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『DAU ナターシャ』を見た

こんにちは。シニヨンです。オリンピックも一段落、みなさんどのようにお過ごしですか?

今年の夏、ある映画が封切られますが、上映時間なんと6時間半。普通の映画が2時間くらいですから相当長いですよね。こんな映画、夏休みくらいしかなかなか見られませんよね。

ロシア製作のこの映画は『DAU 退行』といいます。ただ、その前シリーズの映画『DAU ナターシャ』があるので、そちらから観るのもよいでしょう。ただ、まだDVD化されていないので、有料サイトを見つけて観るしかありませんが。

さて、この『DAU ナターシャ』の舞台は、ソビエト治下のある研究所です。ここでは極秘の軍事プロジェクトが進行していて、当ヒロインのナターシャはそこのカフェで女給をしています。このナターシャはそろそろ容貌もくたびれて、胸も垂れて中年にさしかかっている。かたや同僚のオーリャはまだ若く、はちきれんばかりの身体をもっている。ナターシャは、妬ましさ故か若いオーリャに気まぐれに意地悪するが、かといって他につるむ相手もいないので普段は仲よくする。

あるとき、ロシア語を解さないが優秀な老科学者がやってくる。カフェのふたりと科学者とその連れは意気投合し、その後ナターシャと老科学者は寝る(このセックスシーンが意味わからんくらい長い💦)。

そのあと数日が過ぎ、ナターシャは昼間はカフェで仕事をし、夜はオーリャと深酒しては大喧嘩をくりかえす。

しかし、あるときMGUにナターシャは逮捕される。外国人の科学者と寝たという罪で。そしてこの尋問官にそれはそれはおっそろしい尋問(いっておきますが、この映画はR18です)を受ける。が、ナターシャはかろうじて残された性的アピールでこびを売り、でっちあげの証書にサインして危機一髪で助かる。(おそらく老科学者は・・・ご冥福をお祈りします)

この映画、すごいのはソ連社会を再現するために、リアルに俳優たちのために小ソ連的な施設をつくり、そこで2年間暮らさせたという点です。食べ物も新聞も通貨もなにもかも当時のСоветская культура(ソビエトの文化)を忠実に再現したということで、役作りとはいえ、すごい実験的な試みですよね。

しかも、R18といってもバイオレンスではない意味で描写がものすごく過激で、それもあってロシアでは賛否両論の嵐が吹き荒れました。

はっきり言うと、この映画は万人に観てほしいという類いの映画ではありません。人間の醜く陰惨な部分がむき出しにされた社会で、しかしそれでも、絶望してもなお生きていかねばならない人の話です。このナターシャは辛い目にあっても生きる雑草根性の持ち主です。こういう人々が当時の東側にはたくさんいたのかもしれません。けれども、彼らはものを感じない雑草ではない。血を流すし、涙だって流す。踏みつけにされて痛くないわけがない。

おそろしく辛い目にあっても次の日には平然と職場へ行っている彼女の姿がまた辛い。

もし観る勇気のある人はひとりで、夜に観ることをすすめます。



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