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日本代表:2022カタールW杯決勝トーナメント1回戦/クロアチア戦マッチレポート

決勝トーナメント1回戦、グループEを1位通過した日本代表はグループFを2位通過したクロアチア代表と対戦する。
日本史上初のベスト8をかけた熱戦は延長戦でも決着がつかずPK戦までもつれ込んだ。

マッチレポート

お互いの哲学と精神力がぶつかっているのがプレーから伝わってきた良い試合でした。
2018ロシアW杯準優勝と格上のクロアチアを相手にしても五分五分の展開を見せる日本代表。グループリーグでドイツ、スペインに勝利して勝ち上がってきたことは偶然でないことを証明できた。

クロアチアも日本をしっかり分析してきていた。前評判ではドイツかスペインを想定していたはずだが、少ない準備期間の中で日本の上をいくゲームプランを披露した。
日本のビルドアップがイマイチなので、3バックがボールを持った時のプレスが早かったし、身長差を考えて高い弾道のセンタリングやロングスローから空中戦を仕掛けるなど、日本のウィークポイントを確実についてきた。

今大会の日本は前半耐えて後半勝負のイメージがあるが、クロアチア戦でもこれまでと同じようなゲームプランだったと思う。
耐える時間帯が多い日本だったが前半から何度かチャンスは作れていた。それが実ったのは前半43分、変化をつけてショートコーナーからインスイングするセンタリングを上げると吉田麻也選手が落としたところを前田大然選手が左足で蹴り込んで先制ゴールを決める。

グループリーグで日本は常に先制を許していた。そこから選手交代で流れを手繰り寄せ、ドイツ、スペインを相手に逆転勝ちを収めてきた。日本が1点をリードする展開がここまで無かったため後半からの交代策が読めなくなった。

前半クロアチアのプレーで気になったのは、日本の右ウィングバックと3バックの右の間のスペースを起点に攻撃を仕掛けてきたこと。
怪我から復帰後初先発となったとはいえ、アーセナルでプレーする冨安健洋選手の守備エリア側を狙って崩しにくる意図が見えなかった。コンディションがまだ戻ってないと判断され狙い目にされたのかもと思っていたが、後半クロアチアが同点に追いつくための布石だったかもしれない。

後半からもクロアチアは日本の右サイドを起点に攻撃を仕掛けて来ていたが、中央から左サイドへ徐々に起点をズラしてきた。日本は早めのプレスで間合いを詰めるより、ブロックを作って安全策を取ったのだが、ディフェンスラインの間隔が相手のスライドに対応するためやや広くなっていた。

後半10分、ボールホルダーへのプレスが遅れたことで簡単にセンタリングを上げられ、ペリシッチ選手のヘディングで同点ゴールを許してしまった。
守備は崩されていなかったが、ディフェンスラインの間隔が少し広くなっていたため、マークにつくのが遅れ競り合うことも出来ず、フリーで合わせられてしまったのが痛かった。
ゴールシーンだけ見ればパワープレーにやられたように見えるが、クロアチアの相手に的を絞らせない変幻自在の攻撃が生み出したゴールだった。

1対1と同点になった以降、試合は膠着状態となった。日本もクロアチアも決め手に欠けるプレーでゴールが生まれる感じはしなくなった。最初から延長戦、PK戦を想定したゲームプランを考えていたのかもしれない。

PK戦までもつれ込んだら祈ることしかできない。個人的には90分で決めて欲しかったし、延長前後半で点を取りに行って欲しかった。ノックアウトラウンドに突入し、グループリーグとは異なる消極的になった日本ベンチの采配が、ベスト16の壁を越えることを許してくれなかったのかもしれない。

1位通過した勢い

スペイン戦で機能した3-4-2-1をクロアチア戦も試合開始から採用した。3バックの1角を務めていた板倉滉選手が累積警告のため出場停止、久保建英選手が体調不良のため欠場、遠藤航選手が先発に復帰した以外は大きく変えて来なかった。

スペインもクロアチアも4-3-3ということで同じシステムを採用したと思うが、クロアチアの中盤3枚が流動的なので日本も4-3-3にして中盤3枚を流動的にしてガチンコ勝負を挑んでも面白かったかもしれない。

ただ、今大会の流れを考えると3-4-2-1が格上を相手に機能しているので、ノックアウトステージでも日本が主体性を持ってプレーするためにスペイン戦をベースにしたのは理解できた。

