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あるきかた。

 人生を変えた一冊があるとして、自分にとってのそれはとあるゲームの攻略本だった。その名も「ドラゴンクエスト7のあるきかた」。昨今攻略本としてイメージされるようなデータベースというよりはゲームを題材にした論文集だった。「最大ダメージを出すには」とか「一番当たるカジノスロットはどれ」みたいな話から「世界の人口調査」、「モンスターの遭遇割合からみる縄張り争い」、「アミットまんじゅうとアミットせんべいの分布からアミット家の商業戦略を考える」みたいな話まであってとても読んでいて面白かったのを覚えている。ドラゴンクエスト7を遊び尽くしたバイブルで、今思えば公式同人誌みたいなものだったのかもしれないと思う。どんな要素も解釈と考え方次第でどこまでも楽しくできる、それがたぶんタイトルのあるきかたなんだろうなと思う。
 結果として、その本のおかげか、本を読むのが好きで、ゲームをするのが好きで、二次創作めいたものも好きで、何より統計的なデータで遊ぶことに楽しさを見出して今の仕事をしていると言っても過言ではない。実際にこの話は最終面接で社長に話した。受けがよかったかは覚えていない。
 そこからたどるに、うまく興味に沿って人生進んでいるようで時々あの時ああしておけばよかったなぁとか考える。最近は特に、大学時代にもっと教養めいた本を読むとか、専攻の研究をもっとしておけばよかったなぁとふと考えてしまう。

 というのも、きっかけは自分の好きなコンテンツ(特にアイドルマスターシャイニーカラーズ)の面白い考察やSSを書く人にふれる機会が増えたからだ。彼ら彼女らは知識の引き出しが違うし、表現力が違うし、それを引っ張ってくるためのインポートの質が違うよなぁと文章の一行、会話の一節から感じてしまう。膨大な読書量、多大な鑑賞時間、そして出力した文字数。どれをとってもかなわないよなぁと思いながら最近文章を書いたりしている。
 とはいえ、大学時代に勉強していなかったかというと、そんなことはないと思う。コードは書けるようになったし、論文も何本か書いて発表はしたし、小さいながら賞もいただいた。うまく言ったみたいな話を書いているようで、実際は本当に大した結果は出ていないのだけれども、自分がインターネット5年生くらいから興味関心があったことをテーマに研究させてもらえたのは間違いなく贅沢な経験だったと思う。
 多分、多分だけど、前述の文章の達人には出来ないことが自分にはできるようになったのだろうなと思うし、何をしても隣の芝はとことん青く見えるものなのだ。それに過去の自分を認めておかないと今の自分とその出会いに失礼だよなぁとも常々思ってしまう。中学の時に部活で死ぬほど怒られたから、高1の秋にそれなりに悩んで理系を選んだから、大学受験に失敗したから、なんとなくのイメージで北海道ではなく九州を選んだから、そして12年近く惰性であったとしてもTwitterで呼吸をしていたから、今この文章を読んでいるあなたに出会えているんだろうなとか考えている。ありがとうございます。

 なのでやっぱり過去の出来事の積み重ねで今に至るのであって、それはすべて正解なのだろうなということにしておきたい。True EndというかTrue Path。本読んでこなかったけどそれはそれでいいのだ。だから今足りないことは今から足していけばいいのだ。そのための時間のやりくりが一番難しいのだけれど。とここまで考えて、過去は何やっても今の技術では干渉できないのだから、今より先をどうするかを考えたほうがやっぱり建設的だといういつもの結論にたどりつく。今を楽しく、それでいてちょっと未来でも楽しい"今"を過ごすことができるように多少は楽しくないこともやって備えておく。自分なり人生のあるきかた。
 というわけで明日楽しく過ごすために、ひとまずお風呂に入ろうと思います。好きな音楽と柚子の香りを添えて。

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