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楽しい風土記

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常陸国風土記を抜粋して現代語訳しました。風土記の中で最も魅力的な常陸国の全体を味わえるダイジェストです。本文全14回と前書き、後書き。すでに完結しているので、1冊の短い本のように…
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マガジン版のための前書き

常陸国風土記 古代の常陸国ジオグラフィック  はるかな昔、朝廷から各地の役人に、地勢や産…

伊井直行
2年前

風土記の地名物語――常陸国1

 浄い泉に触れる倭武の手 倭武天皇は東の夷の国をご巡察なさって、新治の県を過ぎようとして…

伊井直行
3年前
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風土記の地名物語――常陸国2

 筑波郡(現在のつくば市)について。古老の語る地名起源。昔は「紀の国」(「木の多い国」か…

伊井直行
3年前
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風土記の地名物語――常陸国3

 志太郡の回。黒坂命のエピソードは、一般に常陸国風土記の本文ではなく、逸文に含まれます(…

伊井直行
3年前
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風土記の地名物語――常陸国4

 茨城郡の回です。佐伯の話は、現代人の視点では、先住の土着民を朝廷方が征服したことを、黒…

伊井直行
3年前
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風土記の地名物語――常陸国5

 行方郡は長いので分割します。常陸国風土記の伝本には、「以下略」と記されて原本から削除さ…

伊井直行
3年前

風土記の地名物語――常陸国6

 行方郡の2回目は、蛇を神格化した夜刀の神の話です。風土記にしては珍しく時系列に沿った展開がみられ、神秘的な夜刀の神や、見るなのタブーなど、神話的な物語になっています。稲作農耕の広がり、宗教や民俗の側面から見ても示唆的です。  夜刀の神――頭に角のある蛇 古老が次のように語ります。継体天皇の御代(6世紀初め)に、箭括氏麻多智という人がいました。郡役所の西方にある谷の葦原を開墾し、新たに田を造成しました。  この時、夜刀の神が群れを率い、みな一緒になってやって来て、あれこれ

風土記の地名物語――常陸国7

 行方郡の最終回。今回はかなりカットします(事情は解説で述べます)。舞台となるのは現在の…

伊井直行
2年前

風土記の地名物語――常陸国8

 香島郡の第1回です。県南部太平洋側の地域。茨城県の地域区分は、他は県央、県南などと散文…

伊井直行
2年前
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風土記の地名物語――常陸国9

 香島神宮の周辺 神社の周りは、卜氏の居所となっています。土地は高く開けており、東と西は…

伊井直行
2年前
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風土記の地名物語――常陸国10

 香島郡の最終回。常陸国風土記中でも特によく取り上げられる童子の松原の伝説が中心です。童…

伊井直行
2年前

風土記の地名物語――常陸国11

 巨人の里 平津の駅家から西に一、二里の所に丘があって、名を大櫛と言います。大昔、そこに…

伊井直行
2年前
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風土記の地名物語――常陸国12

 鬼と鏡と猿 郡役所の西北六里に河内の里があります。元は古古の村と名づけられていました(…

伊井直行
2年前
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風土記の地名物語――常陸国13

 薩都の里  太田の里の北に薩都の里があります。大昔、ここに国栖がいました。名を土雲といいます。ここで、兎上命が兵をさし向けて全滅させました。この時、兵たちが敵をよく殺したことを「福なるかな」と言ったことから佐都と名づけました。この里の北側の山に産する白土は、絵を塗るのに適しています。  木の上の神様  東の大きな山を賀比礼*の高峰といいます。ここには天から降った神が鎮座していらっしゃいます。名を立速男命と称します。またの名を速和気命。はじめは、天から降って、松沢の松の