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【祝出版!】『三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか?』

こんにちは。
 
IGOcompany【U】です。

囲碁をビジネスに起業して「宇佐美囲碁教室」っていう教室を運営したり、武蔵小杉の「永代塾囲碁サロン」にて指導碁や交流会をしたり、世田谷や麹町、大学などで囲碁を教えて、ご飯を食べてます。

今年の4月からは「新百合ヶ丘囲碁学園」の学園長を任されました。

最近、何度かお知らせしていますが、

「三々定石」の本を出版しました!

【囲碁】三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか? | 宇佐美 太郎 |本 | 通販 | Amazon

電子書籍でも、ペーパーバックでも販売しています。
Amazonの会員の方は、無料で読めたりもするみたいです。

今、Amazonで「三々定石」って検索すると、この本が一番左上に表示されるようで、めちゃくちゃ嬉しいですね。

意外と、三々定石について「全部」を書いている本はなかったんですよね。

生徒さんに、この本を読めば「三々定石の基本事項」は全て分かりますよ、この一冊で大丈夫ですよっていうつもりで書いたんですが、

三々定石って、昔からありすぎる定石で今更誰も本を書かない(殆んどない)、新しく出てきたダイレクト三々についての本は沢山(だけどダイレクト三々のことだけ)、っていう状況なので、

どちらのことも基本事項を満遍なく書いて、この一冊で完了っていう本は、我ながら偶然ですけど良いポジションを取れたんじゃないかと思ったりもしてます(笑。

前も書きましたけど、書籍化するにあたってはトラブルがたくさんありまして、画像を保存しておいても、次から表示されないとうエラーが何度もあって、諦めかけたりしたんですが、地味にコツコツ書いて良かったなぁって思います。

で、

本日のnoteは、こちらでも書籍の内容を公開したいと思います。

前半は、無料です。

もちろん、多少は内容は変えていますけど、有料部分には全て載せて、PDFデータも上げてみますので興味がある人はご購入下さい。

ちなみに、データは(転売や改ざんは勘弁して頂きたいですが)自由に使って頂いて構いません。例えば、友人に説明したい時、お孫さんに三々定石を解説したい時なんかに、印刷して使ってみて下さい。

囲碁講座をする時にも、役立てて下さい。

それから、ちょっと宣伝ですが、

有料noteのマガジンを(サブスクにするのは嫌だったので)単発5980円で提供しています。1回購入してもらえれば、これから書く分も含めて、ずっと有料記事を読むことができます。

【囲碁】棋力向上に役立つ有料noteのマガジン|IGOcompany『U』|note

販売している囲碁教材もダウンロードし放題です。今ある分だけでも5980円よりはお得になっていると思います!

すみません、以上、宣伝でした。。。

さて、

これ以下は書籍の内容です。

※以下本編

『三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか?』

皆さん、こんにちは。

「三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか?」を手に取って頂き、誠にありがとうございます。

著者の宇佐美太郎です。

囲碁の講師をしています。

少し自己紹介しますと、財団法人日本棋院という所で、ずっと囲碁教室の先生をしていました(その活動の他にも、本当に様々な場所で囲碁を教えてきました)。財団法人日本棋院というのは囲碁の公益法人で、そこでの15年間の勤務を経て、2021年の2月に囲碁をビジネスの起業。

「宇佐美囲碁教室」という教室を運営したり、武蔵小杉の「永代塾囲碁サロン」というトコロで指導碁会や交流会を開催したり、様々なイベントに呼んでもらったりしています。

東京や神奈川を中心に活動しています。

他にも、麹町の「ダイヤモンド囲碁サロン」や世田谷の「ひだまり友遊会館」、大学などで囲碁の指導をして、ご飯を食べています。

2023年の4月からは「新百合ヶ丘囲碁学園」の学園長を任されました。

「宇佐美囲碁教室」自体は、今年で10年目に入り、あっという間に月日が経ったなぁと、しみじみと感じています。ありがたいことにコロナも乗り越え、お仕事も増えてきまして今度は八王子でも教室を持つ予定です。

