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スーパーの女!(我々がまだコロナを知らなかった時代へのオマージュ)

過日。大阪の松井(一郎)市長が「スーパーマーケット(スーパー)には男が行った方がいい、女は男より買い物が長いから」と発言したそうで、物議を醸していた。

私はこれを何かの英語ニュースで知った。
探したら、まだネットに残っていました。ネットって怖いデスネ。

Japanese mayor says men should grocery shop during pandemic as women 'take a longer time'
By Emiko Jozuka, CNN(April 24, 2020)
https://edition.cnn.com/2020/04/24/asia/japan-coronavirus-osaka-mayor-hnk-scli-intl/index.html


0)前提


もはや今という時代は、我々は新型コロナウイルスを知ってしまった。
だから感染拡大を避けるため、スーパーが「3密」にならないよう、客側も工夫をしなければならないし、協力をしなければならない。それは正しいことだと思う。
「少人数で、素早く、空いている時間に買い物に行く」というのがコロナ時代のエチケットになるだろう。

ただ・・・だからといって「買い物は男が行くべきだ」というのは、あまりに短絡的すぎると思う。
確かに「女性の買い物は長い」という意見、印象があることは承知している。一部、賛成できる部分もあります。

しかしこの発言に関して言えば、以下4つの意味でダメである。


1)政治家として脇が甘い

「買い物に行くのは男が向いている」という発言は
(だから)外に出るのは男が向いている、
(つまり)外に出て「働く」のは男が向いている。
と、根底には「男が外で働き女は家を守る」という発想があるんじゃないですか? と突っ込まれる可能性がある。
現に、こうやって海外ニュースで取り上げられた。
記事では、松井市長の発言と、「日本は、ジェンダーイークオリティが149か国中110位、ジェンダーギャップはG7の中で最下位」ということが結び付けられちゃってる。
「日本はいまだ、ほとんど男性支配的な社会です」ってことになっちゃってるし。
ちなみに記事では、大阪は「日本第三位の都市」とされているが、二位はどこなんだろう…。ヨコハマ?

2)「買い物が長かった」時は「生活必需品の買い物」だったか?

特に、子育てや介護と家事を両立している女性は、悠長に買い物していない。というのが生活者の実感だ。そりゃ、3か月に1回とかはあるかもしれませんが、普段の買い物をそんなたらたらやってる人はいないと思う。「買い物に行くヒマも惜しい」と早くからネットスーパーを利用していたワーママの友人もいた。

私は、家族3人(母、私、弟)の夕食係を担当していた時期がある。
会社から真っすぐスーパー行って、とにかく買い物して、3人分の夕食を毎日用意した。
私は料理ができませんので、品数は少ないし、お惣菜を買ってみそ汁だけ作るとかそんなんだったけど、それでも、結構プレッシャーだった。

スーパーで買う物はだいたい「スタメン」だし、メモを用意してさっさと買って、さっさと帰ってましたよ。だらだらする理由ないし。疲れてるし、食事の時間は決まってるから! (で結局は市販のルーで作ったカレーが一番喜ばれる!!!)

女性にとって、デパートでお洋服を買ったりしているのと、日々の必要に迫られての買い出しは次元が全く違う。だいたいの人は時間に追われてます。


3)女性の買い物が長くなる「真」の理由

・・・もう今後はこれも許されなくなってしまうのかもしれない。
たった数か月前までの古き良き時代の話として聞いてください。


女性の買い物が長くなる理由。
それは「目的志向」で買い物をしていないからである。

「事前に買うものをリストアップしておけばいいだろ?」 
そういうことではない。

1軒のスーパーに行くということは「視察・偵察」である。

それが証拠に、女性は「今日はぜったいに買わないであろうもの」の前も、一応通るのだ!
ほぼすべての通路をすーっと一巡する。
それは「他店のカカク」や、「同じ店の過去と未来のカカク」と比較するための、大事な定点観測・情報収集なのである。
そのやり方も、「あら、これ、角の店より安いわねえ」とカートを止めて、手に取ってためつすがめつ・・・なんて悠長なことはしません。
歩いて通るその一瞬に、スキャナーのようにばーーーーーーーーーーっと値札を読み取って脳にインプットします!(少なくとも私はそうです)

つまり、女性は何か1つ買うにも
「今ここで買うべきか」他店と価格を比較考量し、脳内にインプットしながら、冷蔵庫の残りの量、これから食べる量、何回分かのメニューを勘案し、
次に買い物に行く日とその時の荷物の量も予測し…
同時に多種多様な要素を計算式に入れて、脳をフル回転させているのです!

(だから、おばちゃんたちはブツブツ独り言を言いながらスーパーを歩いている)


松井市長の「女の買い物が長い」は、イメージだと思う。
少なくとも家族のための食料品の買い出しであれば、たらたら買い物してる人はたぶん少ない。
ゆっくり歩いていたとしても脳はフル回転している。
渡されたメモを見て、ただそれを買ってくる(Amazonならロボットがやっている)仕事をたまに代行する人とは違うのです。
だいたい、メモを書く側は、それ書く時にも脳をフル回転させてます。
なぜなら「普段買い物に行かない家族に、望む品物を100%間違いなく買ってこさせるのは、ほぼ不可能」だから!

私は申し訳ないけど見出し読んで、「家族の食事のための買い物したことないでしょ」と瞬間的に思った。(松井市長が実際にどうかは知らない。でもそういう印象を抱かせている時点で、政治家としては"負け"だと思う)

4)性差ではなく役割

そして最も大事なことは、もしこういう議論をしたいなら「男だから女だから」と考えるのではなく、そういう「役割の人」として考えないとダメだし、表現しないとダメということです。特に今の時代は。特に政治家なら。

私が、本稿で「女」と書いてきたのは、たまたまそういう役割を担っているのは日本では圧倒的に女性が多いからである(なぜなら!!! 以下略)。上記の話は、おそらく食事作りを担っている「男性」にもわかってもらえると思う。

なんでも簡単に「性差」と結びつけてはいかん。。。
特に「家事」は、生まれ持ってのものではなく日常の中の「役割」が思考を形成する。自戒を込めてそう思いました。


なので、「女は買い物が長い」は破たんしていますし、「女は」と議論をまとめしまった時点で、ジェンダー的にアウトな思考をしてるということが露呈してしまった。「女を来させなければ3密が回避できる」ということは、「スーパーに来るのは女性が多い」という前提がある。ではなぜ女性が多いのでしょうね? 仕事を持つ女性は右肩上がりに増えているのにね。ということです。


X)でね、私は夢見る。

大きな大きな、アメリカ映画に出てくるようなピカピカのスーパーで、何百種類もある品物を、時間もお金も気にせず、心行くまで、ためつすがめつしたいですね。


いつかね。


これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m