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刃を衒うサテュリコン【詩】

刃物をてらう少年たちが庭に集まっているという
眼の前に流されてきたビラにそう書かれていました
庭には知らないうちに誰かが植えた花々が咲いているばかり
久しぶりに現れたあなたに意図を訊ねました
あなたは私と一緒に首を傾げるのでした

色好みで罪に燃えやすい私達なら
夕べ訪れた刃の閃きに酔いしれ
真夜中の噴水で抱き合い
錆びたコバルトの塊を食っているでしょう

沸き立つ血の流れになり大地の底まで染み込んでいくとき
風に溶けた躰を思い
光に透る限りない執着を
燃え殻の不気味さを
靴底に潰れた所有欲を思うでしょう

私があなたを呪うとき
日暮れの悪童達が家で待っている
その食事はせめて温かいですか

『サテュリコン』は古代ローマの小説。堕落したローマの姿を描き、登場人物達の退廃性や悪徳が特徴。

因みにサテュロスというのは自然の豊穣の化身、欲情の塊とされる半身半獣の精霊。名前の由来は男根という説まである。


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