好きな事で生きていけて本当に楽しい毎日です。これからも、そんな囲碁の面白さを皆さんに伝えていこうと思っています。

さて、今回の「三々定石を基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか?」は、囲碁を教えている生徒さんに、この一冊で「三々定石の基本事項」を理解できますよ、これを読めば大丈夫ですよ、と言えるつもりで作成しました。

実際の教室では、あまり「この定石を覚えなさい!」といった指導はしないようにしているのですが(それだと面白くないですよね…)、

やはり「三々定石」は囲碁の対局の中で、頻繁に表れる定石と言っても過言ではありませんので説明しないといけない部分が多々あります。

この一冊に、その「三々定石の基本事項」を詰め込んだつもりです。

ただ、書いている内に、これも説明しなきゃ、これも補足しなきゃと足していってしまい内容が膨大になってしまいました。

基本事項以上と思われる、少し難しい変化や説明も載せてしまいましたが、この本の内容を全部を覚える必要はありません。

この中から何かひとつだけでも、新しいことを知ってもらえたら嬉しいです。ご好評頂けたら、更に踏み込んだ応用編も作成したいですね。

この本が、皆さんの棋力向上に、(ホンの少しでも)お役立てればと願っています。

宇佐美 太郎


『三々定石の基本事項』

「三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか?」では、三々定石についての基本事項を取り扱います。

また、級位者・有段者がうっかりしがちな定石に関わる死活についても、出来るだけ解説を足してみました。

囲碁は、定石の基本形や定石後の狙い、定石外れを打たれた場合などなど、掘り下げると解説すべきことが、どんどん出てきてしまいますが、今回は出来るだけ簡明に覚えるべき基本事項をまとめたつもりです。

【まずは、三々定石を3つに分類】

おおまかにですが、三々定石は、以下の3種類に分類されます。

①【星にダイレクトに三々に入った場合】


01

②【星にカカリ、ハサミの後に三々へ入った場合】


02

③【星にカカリ、シマリで受けた後の三々に入った場合】


03

この他にも、「ツケノビ定石」の変化での三々入りや、「両ガカリの定石」での三々入りなどがありますが、それはまた別の書籍で。

今回は、上で述べた3種類について、それぞれを第1章~3章に分けて取り上げます。

第1章【星にダイレクトに三々に入った場合】

01

右上隅の星の黒石に対して、その内側、この参考図だと「11-三」の場所になりますが、白1と打った場所を囲碁では「三々」と表現します。

上から数えても、右から数えても、3つ目の場所にあるから「三々」です。

囲碁は、四隅すべてに「三々」があります。

この三々に打ってから始まるの定石が「三々定石」になります。

【三々に対して、どう打つべきなのか】

まず最初にお伝えしたいのは、相手から三々に入られた場合は、必ず対応した方が良いということです。

基本としては、三々に対して「オサエ」を打つことがオススメです。

余程のことがない限り、三々に入られたらオサエと覚えてしまいましょう。

【オサエは必ず!まずはオサエの方向を考える】

次のポイントは、三々に入られた時のオサエの方向です。

例えば、下の図、白1の三々入りに対して黒番。

皆さんは、Aに打ってみたいですか?Bに打ってみたいですか?

