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まだ身についていません

白状すると、十数台真空管アンプを自作したからといって、自分で簡単なシングルアンプであればある程度設計図を書く事ができるからといって、また、トラブルを解決して何とか鳴る様にする事ができる様になったからといって、基本中の基本の真空管アンプの増幅の原理、そして電気の基礎知識に盤石な自信があるかと言うと、全くそんな事はない。

私の教本は、「作れる!鳴らせる!超初心者からの真空管アンプ制作入門」(林正樹著)と、「真空管アンプの素」(木村哲著)だ。

実体配線図で作る真空管アンプでは、意味が分からなくても実体配線図の真似をして作れば必ず作成に成功していたのだが、それを卒業して、少し回路のことを理解し始めて、経験的な感を含めて、自作の回路を作成し出すと、この二冊がとっても役にたつ。

初めのうちは、増幅の原理の説明や図を見ても全く頭の中にイメージが湧かない部分が多くて、何回も何回も繰り返して読むうちに少しずつ著者の言わんとしている事が、おぼろげながら見えてくる。しかし、自身の学生時代の頃からそうだった様に理論的なことは納得しないと一向に記憶として残らず、知識がなかなか蓄えられない。なんとなく理解したように思っても、もう一度読み直すと新たな疑問が浮かんできて、記憶の領域にたどり着かない。こんな調子なので、同じところを10回以上読んでもなかなか完璧とはいかない。

私の長所は、ねちっこいことのようだ。好きな事であれば、諦めずに繰り返すことができる。いまだに、この二冊を時あるごとに読み返すと、以前よりは一歩ずつ理解が進んでいるようにも思う。そして、自作をしながら実体験をしたことがあると、漸く、本の意味を本質的に理解して記憶に結び付くようだ。

自分で設計をすると、オームの法則で抵抗、電圧、電流の関係が少しづつ理解できるようになる。(漸く中学の物理レベルを理解?)派生して自己バイアスの計算や、その時の電流と電圧、そしてバイアスの関係でEp-Ip曲線を描く事ができるという事も理解できる。(漸くこの歳なって二次曲線の意味を知る?)
しかし、それらの知識を体系立てて頭の中でそしゃくするにはもう少し時間がかかりそうである。

教本を読み返すたびに、そこに書かれている言葉の意味が、今まで自分が理解していたものと全く違ったり、一文章の意味がとても深いことを言ってたりと新たな気付きがある。

そのようなわけで、私がいつも音楽を聴くリスニングポジションには、必ずこの2冊の本とそれ以外の真空管作成本を置いていつも見返している。
その都度、新たな発見があり、すると、またその発見に基づいた実験をしたくなるので、すると、次の製作案がふつふつと湧いてくる。
そのたびに、カミさんになぜまた作るのかの言い訳や、軍資金のありかを探している。

きっと、まだ身についていない技術だから、疑問が多い技術だから興味をもってそれを解き明かしていこうという原動力が生まれるのであろう。
まだまだ、身についていないという事を前向きに捉えて一歩ずつ進んでいこうと思う。

いい音おやじは、そんな事を考えながら、まだまだ、ワクワクが止まらない。