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国立市・東大、協定調印式の様子(4)

ビジョンは「誰もが同じところで共に学ぶ」

記者)目標はどこなのかというところ、ちょっとしつこくて恐縮なんですけれども、フルインクルーシブ教育っていうのを掲げていらっしゃって、これがまあ、すごくそのインパクトがある。それは「すべての子どもがすべての時間を同じ普通学級で学ぶ」。これが目標ではないのか。何かちょっとその目標について少し濁されてるのがちょっとわからないところだな、と今までのお話を聞いてて思っていて。フルインクルーシブ教育を目指すんだっていうことだと、ゴールは決まっていませんか? 先ほどからおっしゃっている「ちょっと、こう最終目標どこに置くか」というお話と、「フルインクルーシブを目指す」というところが少しかみ合っていないような気がして。ここについてのお考えをもう少し、もう一言いただけませんでしょうか?

雨宮教育長)今の問いに関しては、もうビジョン。いわゆる将来の見通しっていうことでは、フルインクルーシブ。その「誰もが同じところで共に学ぶ」。これがビジョン、将来の見通しということで、私どもは申し上げたいと思います。

記者)最終目標はそこだということで、はっきりしているという理解で?(※教育長うなづく) ただそこに至るまでの困難さっていうところで、いろんなお話をいただいてるという理解でよろしいんですかね。

雨宮教育長)はい、結構です。結局そこに至るにあたっては、さまざまな、その関係者の方々がいらっしゃいますよね。当事者である児童・生徒もそうですし、保護者もそうですし、教職員もそうですし、われわれ教育委員会事務局もそうですし。そこがやっぱり共通理解のもと、その実現を目指していきたい。その間には、さまざまなことがありますよね。じゃあ、スペースの問題はどうなんだとか、あるいは人の問題はどうなんだろうとか。あるいは先ほど出ていたように、じゃあカリキュラム、授業はどういうふうにしていくんだ。いろいろな子がいる中においてですね、そういうことを一つ一つ、潰していくしかないんだろうなというふうには思ってます。

望ましいのは少人数だが…

記者)今、お話があったので、もう一言でもいただければ。フルインクルーシブ教育を実施していくに当たっては、教育関係者が、やはり障害のある方のバリエーションがあり、法律で能力に応じて、あるいは学校教育法にも、積み重ね教育のようになっているので、その非常に教育しにくいと思っているところがあるところを、どのように払拭し、乗り越えていくのかが非常に大きく問われるところ。たとえばその、今イタリアの記事でも少人数学級の話が出ていますけれど、そういったこともやっていくみたいなことがこう一言出ると、学校教育者も「ああ自分たちにもできそうだ」というような気持ちというか、お考えになれるのではないかと思って、ちょっともう一言をお聞きしたいと思います。

雨宮教育長)これはですね、「もう一言」というふうにおっしゃったんですけれども、あの、今でもその通常の学級には様々な特性を持ったお子さんたちが、まあ当然いらっしゃいますよね。それが大前提だというふうに思います。そこにさらに、もっといろいろな特性を持ったお子さんたちも一緒にっていうふうになったときで言えば、やはりその1クラス20人ぐらいを、担任がいて、様々な支援を必要なお子さんたちにつく大人が、何人がいいかはわからないですけれども、そういう体制が望ましいんだろうなというふうに、個人的には思ってます。

 「じゃあ、それを国立市でできるんですか」ということに関しては、今、まだそれは実際としては申し上げられないですけど、先ほど申し上げたように、市でそこまで人材を抱えられる余裕があるかっていうとそれはありませんので、そこをどうクリアしていくのかっていうのを、皆さんで知恵を出していけたらいいのかなっていうふうに思っています。

「通常学級の改善を」

記者)今すでにいろんな特性がありながら、通常学級を希望されていたり、既に通常学級に入ってらっしゃるお子さんも中にはいらっしゃると思うんです。「時間はかかるよ」というお話がありましたけれども、一方でそういうお子さんたちは今、学校に通っている。そういう意味では、そういうお子さんたちに対して、早くから、先ほど短期中期長期みたいなお話はありましたけれども、早くから何か取り組もうと思っていることはあったりするのでしょうか。

橋本教育部長)今ですね、国立市は支援員を「スマイリースタッフ」というふうな名称で雇用して、各学校、数名程度配置しています。そういう方々の協力をいただきながらですね、今のインクルーシブな教育という中で、通常学級の中で支援をしています。