04

上の図では、右下隅に黒△の星の石があるので、右辺を大事にしたいと考えるのが自然です。

その場合は、黒はAの方向にオサエを打ちます。

【※捕捉】

最近は、AIの登場によって、三々のオサエの方向の考え方も多少変わってきました。どちらをオサエても一局という場合も多々ありますが、やはり基本としてAにオサエるということをお伝えしたいです。

【三々定石の基本形】

では、Aにオサエを打った場合、どのような変化になるのかを見ていきましょう。

05

上の図が、星に対して三々に入った場合の「三々定石の基本形」

囲碁を打ち始めて最初に習う定石のひとつです。

隅が白地、外側が黒の厚みになる変化で、本当に昔からある定石になります。

実は、今では懐かしいと感じるような変化なのですが、この形で習った人も多いと思います。

昔は、序盤にこの定石を打っってしまうと黒が良いと言われていた格好なので、白1とすぐに三々に入る手はあまり見かけませんでした。

しかし、AIの発達と共に囲碁の世界にも変化が訪れ、序盤からすぐに三々に入る「ダイレクト三々」が登場しました。

この「ダイレクト三々」ついては、後で詳しく取り上げますので、まずは昔ながらの「二目の頭をハネる」三々の基本定石について解説していきます。

【二目の頭をハネる変化は見られなくなってきました】

上で紹介した図が、三々定石の基本形ですが、今では黒4と「二目の頭をハネる」変化は、あまり見られなくなりました。

と言うのも…、

【白は白9でハネツギを打たずに、ハイを打つようになったのです】

最近では、下の図のように、黒4の二目の頭をハネる手に対して、白9ともう一本ハイを打って先手を取り(昔はあまりよくないと言われていた二線のハイも今では普通となりました)、ハネツギを決めずに、白は右辺などの大場へ展開します。

06

これはこれで一局と捉えることも出来るんですが、こうなると白が隅も右辺も、両方打っているような局面に感じてしまいます。

それでいて、白がハネツギを打っていない分、外側の黒の石はあまり強くありません。

白からAのノゾキなどを狙われてしまうのです。

【白からのノゾキが後々の狙い】

07

仮にですが、白1のノゾキに対して黒2とツナギを打ってしまうと、右上隅の黒石はまだ二眼がなく、根拠もはっきりしていません。

白は引き続き、黒石への攻め(壁攻め)を狙うことが出来ます。

一般的にですが、この進行は白が良いと言われており、黒はこの形にしたくはないと考えるようになりました。

【白がハネツギを打って、黒にカケツギを与えている場合は黒良し】

上でも紹介した昔ながらの三々定石の基本形。

05

この形になるのなら、黒は不満がありません。白が白9のハネツギを打ってくれて、黒12までカケツギの形を得ていると黒が強く、これは黒が良いと言われています。

ハネツギを打っていない場合と、打っている場合の外側の黒石の強弱は段違いなのです。

【ハネツギを打っている場合のノゾキ】

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仮に白がハネツギを決めた、上の図のような形だと黒は白Aのノゾキに対してBなどと反発しやすくなります(むしろ、白はAのノゾキを狙おうとは思わないでしょう)。

【黒が反発した図】

09

どうでしょうか?白1のノゾキに対して、黒2と反発されると白の石の方が弱く見えませんか?

この場合は、白1のノゾキが打ち過ぎになります。

このカケツギを与えるか否かで、外側の黒石の強弱が変わるので、白は二目の頭をハネられた場合は3本ハイを打って、ハネツギを決めずに、大場に先行する打ち方を選ぶようになりました。

この変化を嫌い、黒も二目の頭をハネる手を打たないようになったのです。

【ここで注意点をひとつ】

黒に二目の頭をハネられた変化の場合、白も白9のハイまでしっかり打つのがポイントです。

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テキストによっては、白7黒8までの形を示している解説もありますが、白9のハイ、黒10のノビまで打つのが定石形と言っても良いでしょう。

囲碁の格言で「二線を這うは敗戦」という言葉がありまして、昔は二線は二本までしかハイを打たないという考え方があったのですが…、

【白7でやめてしまうと黒からのオサエで死活問題】

仮に白9と、どこか大場に打ったとしましょう。

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そうすると、黒10のオサエで隅の白石の死活が気になってしまいます。

【白はハネツギを決めて生きるくらい】

白は、白11と隅からハネツギを決めて生きるくらいのトコロですが、黒に上辺を止められてしまった上、黒にカケツギを与えています。

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また、もし、このハネツギの手を白が忘れてしまうと、

【隅の白は詰碁になってしまいます】

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仮に、白が白11と手抜きをしてしまうと、隅の白石は取られてしまう形。

