢を増やしてあげればなって思いました。

ー副業の場所を作ったと。

芝原:全く違うところでバイトするより、系列店の方が営業時間の兼ね合いなど、融通が効くんですよ。僕からしたらアシスタントの状況も把握できるので助かりますし。もちろん、ただ働くだけじゃなくて安く飲めるようにしています。異業種展開することで、社員にとってのメリットがたくさん生まれるんですよね。

ー福利厚生の視点から見たら、ものすごく魅力的ですね。

芝原:うちの会社、めちゃめちゃ働きやすいですよ。社員の気持ちを背負い切れる会社を作らないといけないと、思っています。僕が業種を広げることで、社員が得するのであれば自分は勉強して、みんなの脳みそになる。

この子たちが髪を切っている間に、僕は経営の本読んで勉強するのも、めちゃくちゃ仕事だと思っていて、それが経営者のやること、やるべきことだなと思います。

ー全くの異業種で店舗を出すとき、スタッフの皆さんは意気込んだりするのでしょうか?

釼持:そうですね。

川井:芝さんがやると言ったら、手伝います。やっぱり経営者として私たちの及ばないところまで考えて先を見ているので。私たちは手伝うことしかできないですけど、できることなら何でもします。

ー芝原さんへの信頼が、本当に厚いんですよね。どうすればここまでスタッフのみなさんが会社のことを自分事にできるのでしょうか?

芝原:よく「どうやったんですか?」って聞かれるんですけど、うまいこと言えないんですよ。ただ目の前のやれることをやっただけです。本当にそれ以外は答えられない。戦略を持たないでひたすらに目の前のことをやってきた。美容室も3年目から有名店と呼ばれるようになって、新しくうちに入った子が「IJKに入ったのすごい」と言われたりするそうですが、実際の僕らには何の戦略意識もない。毎日毎日頑張ってきたっていう感じです。


真剣に目の前のお客様と向き合う為、必要なのは”経験”

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ーここまでで、異業種によるメリットがたくさんあることが分かりました。

芝原:でもこれって、福利厚生とかお金のメリットだけじゃなくて、美容室の仕事にも繋がったりするんですよね。

ーどういうことですか?

芝原: コロナの影響で美容室の売上が下がった代わりにBARでテイクアウトや配達を始めたのですが、美容室のスタッフにも手伝ってもらっているんです。もちろん僕も配達しているんですけど、単純に美容師なのに配達とか、めんどくさいはずなんです。でも、ここにも得られる経験っていうのがあって、無駄なことは無いと思っています。

ー配達が美容師の仕事に役に立つってことですか?

芝原:そうです。表参道って色々なお客様から注文が来るんですよ。その中には高級マンションからの注文もあったりしますよね。そうすると、実際にお金を持つ人がどういう暮らしをしているかを垣間見ることができるんです。例えばですけど、自分がめちゃくちゃ高所得だとしたら、あまりにも所得が低すぎて話が合わない美容師さんって、ちょっと嫌だなって思ってしまいませんか?

ーたしかに、話が合わないのは嫌ですね。

芝原:食の話になっても「安い居酒屋しか知らないの? もうちょっと良い店知っててよ」って、なるじゃないですか。そういう意味では、美容師は知っておくことが本当に重要なんです。目の前のお客様の生活を想像できないと、寄り添った提案はできません。美容師にとって、お客さんと話を合わせられるってすごく重要なことなんです。

ーなるほど。自分の知見を広げる意味でも、役に立つのですね。

芝原人との出会いがあるBARで働きたいという子がいたら、絶対価値になると思うのでやらせます。僕のBARだったら、経営者クラスの方もいらっしゃいますし、そこでの出会いで人間力に繋がる何かを得られたら良いじゃないですか。

ー様々な人を相手にする美容師だからこそですね。

芝原全ての経験は糧になる。僕はそう思っています。

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コロナの影響で大打撃の2店舗。美容室とBARを守っていきたい![※終了しました]

5月末を持って、IJK groupのクラウドファンディングを終了致しました。15,361,155円にものぼるご支援、またたくさんの温かいご声援をいただき、スタッフ一同言葉にならない感動と感謝を感じております。誠にありがとうございました!リターンでしっかりとお返ししていきます。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます!


BAR Lm.
住所:東京都渋谷区渋谷2丁目12-11 渋谷KKビルB1階
電話番号:03-6450-5007
定休日:不定休

IJK OMOTESANDO
住所:東京都渋谷区神宮前5-46-16 IL CENTRO CERENO 2階
電話番号:03-6438-9882
定休日:毎週月・火定休日(月曜日が祝日の週は火水休み)
HP:http://ijk-hair.com/

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執筆:菅井 泰樹
編集:柴田 佐世子 , 柴山 由香
撮影:池田 実加
バナーデザイン:小野寺 美穂



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