なぜ配信されない?「半沢直樹」から考える権利者の強さ

予想されていた通り視聴率が絶好調のTBS日曜劇場「半沢直樹」ですが、「視聴率のためにあえて配信をしない!」「配信よりも視聴率だ!」という声をチラホラ聞きますが、これはただの陰謀論です。

順を追って説明しましょう。

TVerを作ろうと言ったのはTBSテレビ

TVerを作ろうと言い出したのは、2014年9月頃に当時民放連会長であった井上弘会長(現TBSテレビ相談役)であります。以下のNHK文研の村上研究員の発言が物語っている通り、井上会長の功績が非常に大きいです。

「井上会長のイニシアチブがなかったらこの民放横断のサービスは存在していないのではないかと言われますが」ー村上 圭子(NHK放送文化研究所)https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2018/pdf/20180525.pdf

上記に付け加えて、2020年7月1日に新設されました株式会社TVerの代表取締役社長もTBSテレビ出身の方となります。このようにTBSテレビから見てTVerはTBSテレビの社是に近しい部分があります。

そのため、TBSテレビとしては自社の看板番組たる日曜劇場の見逃し配信を行うのは是が非でもやらなければならない事案であり、特に配信数が事前に見込めるだろう「半沢直樹」は絶対にやりたかった番組だと思います。

放送局は権利者には逆らえない

では、何故TBSテレビは「半沢直樹」が配信を出来ないのでしょうか。理由は単純明快で、権利の都合上、放送局が断れたらそれで終わりです。ここでの権利者とは誰を指すのでしょうか?
NHKの以下の説明が非常に分かりやすいです。

テレビ番組はたくさんの人々の協力ででき上がっており、NHKが作ったテレビ番組を放送以外の目的に利用する場合には、NHKの判断だけでなく、原作者、脚本家をはじめ、出演者など、協力して頂いた多くの方々に改めて許諾を得なければならない仕組みになっています。
https://www.nhk.or.jp/toppage/nhk_info/copyright.html

上記のように非常に多岐に渡る方々が関わって出来るのが放送番組となります。では今回の焦点である配信の権利に関してはどうなのでしょうか?一般社団法人映像実演権利者合同機構から引用してみましょう。

映像作品に出演する際に、実演家が映像製作者に対して何の意思表示(例えば、ネット配信不可あるいは二次利用の報酬ありなど)をせず、「録音・録画」の許諾をしていたのであれば、後にその映像作品がどんなに利用されていても、実演家はもはや自分の権利を主張することはできないというもの。これが、出演時契約に基づく権利主張のワン(唯一の)チャンスといわれる理由なのです。
http://www.pre.or.jp/page/qa002.html

上記の通り、実演家(役者さん等)が配信を認めませんと言ったら、それ以上放送局が出来る事はないです。もし配信を認めないと言った実演家さんがいたら、出演シーンを再編集して切り落とすみたいな作業が発生するかも知れません。そのため、この権利者周りの調整というのはテレビ局において非常にデリケートな作業なのです。

「半沢直樹」は誰が拒否したのか?

一言で言えってしまえば、出演者でしょう。サイゾーに記事が書かれていました。

「少なくとも『半沢直樹』の配信の件は、テレビ制作側や配信サイドの思惑ではないですよ。堺さんが所属する田辺エージェンシーは、配信だけでなく映像化に関してもかなり後ろ向きなんです。さすがに2013年版の『半沢直樹』はDVD化されていますが、2020年版が放送されるまで2013年版はTverで配信されていませんでした。」ーあるテレビ局員
https://www.cyzo.com/2020/07/post_247836_entry.html

私が聞いている限りでは、上記の理由の通りです。配信という意味では、今回ようやくシーズン1の配信がようやく配信出来たのと、シーズン2のダイジェスト版のみです。この配信周りの作業は、本当にTBSテレビは調整に苦労したのかと思います。下手をすれば、TBSテレビの役員が権利者に出向いて直接お願いするレベルの事案だったかと思います。

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