黒のハネから、黒18が形の急所です。続けて白19と抵抗しても、黒20のツギから黒22のホウリコミで白は二眼を作る事が出来ません。

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詰碁の変化図は色々ありますが、白11と手抜きをしてしまうと、隅の白石は取られてしまうということを覚えておきましょう。

【念のため】

蛇足かもしれませんが、白23の抜きに対しての補足です。

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白23の抜きには、オサエを打たずに黒24などと外していれば大丈夫です。

ついついオサエで打ってしまいたくなりますが、その場合は切りからのコウになってしまい、白に生き返る活力を与えてしまいます。

冷静に外しておけば、黒16の箇所は眼ではなく欠け眼、白は二眼が出来ません。

【三々定石の基本形は見かけなくなりましたが…】

黒の二目の頭のハネに対して、白がハネツギを決めずにノビで打つようになったので、最初に紹介した「三々定石の基本形」は、あまり見かけなくなってしまいました。

とはいえ、私はこの定石で覚えてたよ!って人も多いと思います。

実際の対局に登場することもあるでしょう。

プロの対局では見かけなくなったということですので、この定石を使って囲碁を楽しんでもらっても何の問題もありません。

この本では、二目の頭をハネる変化が少なくなっているという事をお伝えして、これから新しい「ダイレクト三々」に対する打ち方を紹介しようと思いますが、その前に、唯一残っている二目の頭をハネる変化について触れたいと思います。

【二段バネで隅を確保する定石だけが残っています】

二目の頭をハネる変化は、二段バネの定石の時だけ見かけるようになりました。

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黒4のハネが二目の頭をハネる手、そこから更に黒6とハネを打つので「二段バネ」と呼ばれている形です。

黒は、この二段バネの定石を、いつでも打つワケではありませんが、

例えばこのように、

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両側に白△の石ががあり厚みを作っても仕方がないと判断した時などは、黒4、6と二段バネをし黒は隅を確保します。

つまり、

黒は隅の地が欲しい時は二段バネを選ぶのです。

【二段バネに対する白の対応】

黒の二段バネに対して、白7とツギで打つのは白が悪いと言われています。

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三々定石の基本形の時は、白7の石が黒6の位置にありました。

この変化だと、隅に白石が閉じ込められた印象で、黒は上辺も右辺も両方とも白石を止めて勢力にしていますので、これは黒が満足な形なのです。

【白は手入れをしなければ詰碁になってしまいます】

また、先程説明した図から、白がハネツギを決めずにいた場合は、黒1のサガリから白の死活問題です。

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黒1に対する白の受けはオサエや、12-二へのコスミなどがありますが、どちらも正しく打てば黒先白死の詰碁になります。

【詰碁の一例】

白2のオサエに対しては、黒3のハネ、黒5のハネで狭めて、黒7が五目中手の急所です。

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手抜きをしてしまうと、右上隅の白石が死んでしまいますので注意して下さい。

【白7では切りを打って、隅を捨てる】

という事で、黒6と二段バネを打たれた場合は、白は7の切りを選択します。

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隅を黒に明け渡し、外側に白がポン抜きを得る変化になります。

今までの三々定石は、白が隅の地を確保していたのに、この定石の場合は逆になるのです。

先程も言いましたが、このように黒は隅の陣地を確保したい時に二段バネの定石を選択します。今、二目の頭をハネる変化で、よく見かけるのはこの定石くらいとなりました。

また時代によって変わるかもしれませんが、基本的には二目の頭のハネは打たれていないのです。

では、結局、いきなり三々に入られた場合、二目の頭をハネてはいけないのなら黒はどうすればいいのでしょうか?

