森は見ません、木が見たい。

木を見て森を見ず。

この言葉を最近よく思う。

女性の方、よく言われませんか?
男性の方、よく言ってませんか?

「仕事をする上で、女性はどうしても『木を見て森を見ず』になりがちだから」

これを意訳すると
女性は細かいことに気を配ることができる分、
どうしても目の前の「これがうまくいかない!」ことがあると
つまづいてしまう。止まってしまう。こだわってしまう。
キーッてなってしまう。
もっと大局的な見地から見て
ちょっとくらいどこかうまくいってなくても
どんどん進めていこう、それが結局は早道なのだから・・・

ということなんだと思う。

これは女性/男性という分け方の話じゃないのかもしれないが
確かに、私(女性)は、まったく森なんか見られないタイプだ。
(もしかしたら脳の違いというやつなのかもしれない←科学的根拠ゼロ。)
 
これが台本を書いているときだと、
とにかく森を構築しないといけないため
ちょっとくらい細部がおかしかろうが
うまくいってなかろうが
最後まで書いてみるようにしている。

しかし
こと仕事となると
もう、木ばっかり気になってしまう。

これは「完璧主義者」というのとも違う。
私は完璧主義者ではまったくない。
もし、100点のものを期日通りに仕上げられないときは
120点のものを期日遅れて仕上げるより、
60点(合格点)のものを期日通りに仕上げることのほうが
仕事では大事だと思っている
(もちろん100点のものを期日通りに仕上げることが、一番いいです)。

でも木を見たいんです。
「相手がいる」から。
仕事というのは取引相手がいて初めて成立する。

3月。
私が所属する事業部は
これまでの売り上げの約3倍以上の目標を掲げ、
達成or撤退という絶対条件を自らに課し
営業部はもちろん、システム部門、編集部門、あらゆる部門が
必死になって売り上げを追った。

結果、目標を圧倒的に達成した。
泣いている人もいた。

私は目標は達成されてほっとしたが
達成「感」はない。
とにかく疲れた。。。

私は営業部に所属しているが、
ムリしてとってくる仕事に不安しか感じなかった。
そりゃ「撤退」ということになったら
社内無職になって下手したらリストラされるかもしれない。
でも私としては「そんなこと」より、
こんなに頑張っても達成できないなら
事業計画か人(チームの能力)か
どこかにムリがあるんだから
撤退したほうがいいと最初から思っていた。

既存クライアントには迷惑をかけるが、
これから迷惑をかける新規クライアントを出すより、よほどいい。

しかしこういう考え方は「新しいことやろうぜ!」という会社では
まったく向かないこともわかるし
何より私は、営業部員のことが可愛い。可愛くて尊敬している。
彼らが頑張っているのに私だけ後ろ向きなことはいえない。
だから、自分の意思とは違うけれど
来た仕事は黙々と打ち返した、つもりだ。

それに
私がこだわっていることが
本当にそれほど重要なことではないのかもしれない、
と、常に疑い、検証しないといけないということもわかる。

それでも基本的に
私は「1本の木」を大事にしたい。
「1本くらい」というような考え方で
森を作って、それが何になるのだろう?

広く人々に影響を与える。
そういうことに興味がないのかもしれない。

それは結果としてついてくるものであって
目標とすることではない気がするからだ。

公演を打つとき、
来てくれた人全員に満足して帰ってほしいとは思うけど、
それは私の力ではすごく難しい。

でも劇場に来てくれた人のうちたった1人が、
「これを見て良かった」「人生変わった」と
心から思ってくれたら、それで私の台本は成仏できる。
これは大好きな小説家たちから学んだこと。
目の前の編集者1人に喜んでもらえるように書いている。
ある作家はそう言っていた。
それが、うまくいけば、本の向こうのたくさんの人々を救う。

しかし私にとって演劇は趣味である。
仕事も同じに考えていいのだろうか。

うーん。

大きな事業。
大きなお金。
それを目指すことも、とても素晴らしいことだ。
私たちの事業には社会的意義もちゃんとある。

でも私は私の目の届く範囲の人が幸せになってくれたらそれでいいのだ。
木を大切に植えていって、
ある日気が付いたらちょっとした森になっていたら
そんなすごいことない、と思うのだ。

でもおそらく、考え方にはそれほど違いはなくて、
先に森をとにかく作ってから1本ずつケアしていこう、ということなのだろう。
「仕事」にはキャッシュ(現金)が必要だ。
現金をもらわないことには、給料が払えない、必要なものが買えない。
それもよくわかる。
霞を食って慈善事業をやっていくわけにはいかない。

これ書いてるPCだって、
買えたのは会社からのお給料(=クライアントからの報酬)のおかげなのだ。

つくづく事業家ってすごいなと思う。
でもほとんどの事業家はヒトデナシだと思う(笑)
ヒトデナシを自覚して、やっていけるかどうかなんじゃないだろうか。
そしてサラリーマンとは
そのヒトデナシについていく価値を見出せるかではないだろうか。

私は自分がヒトデナシになりたくないから、
木を見ようとするのかもしれない。

これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m