 ただ、そのお子さん方が、今、ややもすると、その支援員が関わりすぎることによって、クラスの中の児童・生徒とやっぱりこう関係性が持ちにくいというようなところも出てきているという課題もあるんですね。ですから、じゃあさらにその支援を要する特性のあるようなお子さんが増えたときに、その支援員を増やしていくのかっていうと、そういう話ではないのかなというふうに我々も今、認識をしてるところです。そこをどのように改善していくか。まさに通常学級の改善というのを、どのような方向でやっていくのかというところを今、小国先生なんかとも相談を始めている。そういうところの実践を、今後、少しずつやっぱり積み重ねていきたい。

荒西岳広・国立市教育委員会教育指導支援課長)特別支援学級のお子さんで通常の学級で学びたい、それから特別支援学校のお子さんが特別支援学級や通常の学級で学びたい、っていう方々が実際にいます。それについて、他の自治体では、年に一度話し合いをして、できるだけ特別支援学校をおすすめしていく、っていうような取り組みを進めていますが、国立市においては、そういった意思は最大限に尊重するということで、その中でできる、人であったり、体制であったりを、もうその都度その都度考えてきたという実績がある。

 ただ、一般的にどういう形が望ましいか、であるとか、実際にそういう形で実践してみたんだけど、結果としてこれはうまくいっていないのではないか、という場面もやっぱりあるんですね。そういったところは、どういうところに改善の余地があったのか、ということをその実践を通して積み重ねていくことで、そういったお子さんたちが通常の学級とかで学ぶことで、「こんないいことがあった」とか「プラスになることがあった」という実践をこちらの糧として、教育関係者や地域のみなさんに紹介することで、意識醸成ができればなというふうに考えているところです。これからかな、というふうに思っています。

「就学通知について検討する」

記者)2点あります。今しがたお話ありました「その本人・保護者が普通学級を希望した場合には、普通学級への所属が認められているということなのかどうか」ということと、先ほど小国先生からもお話がありましたが、原則その全ての児童生徒の就学通知を普通学級にする。そうした上で、特別支援学校を希望する場合は支援学校、あるいは支援学級というやり方をしている自治体もあると思うので、そこも検討する課題の一つとしてあるのか。

 2点目。歴史的経緯として、国立市には三井絹子さんという重度障害者の方もいらっしゃいますが、古くは府中療育センターから出てこられてきて、国立市に生活保障を求めてきた経緯があるんですけれど、その福祉での積み重ねがあって、今度はじゃあ教育の方で「共に」をやっていきたいということなのか。その当事者の方の声に応える形で、福祉と教育を変えていこうということになっているのかどうかを教えてください。

橋本教育部長)まず1点目ですが、これはですね、できる限り本人の意思を最大限尊重してやってます。就学通知のほうもですね、どういう形ができるのかっていうのを検討したいと思ってます。今すぐですね、こういうふうにするっていうところは申し上げられないんですが、先進市もあるようですので、その辺は今後ですね、整理していきたいなというふうに考えているところです。

雨宮教育長)2点目の個別の方のお名前が出た件についてですが、実際、その彼女がですね、その施設に入って、非常につらい経験をして、もうそれはたまらん、という形でですね、そこを飛び出して、地域で暮らしたいっていう形で、国立市にこられたっていうのは経過ですよね。

 実は少し長くなってしまって申し訳ないのですが、当時、今の市長がですね、市役所にいるときにもう三井さんと交流があった。そういう間柄なんです。市長はもうずっと見てきてるわけです。地域で暮らすことの大変さでも、そういう重度の障害を持った方がやっと、まあ40年とか何かと市長は言ってますけれども、それだけかかって、今の状況になった。そのことをすごく市長は重く受け止めているわけです。障害を持ってる方々が地域で暮らせるように、安心して暮らせるようになるのにそれぐらいの年数かかっている、と。だとすると、教育の場でこのことを実現するにも相当な時間かかるんじゃないの、と。

 私も、多分そうだろうなと思ってはいますが、けれども、じゃあ、今から40年したらもうここにいる人たちみんな誰もいないので「いやそうはいかんよね」と思っています。繰り返しの答弁になってしまっているかもしれないのですが、共通理解を得る中でですね、「国立のフルインクルーシブって何なの」っていうところを目指している次第です。「何なの」というのは、フルインクルーシブはもう目標なのですが、「どういう形で実現できるの」っていうのを「何なの」という言葉で申し上げているということです。(終わり)


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