【ダイレクト三々に対する打ち方・考え方】

これから、AIの発達によって囲碁界に登場した「ダイレクト三々」について解説します。

難しいことも書いているかもしれませんが、あまり気にしないで頂いて。

最後に「級位者でもこう打てば大丈夫という簡単な形」も紹介しますので、その形だけでも使って囲碁を楽しんでみて下さい。

【ダイレクト三々には、ノビてケイマが基本形】

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白1の三々入りから白3、そして、黒4では二目の頭をハネずにノビで打つのが主流となりました。

厳密に言えば、黒4の手でケイマに打つ手などもありますが、変化が難しく簡明ではなくなるので、ここでは「黒はノビを打てば、とにかく良い」と捉えてもらって十分です。

白5のケイマまでで一段落。

黒はここまでで先手を取って大場に先行します。

【ヒラキを打たなくなった現代の碁】

この黒は先手を取って、大場に向かうという感覚が、ダイレクト三々が多用される現代の碁では大切な考え方になります。

基本的には定石の説明をシンプルにするために、13路盤で紹介していましたが、ここでは補足として、19路盤で「黒が先手をとって大場に先行する」という布石の感覚を解説してみます。

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右上隅、白6と打たれた「ダイレクト三々」の定石。

なんてことのない序盤ですが、黒は先手を取って、左上隅の黒11のカカリに先行しています。

これが大場に先行する感覚です。

昔だったら、右辺黒Aに打つことも多かったと思います。

もちろん、その手が悪いワケではありません。定石後、黒は右辺のAの星などにヒラキを打つ手も立派ですが、最近の碁では見かけることは(若干)少なくなってきました。

黒は右辺の星にヒラキを打てば、右辺は黒模様になると思いますが、少しゆっくりしていると考えられています(とはいえ、打っても十分に一局だと思いますが)。

最近は、このように模様にせずに「この黒の外側の三子は思ったより弱くない」と捉えて打ち進めることの方が多いので、この考え方をお伝えしておきます。

わざわざ一手入れずに、大場に先行するので、現代の碁はスピード感がありますよね。

【白からのハサミを打たれても大丈夫】

上の図で、黒がAにヒラキを打たなかった場合、白1とハサミで迫ってこられると右上隅の黒の三子が心配になってしまいますが、

先程も言ったように、この外側の黒三子は思ったより弱くはないのです。

【黒はサバキに苦労しないと言われています】

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白1のハサミに対して、黒は2のコスミツケで様子を見ます。白が3と隅にヒキを打つようであれば、黒4とトビを打っておいて問題なし。黒は、まだまだ攻められるような石ではありません。

【黒2の様子見にノビた場合】

黒2のコスミツケにノビを打たれた場合は、黒4のハネカケツギが現代でよく見かけるサバキの手法。

現代の碁は、サバキの時に、このハネカケツギを多用します。

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【ハネカケツギの後の変化】

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黒はAのアテに対してコウに弾いてもいいし、Cなどと打っても構いません。
もし白に、黒4の石をAのアテから取られたとしても、黒はカケツギで守ればそんなに弱い石ではないのです。

また、黒番であれば黒はBのハネ出しから、隅の白石を取る狙いも残ります(手筋の問題でよく出る形です)。

もう一度言いますが、

右上隅の黒の三子は、そんなに弱くはないので一手入れておかなくても大丈夫なのです。少し難しいですが、外の黒石は「ハネカケツギを知っていれば、そんなに攻められない」と捉えてみて下さい。

このようにヒラキを打たずに、大場に先行するのが最近の碁の考え方になります。とは言っても、例えば置き碁の時などはヒラキを打ったり、黒の石に一手かけても十分だと思います。

互先の碁になると、一手入れずに大場に先行する場合が多いという話です。

【ノビで打つのが、オススメの形】

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今までの説明をまとめると「黒は二目の頭をハネずにノビで打てば簡明」ということなのですが、ここで、ちょっとむずかしい変化が残っています。

