発達障害→自助会のススメ

自助会(セルフヘルプグループ)が発達障害の生き辛さを軽減する可能性について。
※「当事者会」という表現もここでは「自助会」と同義とします。

はじめに
発達障害という言葉は広く知られるようになってきたが、具体的な対処法は確立されていません。そんな中で、発達障害の当事者たちが主催する「自助会」が、自分の特性を理解し、生き辛さを取り戻すに効果があるのではないか、という仮説を私は持つようになりました。

仮説のきっかけ
私自身は27歳の時にADHDの診断を受けた発達障害の当事者です。診断後、セルフヘルプグループを自分で主催することにしました。自分以外の当事者に会って、話をしてみたいと思ったからです。17年前の4月に大阪府堺市で設立したのが「ブルームーン(現在さかいハッタツ友の会の前身)」です。

セルフヘルプの効果
主催してみて、多くの当事者や家族から話を聞くと、同じ発達障害でも人によって得手不得手や特性の比率が大きく異なり、困り感も人それぞれだということも分かってきました。一方で、発達障害の困り事にはパターンがあることにも気がつきました。発達特性の違いや個々人の環境の違いは、解決策と直結しないのです。

私は自助会で気付いた事を、参加者と共に実践しました。数年後には私自身だけではなく、多くの参加者の生き辛さが軽減しました。発達特性が無くなることはないが、困り事に対する自分の捉え方が変わることで、本人の言動が変化し、それに反応するように周囲の人との関係性が好転するのです。結果として「多くの人に助けてもらえる人」になりました。

自助会にセルフヘルプ効果がある理由
同じ発達障害を持つ「ピア」との対話によって自己理解が深まり、自身の障害を受容していくようになる事にポイントがあります。月に一度2時間、繰り返し対話を重ねることで、少しずつ本人の意識が変化していきます。この際、ピアによる「共感」と「勇気づけ」によって、参加者は自分の本来の気持ちや感覚に立ち戻る機会を得るのです。誰に教えられるのでもなく、対話の中で自分の意識の偏りや思い込みに気づくようになります。これが「みずからを助ける」という自助会の本来の意味につながるのです。

自助グループの課題
課題①
発達障害におけるセフルヘルプグループの効果を実証しようとする研究者が少ない。この課題の原因は、研究者に対して自助会の認知度が低いこと、並びに「セルフヘルプが発達障害の生き辛さに効果がある」という仮説を持つ研修者が少ないことが考えられます。本稿を上撰した意図はここにあります。

課題②
地方が手薄。東京、大阪、名古屋、福岡などの都心部および郊外には多くのグループが有りますが、地方都市にはグループ自体が存在していないことも。地方をカバーする体制づくりが求められています。

課題③
自助会と医療や福祉との他職種連携に繋げる取り組みが足りない。当事者たちの団体が長期安定運営されていけば、社会資源として支援体制の一翼を担うことが可能ですが、この視点を持って連携を進める「ハブ機能」か必要とされています。

③の事例
大阪府堺市では、人口80万人の政令指定都市である特徴を活かして、発達障害支援センターが当事者や家族への直接支援とハブ機能を果たしています。公的な支援機関だけでなく医療機関や福祉事業所とも連携し、そのネットワークの中には当会も含まれています。それぞれの得意分野を活かして「たらい回し」ではない効果的な紹介を実現している。この事例を多くの自治体や支援機関が学んでもらいたいと思います。

まとめ
発達障害の生き辛さに効果のある自助グループがこれから質量ともに増えていくことは確実です。これらを理論的に下支えする研究成果が今後ますます出てくることを切に願います。

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