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名言と六ペンス #02 エルンスト・ルビッチ

誰だって自分だけの独自のテクニックを持っているだろう

例えば女の子を落とすテクニックだったり
逆に男を落とすテクニックだったり
はたまたセックスだけしてあとぐされなく別れるテクニックもあれば
感じているフリをして相手をヒャッホーイと喜ばせるテクニックだってある。

そんな風に男女のすったもんだや、ちょっとえっちな夜のテクニック以外にももちろん様々なテクニックを、いろんな人が、いろんな形で持っているはずだ。

もし自分だけのテクニックを持っていなかったら、是非とも自分だけのテクニックを持ち合わせて欲しい。
どんなことだっていい。
ご飯を超美味しそうに食べるとか、やたらといろんな国の首都だけは知ってるか、そんなわけのわからないことでもいい。
もちろん最初はうまくいかないことばかりかもしれないが、磨いていくうちにきっと誰にも真似のできないあなただけの特別なテクニックになるだろう。

それでもやっぱり自分だけのテクニックを探すなんて難しい、無理だ、できるわけがない、死のう
そんな気持ちになってしまった人に、今日は人の心を惹きつけるテクニックに関する名言をお伝えしたい。

今日の名言はエルンスト・ルビッチというコメディ映画監督の名言だ。

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いやマジで誰やねんという気もするかもしれないが心配ご無用。
ぶっちゃけるとこれを書いている自分ですらどんな人物かはあまり分かっていない。
が、しかし知っている人は知っている。
実はこの人映画通の中ではかなり有名なのだ
映画通の中ではかなり有名な人物ということだけは知っておいてもらえれば良いだろう。
エルンスト・ルビッチという人がどれだけすごい人なのか分かってもらうには「ビリー・ワイルダーの師匠」と言えば一番すごさが伝わるだろう。
にわかに、いやそれも誰、という声も聞こえてきそうだが
ビリー・ワイルダーの代表作は「サンセット大通り」や「お熱いのがお好き」などサスペンス、コメディ。
そんなジャンルを選ばず傑作を何作も世に送り出した映画監督だ。
それでも、いやだからほんと誰なの。
という人もいると思うので、思い切って言い切ってみるとすれば「アカデミー賞を何回も獲ってる監督」なのだ。もうすごさはわかってもらえただろう。

話がそれてしまったが今回の名言は決してビリー・ワイルダーの言葉ではない、ビリー・ワイルダーの師匠のエルンスト・ルビッチの言葉だ。

ビリー・ワイルダーという映画監督は驚くくらいたくさんのジャンルの映画を撮っていてこれまた驚くくらいに全部面白いし、お話もよくできている。
そんなワイルダーでももちろん悩む事はある。
そんなときワイルダーはこう呟いたらしい

「ルビッチだったらどうする、ルビッチだったらどうする…」

そうすることで、半ば師匠のルビッチを憑依させるかのようにして、ワイルダーは傑作を数多く生み出してきた。
ここまで語らせてもらえばエルンスト・ルビッチがどれほどすごい人なのかわかるだろう。

そんなエルンスト・ルビッチも、自分だけの独自のテクニックを持っていたらしい。
それはどんなテクニックか

それは、観客を楽しませるテクニック。

楽しませるだけではない、観客を映画に惚れさせ、観客の中の特別な、大切な映画にしてしまう。
彼にはそんな独自のテクニックがあったのだ。

そしてありがたいことにそれを端的に、分かりやすく、でもちょっと深みのある言葉で、弟子であるビリー・ワイルダーにそれを伝えた。
それが今日の名言だ。

では、どうぞ

「映画の中にさりげなく2+2はいくつ?という簡単な質問を置いておくんだ。
ただし答えは決して言っちゃいけない。
それでも観客は喜んで「4!」と答えるよ。
そしたらその観客はその映画をいつのまにか好きになっているんだ。」

エルンスト・ルビッチ

はて?という感じかもしれない。
ならばその言葉を聞いた弟子のビリー・ワイルダーが、その言葉をうまく体現したある映画のシーンを紹介しよう。

ワイルダーが監督した「アパートの鍵貸します」という映画がある。

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主人公のバクスターという男は自分の部屋を上司の不倫のために貸すという裏稼業を営んでいる。
ある日上司に部屋を貸すと、おそらく上司の愛人らしき女性の、鏡の割れた化粧コンパクトが部屋に置き忘れているのに気づき、バクスターはご丁寧に上司にコンパクトを返す。
バクスターには想いを寄せていたエレベーターガールがいた。
しかしバクスターは彼女が例の鏡の割れたコンパクトを使っているのを見てしまう。

とまぁ、こんなシーン。
ここでバクスターは自分の上司の愛人が、自分の好きな女だったと分かりショックを受ける。
このシーンを観るとワイルダーがルビッチに教わったことをしっかり実践しているのが分かる。
言葉を全く使わずに、鏡の割れたコンパクトという小道具一つで、バクスターを失意の底に落としてしまうのだ。

つまりは誰も気づかなそうに見えて、実際は誰でも気づくヒントや証拠を映画の中に置いて、それを観客に拾わせる。
拾った側は自分だけが拾った、自分だけが気づいた!と勘違いする。
そうなると自分と映画が「ある秘密」を握る共犯関係になったように錯覚し、どうしてもその映画を好きなってしまうのだ。
秘密を共有しているというドキドキ感を「好き」と勘違いしてしまう。
そんな経験がある人は少なくないだろう。
こうしてワイルダーはルビッチの独自のテクニックを使い「アパートの鍵貸します」という映画の秘密をたくさんの観客と共有する共犯者となった。
こうなると誰もがこの映画の虜になってしまう。
自分以外にもとんでもない数の共犯者がいることも知らずに。

人間は誰しも自分だけのテクニックを持っている。
最初はおぼろげで、自分ですらそのテクニックを使っていることに気づかないかもしれない。
でも、何度も使ううちにそれは磨かれて、時には少し姿を変えたり、もっともっと洗練されたものになる。
そうして磨いて磨いて、磨き続けることで、エルンスト・ルビッチの名言のように、誰にでも効果のある普遍的なテクニックになるかもしれない。

ただし使う場面と使う頻度には要注意かもしれない。
間違った場面で使ったり、何度も使いすぎると、いつか痛い目を見るかもしれないからだ。

ご利用は計画的に

長くなってしまいすみません
では!!


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