ここからは有段者・高段者向けの話になりますので、下に書いた「ノビに相手がオシてきた場合」の部分を難しいなと感じたら、最後にあります「級位者でもこう打てば大丈夫という簡単な形」まで飛ばして読んでもらっても大丈夫です。

その打ち方さえ知っていれば、「ダイレクト三々」を打たれても困らないオススメの形です。

【ノビに相手がオシてきた場合】

相手もノビてきた場合は、黒の応手が難しくなります。

基本的には、黒6のハネに対して、白も白7のハネ、黒も続けて打ちたくなるトコロですが、この形で保留して黒は先手で切り上げます。

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ちょっと不思議な形ですが、この形のまま保留するのがポイントで、

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後に黒はAかBか、局面によって都合の良い手を選択します。

先程紹介した「大場に先行する感覚」ですね。

仮に、もし黒が続けて打つとしたら、自然な手はAのノビですが「すぐに」それを打つことは稀になりました。

【黒8とノビを打てば自然ですが…】

黒8とノビを打てば、自然ですが、黒10までで後手。

最近の碁は先手を重視するので、白に大場に先行されるのを嫌います。

もし、下の図のように、

右下隅黒△の石があれば、黒8の石は黒△の石と関連して右辺を大切に出来るので、黒8のノビは良い手になるでしょう。

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この保留するという考え方が、ダイレクト三々を理解する上でのポイントのひとつです。

【少し難しい変化(右辺でなく上辺を取りたい時)】

先程、黒はノビやハネを保留して先手で切り上げ大場に先行と書きましたが隅へのハネで打つとどうなるのでしょうか?

例えば、右下隅に白△の石がいた場合は、ノビで右辺を取ろうとしても効果的ではないので、黒8のハネの定石を選択することになります。

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※白15は黒8にツナギ。

この定石は、置き碁などで序盤に形を決めたい時も有効です(ただ手数が長くて難しい定石ですよね。僕の教室の生徒さんも苦戦していました)。

白が、黒10の石に食いついてしまうと隅に閉じ込められてしまうので、(そう打つ場合もありますが)白11と右辺をカミ取ります。

ノビた場合とは逆で、上辺に黒が向かい、右辺が白になります。

黒20はシチョウが良い時の打ち方で、悪い場合は一路下に外して打ちます。

長い定石なので、無理せずに、こういうのもあるんだな程度で眺めてもらうだけでも十分です。ここまで理解できている、この定石を知っているって人は立派な高段者だと思います。

【ダイレクト三々に対する簡明な結論】

ここまでの解説が難しかった人には、最も簡明な変化を紹介します。

【もう、どこまでもノビて打ってしまいましょう!】

難しかったなぁって人は、下に示した進行だけ覚えれば十分です。

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もうずっとノビで打って構いません。

白も「車の後押し」なので、参考図のように白9までノビで打ったりはしないと思いますが、とにかく簡明に打ちたいって人は「ノビで打てばいいんだ」と思って頂いて大丈夫です。

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ノビで打った場合は、上の図のような変化になることもあると思います。

厳密にいえば、少し損だったり、先手を取られてしまうという考え方もあるかもしれませんが、(高段者でもなければ)些細な事だと思ってしまいましょう。

大丈夫、アマチュアの碁では、この変化で勝敗は決まりません。慣れてきたら、いろいろな定石に挑戦すれば良いと思います。

第1章【星にダイレクトに三々に入った場合】が長くなってしまいましたが、最初に覚えるべき考え方を出来るだけ簡明に示したつもりです。

1回では覚えられないと思いますので、気になったトコロを何度も何度も読み返してみて下さい。

それでは、次に第2章【星にカカリ、シマリで受けた後の三々に入った場合】に進みたいと思います。

第2章【星にカカリ、ハサミの後に三々へ入った場合】

【黒のハサミに対して、白が三々に入る意味】

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星の石に対して、白1のカカリ、黒2とハサミを打たれた場合は、白3で三々に入るのが自然な打ち方です。

