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労働力調査と日本型雇用

 5月29日に最新の労働力調査(2020年4月分)が発表されました.就業者数が前年同月比で80万人,雇用者数が36万人減少.88ヶ月連続の雇用拡大がここに終わったわけです.一方で完全失業者数の増加は13万人.失業率も2.6%とそこまで高い水準ではありません.なぜか?
 今回の結果をおちついてみると日本の雇用統計のクセがよくわかります.また米国と比較すると日本の労働市場の特徴を理解する上でも有用です.そこで,今日はちょっとお勉強してみましょう.

衝撃的な米雇用統計

 毎月はじめに報告される米国の非農業部門雇用者数からみてみましょう.まずは2000-2019年までの雇用者数増減の推移をみてみましょう.

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雇用者数の増減なので,雇用の減少≒失業増です.2009年のピークは言わずと知れたリーマン・ショックですね.リーマンショック後,米国では景気の拡大が続いていました.雇用統計が2010年以降継続してプラス領域にあることからも,同時期の景気拡大が確認できます.

さて,問題は2020年です.上図に2020年1月~4月の数字を足してみましょう.縦軸に注目です.

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2000-2019年までのデータは両図で全く同じです.2020年4月の雇用者数2053万人減というを入れると……もうリーマンショックはもしかしたら「蚊に刺された程度」なのではないかと勘違いしてしまいそう(ちなみに当時の与謝野馨経財相は正確には"蜂に刺された程度"といっています).
 たった一月で雇用の15%が失われました.このような急激な雇用の縮小は世界大恐慌期にも経験したことのなかったスピードです.

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