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只見線根岸駅「花紋屋旅館」

今年(2022年)10月に只見線が11年ぶりに全線再開されるという報道を聞き、久しぶりに乗車しに行った。只見線は今まで小出~会津柳津の区間は何度も途中下車したり温泉宿に泊まったりしてきたが、会津若松に近い側は一度も降りたことがなかったので今回行ってみることにした。

当日は天気が良いこともあり目的地の手前である会津坂下駅で下車した。只見線沿線では若松に次いで大きい町であり空いていた車両もこの辺りから込み始めてくる。駅前の食堂でラーメンを食べた後、ひたすら南へ田んぼ道を進んでいく。道中田んぼの中に木が密集している箇所がありいかにも神社がありそうなところを寄り道しながら進んでいった。途中5社くらいの神社を参拝することができた。

坂下駅から歩くこと約1時間半、今日の目的地である根岸駅に到着した。根岸駅と聞くと神奈川県にある根岸線の駅と多くの人は連想するだろうが、開業があちらは昭和39年に対して只見線の方は昭和9年と早くから開業している。駅の周辺は民家が無く田畑があるだけと少々寂しい雰囲気だ。
駅から5分ほど歩くと集落があり、その先には中田観音で知られる弘安寺がある。今日泊まる旅館はその門前にあった。

花紋屋旅館は大正時代頃に創業した旅館。現在切り盛りしているおかみさんで4代目にあたるという。立地の通り中田観音の拝観、参拝客の休み処や宿泊処として賑わっていた旅館である。かつては根岸駅から多くの参拝客が来ていたという。高速道路の開通で遠方からバスで来る客も増えたというが東日本大震災以後は参拝客が激減し旅館に併設されていた食堂も現在は休業している。花紋屋旅館の向かいには「つるや旅館」というこちらも老舗の旅館があったが、平成26年頃に閉業してしまっている。

今回通された部屋は2階の角部屋。広さは10畳程で館内では最も広い部屋だった。現在宿泊客のほとんどは長期滞在の人達。土日は自宅に帰って月曜にまた戻ってくる人が多いという典型的な駅前旅館の利用スタイルと言える。少数ながら只見線の乗車や写真撮影のため泊まる人も来るという。おかみさんからは先日70過ぎのおじいさんが若松からここまで歩いてきて翌朝は柳津の方まで歩いていったという話を聞いた。朝早く出る人には希望すればお弁当を作ってもらえる。

宿泊した部屋

宿の廊下には寅さんの中田参りという写真があり、これは何かとおかみさんに訊いたら。「男はつらいよ」の第36作目、「柴又より愛をこめて」冒頭のカットだった。後ろの建物は建て替え前の旅館で、映画が公開された翌年の昭和61年に現在の建物に建て替えられている。実際は向かいのつるや旅館を撮る予定だったが、つるやさんは既に新しく建て替えたばかりだったので古いうちの方を撮るようになったとおかみさんは言っていた。軒下に干してある魚はタラでこの地方ではボータラという料理が名物であったが作るのに非常に手間がかかるため現在では正月くらいしか作らないという。
(宿泊日2022、5、28)

翌朝撮影した只見線の始発列車




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