もちろん、局面にもよりますが「ハサミを打たれたら三々に入る」と覚えてしまってもいいくらいオススメの形です。

教室で生徒さんに最初に教える時は、まずは「ハサミを打たれたら三々に入りましょう」と伝えます。級位者から有段者まで使える有効な知識です。

【お互いに不満のないワカレ】

そもそも白1のカカリの意図は、

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「隅を黒の地にする代わりに、右辺を白に下さいね」という打診です。
カカリに受けてくれれば、お互いに根拠を持ち、不満のないワカレです。

しかし、黒はカカリに受けず、右辺を与えないよとハサミを打ってくる場合もあります。

【白のトビは部分的には損をしている】

黒のハサミに対して、白がトビで打つとこのような進行が考えられます。

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黒2のハサミに、白3のトビ、黒4の受けになると、黒は隅の地を確保していますが、白は右辺を得てはいません。

上で紹介した【お互いに不満のないワカレ】と違い、黒が右上隅と右辺両方とも打っていることになります。

もちろん、白3のトビから、白は黒2の石を攻めるなどの構想もありえますが、黒としては隅の地を確保しつつ、右辺も与えていないので、最初に得をしているという展開になります。

だからこそ、白はハサミを打たれたら、三々入ることが自然な石運びなのです(右辺を黒に渡す代わりに、右上隅をもらう「フリカワリ」のような考え方になります)。

「ハサミを打たれたら、三々に入る」の意味が少しは伝わってでしょうか?

では、白が三々に入った後の変化を見ていきましょう。

【三々入りに対してのオサエの方向】

この定石でも、オサエの方向は重要です。

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星の石に対して三々に入られた場合の着手は、十中八九「オサエ」。第1章と同じく、これ以外の手は(ほぼ)ないと言っても過言ではありません。

そして、よく問題となるのがAかBかのオサエの方向です。

布石のテキストなどでもよく題材になっています。

昔は、明確に理由をつけて、こちらをオサエるんだよと説明してきましたが、前述した通り、最近はAIの評価をみると「どちらでも良い」場合も多々ありますが、まずは基本的な考え方を紹介します。

オサエは、「味方の石のある方向」からオサエるのが基本的な打ち方です。その方が、オサエた方向が自分の陣地になりやすいからです。

つまり、上の参考図を例に取ると、黒2の石が右辺にあるので、
黒Aからオサエるのが自然です。

【19路盤の場合も、基本的な考え方は同じ】

この参考図の盤は、13路盤なので味方の石のある方向と簡単に言えますが、
19路盤の場合は、真ん中の星くらいまでで、味方の石のいる方向からオサエると覚えて下さい。

下の図のような場合だと、

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Aからオサエるのが基本的な考え方です。

もし、上辺、中央の星の位置に黒石があれば、黒はBからオサエになります。

もう一度言いますが、辺の真ん中くらいまでで、味方の石のいる広い方からオサエるのが良いでしょう。

黒Aと右辺からオサエを打った場合の三々定石

【味方の石のある方向からオサエる】

白3の三々に対して、黒は2の右辺の方向に味方の石がいますので、黒4のオサエ、白11までが三々定石です。

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味方のいる石の方向、黒2のある右辺からオサエると、このような変化になります。三々に入った白が隅を確保して、黒は中央に厚みを得ます。

これはお互いに不満のない互角のワカレです。

ポイントとしては、黒6のノビを打つことで、この手で間違ってハネを打ってしまう人もいますので注意が必要です(失敗例は後述)。

【ツギではなく黒10のハイで打つ場合もある】

39

黒10をツギではなくハイで打つ変化もあります。

後々、白は、白1の石から黒10の場所に様子見を打ってきたりもするので、その手をなくす意味で黒10のハイが良いのではないかと考えられています。

では、その白からの様子見とは?

※これ以下を有料部分にしたいと思います。

ここまでだけでも読んでいただき、ありがとうございました!

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