一喜一憂

 明日から離乳食を始める。
 まずは、10倍がゆの重湯の部分。早起きして小鍋でコトコト炊くのだ。そうすると食いつきが違うよ、と栄養士さんが教えてくれた。
 長女のときも初めだけは、コトコトと鍋で炊いたかゆを小さな口に入れた。産まれて初めての一口を、これから何十年と続けていく一口を、できるだけ大切に大切に伝えたかった。
 その想いが伝わったのかどうか、三歳になった長女は一人前の偏食家で一日三回の食事がストレスでしかない。
 どれだけ頑張って離乳食を進めようが、どうにもならないことはある。相手は一人の人間なのだ。
 離乳食なんて、結局のところ丁寧に時間をかけたアレルギーチェックと咀嚼の練習である。食べた食べないで一喜一憂するものではない。頑張れば頑張るだけ、数年後の食生活に不満を持つのかもしれない。
 明日は、コトコトと時間をかけておかゆを作る。そして、残った分は小さじにわけて冷凍する。小鍋で炊くのは今回きりだ。次からは炊飯器を使う。
 手間隙ばかりかけていられない。
 これから先も、毎日毎日この子たちは当たり前に食事をするのだ。私はその足がかりを作るだけ。健やかに続く何十年の第一歩目をそっと手伝うだけなのだ。
 初めてのご飯にどんな顔をするだろう。食べてくれるだろうか、吐き出してしまうだろうか。そわそわと、心が勝手に腰を浮かせた。

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