後半勝負に出れなかった原因

後半開始と同時に選手交代を行なって後半勝負を仕掛けるプランが定番となった日本だったが、1点リードで前半を折り返したため前半と同じイレブンで勝負の後半戦に挑むことを選択した。
後半10分に同点に追いつかれたことで、1トップに浅野拓磨選手、左ウィングバックに三笘薫選手を投入し勝ち越しゴールを奪いに行く姿勢を見せる。これまでの傾向なら両ウィングバックが高い位置を取って、攻撃に厚みを加えていくのだが、この試合に限っては機能しなかった。

三笘選手のドリブルは日本のストロングポイントだが、三笘選手が左サイドでボールを持つたびに、2人体制でマークに付かれてしまいドリブルのコースも限定されてしまった。ディフェンスラインから三笘選手へのパス供給も、コースを消されてしまっていたため簡単にボールを預けることも難しい状況になっていた。

三笘選手にマークが集中することは他の選手がフリーになりやすいため、1トップの浅野選手にボールは入っていたが、あまりキープ出来ずに攻撃のスイッチを入れることが出来なかった。立ちはだかったのはセンターバックのグヴァルディオル選手。浅野選手が1対1で完璧に封じ込められてしまったため、ほとんど何もさせてもらえなかった。

またセカンドボールをマイボールに出来なかったため、中盤での主導権も取りきれなかった。モドリッチ選手、コバチッチ選手、ブロゾビッチ選手のクロアチア不動の中盤を日本の中盤が上回れなかったことも要因の1つだと考える。

PK戦の采配

日本のPKキッカーは、南野拓実選手、三笘薫選手、浅野拓磨選手、吉田麻也選手の順番だった。順番がどう決まったかはわからないが、120分フル出場した選手より途中出場した選手の方が足の力は残っているので、途中出場した選手からキッカーを務めるのは理解できる。

クロアチアのPKキッカーは、ブラシッチ選手、ブロゾビッチ選手、リヴァヤ選手、パシャリッチ選手とブロゾビッチ選手以外は途中出場の選手だった。
注目したいのがブラシッチ選手とリヴァヤ選手と延長後半開始から途中出場している。もしかしたらこの2選手はPK職人だったかもしれない。
それを見越して延長後半から最後の交代カードを使ってPK戦への準備をしていたとなると、ベンチワークでもクロアチアが上回っていたことになる。

PKは運だとか、技術やメンタルが必要と色々言われているが、日本のキッカーがクロアチアのゴールキーパー、リバコビッチ選手を上回れなかったことに尽きる。

私の個人的な見解はPK戦にもつれ込む前に試合を決めて欲しかった。

カタールW杯日本代表メンバー

[GK]
川島永嗣(ストラスブール/フランス)
権田修一(清水エスパルス)
シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/ベルギー)

[DF]
長友佑都(FC東京)
吉田麻也(シャルケ/ドイツ)
酒井宏樹(浦和レッズ)
谷口彰悟(川崎フロンターレ)
山根視来(川崎フロンターレ)
板倉 滉(ボルシアMG/ドイツ)
冨安健洋(アーセナル/イングランド)
伊藤洋輝(シュトゥットガルト/ドイツ)

[MF]
柴崎 岳(レガネス/スペイン2部)
遠藤 航(シュトゥットガルト/ドイツ)
伊東純也(スタッド・ランス/フランス)
南野拓実(モナコ/フランス)
守田英正(スポルティング/ポルトガル)
鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)
相馬勇紀(名古屋グランパス)
三笘 薫(ブライトン/イングランド)
堂安 律(フライブルク/ドイツ)
田中 碧(デュッセルドルフ/ドイツ2部)
久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)

[FW]
浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)
前田大然(セルティック/スコットランド)
上田綺世(セルクル・ブルージュ/ベルギー)
町野修斗(湘南ベルマーレ)

[怪我で不参加]
中山雄太(ハダースフィールド/イングランド2部)

あとがき

今回もベスト16の壁を越えることは出来ませんでした。ベスト8以上は4年後までお預けです。
私の予想では日本代表はグループリーグ敗退としていましたが、良い意味で裏切ってくれました。
ドイツ、スペインに勝利した事実はW杯の歴史として残るので1人のサッカーファンとして誇らしいです。

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