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マンガと映画(アリータ:バトル・エンジェル編)

劇場では観そこねていた「アリータ:バトル・エンジェル」をプライム・ビデオのレンタルで視聴しました。「銃夢」を読みたくなる!

アリータ:バトル・エンジェルに違和感なし

レンタル視聴だが、オープニングの映像からガッツリ掴まれたアリータ:バトルエンジェル。言わずと知れた「銃夢」の世界観がしっかり映像として再現されており、想像以上のビジュアル。
そうそう、こんな実写化を見たかった!と唸るオープニングは、100%ウソの背景ながら、生活感があり、違和感のない様子で、原作ファン泣かせの出来だろう。

公開当時は、原作を知らない者からは「でかすぎる」と揶揄されたアリータの目も、もともとファンであることを差っ引いても違和感なく見られたし、アリータの「少女」としての雰囲気を残すボディも色気があって、素直にヒロインとして憧れを持って見ることができた。

作品を褒めるために他の作品をくさすという方法はあまり好きではないが、「ゴースト・イン・ザ・シェル」が観ててイマイチだったのは、全身義体であるはずの草薙素子のビジュアルが、根本的に「ピッタリスーツを着たスカーレット・ヨハンソン」つまりコスプレにしか見えなかったことに起因すると思う。
とはいえ、ゴースト・イン・ザ・シェルは2017年公開の映画、アリータ:バトル・エンジェルは2019年公開の映画。
2年の間にCGの技術が上がった――と考えれば、ゴースト・イン・ザ・シェルはハリウッド実写映画化が早かったのかもしれない。

(ただしアリータ:バトル・エンジェルの撮影は2016年〜2017年らしいのだけど。)

キャラクターのコスプレではなくイメージをつかむキャスティング

確か公開当時は、「イドがオッサン」という呆れたような声もあったように思う。
確かに銃夢のイドに比べ、完全にイド役のクリストフ・ヴァルツはオッサンだ。(現時点で63歳!)
だがアリータ役のローサ・サラザールも、イド役のクリストフ・ヴァルツも、ノヴァ役のエドワード・ノートンも、単にコスプレしているとか、顔の造作が似ているとかでもなく、実在したらきっとこういうフォルムだろうという雰囲気(イメージ)を守ったキャスティングだった。
そのバランス感に好感を持てた。

で、映画そのものは?

原作を知らず、マンガ原作と知らず、まっさらな状態でアリータ:バトル・エンジェルを観たとすれば、きっと感想は「何じゃこれ?」だろう。
何も解決していない、張るだけ張って消化不良の伏線。
終わった感を出すものの、結局そのラスボス(ノヴァ)何者よ?と、すっきりしないエンディング。

だが原作を知っていれば万事了解。コミックスの4巻あたりまでの話を映画化したのね。だったら終わるわけないよと至極納得。

そもそも2000年頃に、ギレルモ・デル・トロが原作マンガ「銃夢」を紹介するかたちで、ジェームズ・キャメロンが映画化権獲得に動いたという経緯があるらしい。
原作を読んで、これだと思った世界的クリエイターが、この世界観を映画で描きたいと望んだ熱意が結実したアリータ:バトル・エンジェルなのだから、1本の映画としての完成度を求めるために余計なエピソードを盛ることもせず、妙なハッピーエンドも用意することなく、「まだまだ続くよ!」感を出したのは逆に潔いだろう。
発表されてもいないが、ファンが続編を期待するのも無理はない。

根本的に、映画ではなくNetflixあたりでふんだんな予算をつけ、シリーズドラマ化したほうが良かったのでは? と思わないでもないが、2000年から動いていたにも関わらず「アバター」だの何だので遅れに遅れて2019年にようやく公開になったことで、上掲のCGの発達による描写が可能になったのだと考えれば、これはこれで良かったのだ。

なにせファンが納得のビジュアルでザレムやクズ鉄町が描かれている。モーターボールは大迫力だ。(もっと観たかった。)そこに生きるガリィ達が動いている。その圧倒的リアリティだけで満足だし、映画を観た後に銃夢をもう一度読みたくなる。
そうそう、この続きはこうだったよね〜と確認するために、改めてぼくは今、銃夢のコミックスを電子書籍でポチってしまった。

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アリータ:バトル・エンジェルは銃夢のためのPV

アリータ:バトル・エンジェルの続編は発表されていない。
しかしそもそも2000年から製作が動き、映画化が報じられたのは2003年。我々は16年も待ったのだ。続きはまた待てるし、待てなかったら……コミックスを読めばよい。

あえて言おう、アリータ:バトル・エンジェルはファンが作ったファンのための大掛かりで2時間あまりの壮大なPVだ。
観たらきっと、銃夢のコミックスを買ってしまう。もともと持ってるならばかならず再読したくなるだろう。実家に置いたままだ……という者も、これを機会に電子書籍で買いたくなる。ぼくのように。

再読が終わったら、「LastOrder」や「火星戦記」にも続けて手を出す未来が見える。

映画を観る。マンガを買う。読むと動いているキャラクターを観たくなり、また映画を観る。映画の続編に期待する――この流れがマンガとそのマンガ原作の映画の一番良い関係だと思う。

猪原は「アリータ:バトル・エンジェル(吹替版)」をプライム・ビデオのレンタルで視聴しました。

猪原は「銃夢」全9巻セット(講談社版)をhontoで買いました。

電書ではなく実体のみだが、2018年から新装版(全5巻)が出ているらしい。

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