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やっぱり「選挙に行こう」系キャンペーンが苦手【全文公開版】

 昨年の都知事選に関連して,似たような話を書きました(→).その焼き直しです.「選挙に行こう」「投票に行こう」系のキャンペーンが嫌いです.そらにこの手の話を得意満面でしている人が苦手です.これは選挙のたびに主張していきたい(笑)

誰からも批判されない主張

 「選挙に行こう」って言っても誰からも怒られたり,批判されたりしない.この手の誰からも批難されない主張って,えてして,何の意味もない主張だったりする.以前のエントリでは,

 私も,そして多くの人が,選挙には行った方が良いと思っています.大体の人が正しいと思っていることをそんなに声高に主張されても……「きょとん」としてしまうのです.
 選挙へ行こう系の主張って付加価値がない(彼らの話を聞いてもそこから得る新情報や新知見がない)のです.

と書きました.加えて言うなら,「選挙に行こう」発言に共感したり,それを賞賛する人はもともと選挙に行っているだろうし,元々選挙に関心が低い人が「選挙に行こう」っていわれてもうるさく感じるだけなんじゃないかしら.このような付加価値のない発信によって投票率があがったりすることはないでしょう

 誰からも批判されないし,何の効果もないけど,何かした気になる……という「選挙に行こう」キャンペーン,なんか空虚な善意の押し売りみたいでどうも好きになれないんです.

投票率をあげているのは

 例えば,野球ファンを増やしたい(?)と思ったとき,日本における野球文化の価値について演説する人はいませんよね.ファンを増やしたいなら,フツーはスター選手が出る試合,きっと盛り上がるカードなどに友達を誘ったりするんじゃないかな.そして,自分が好きなチームや選手の魅力について力説したりするんじゃないかな.

 仮に「投票率を上げること」が目的であるとしたら,その達成のために役立つのは,「投票に行こう」じゃなくて

○○党の政策がいかに優れているかを説明し,
候補者の○○さんがいかに魅力的かを語る

ことなんじゃないだろうか.「選挙に行こう」なんていう抽象的な言葉は人を動かすことはない.人を動かすのは,

「○○に投票しよう」

の方だ.

 結局のところ,投票率を上げるのに役立つのはフツーの選挙活動なんじゃないかな.いろんなところで批判されている候補者の名前連呼,組合等組織の推薦ーーそして理由はわからないけどなぜか「一緒に選挙に行きませんか?」と言ってくる知人の方が,メディアのインタビューや個人のSNSで「選挙に行こう」とか言ってるよりよっぽど投票率向上に役立っているんじゃないかな.

 そして中長期的には,各政党・各候補者が普段から地道に続けている選挙区での活動はもちろん,なんなら政治資金集めのパーティこそが投票率を向上させている

 普段の活動,そして選挙活動には無関心なのに,選挙が近くなると急に「投票に行こう!」「投票率を上げよう!」みたいに言ってる人見ると,なんだかええかっこしいだなぁと感じてしまうんですよね.

ちょっと脇道(メディアの話)

 正直,私は投票率を向上させることが至上命題であるとはどうしても思えないんです.投票するも自由,しないも自由です.政治・政策(そして政治家個人)への関心向上の結果として投票率が上がることは実に望ましい.一方で政治への興味関心の向上なしに,インセンティブの付与,ましてや罰則によって投票率が上がることに意義があるとは思えない.

 人々を投票に向かわせるのは「○○氏を議員にしたい」「○○党の発言力を高めたい」という意思です.このように考えると,投票率を上げるためにメディアが出来ること……も見えてくるんじゃないかな.

 いまもなお,マスメディアで「識者」「タレント」が支持政党を明らかにして発現することは希です.政治関連番組くらい,支持政党や推し候補の名前を明らかにして討論・議論をする習慣が定着すれば,「○○氏を議員にしたい」「○○党の発言力を高めたい」と考える人の増加ーーひいては投票率の向上につながるのではないでしょうか.

 おまえ(飯田)もそんなの明言してないじゃんといわれればそれまでですが…… 正直,見る人が見れば識者・タレントがどの政党の主張に賛同的で,どの政党に批判的かなんてすぐわかりますよね.でも,選挙・投票にいまいち関心を持てない(投票しない可能性の高い)人はそうではない.より多くの人に政治・政策,そして政治家に関心を持ってもらう(投票可能性を高める)ためにはよりわかりやすく,出演者が「推し」を推す番組があってもいいように思うんです.

 もっとも出演者が支持政党を明らかにする……ってのが放送法4条(二項:政治的公平)から難しいのは確か.むしろ,放送法4条に由来する政治報道の自主規制のあり方――各番組が中立を求められるのではなく,局全体でバランスがとれていれば良いとするなどの方針転換が求められるのではないでしょうか.

 
みんな選挙に行こうぜ!

 投票率は上げるモノではなく,上がるモノです.じゃあどうすれば投票率が上がるか.政治・政策・政治家……いずれかに関心を持つ人の割合を高めていくことによって投票率は「上がる」.

 政治・政策・政治家への関心を高めていくモノは何か.メディアでの報道や政策に関する紹介・解説も大切だけど……そういう空中戦よりも,やっぱり勝負は地上戦なんじゃないかな.

 政治家個人がマメに地元で講演会や政治報告会を開く.政党・政治家がネットを通じてもっと発信する.そして支持者は,支持政党や政治家の講演・イベントにより多くの人が足を運んでくれるように勧誘や情報発信をする.私もたまに政治家のとこで講演するんだけど,こういう活動をしっかりと続けている政治家の方はやっぱり選挙に強いし,選挙に強いということはより多くの有権者を投票所に向かわせたということで投票率向上への寄与も大きいように感じるのです.

というわけで,

みんな(が)選挙に行(きたくなるような日々の政治・政策への発信をしてい)こうぜ!

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