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楽食探訪&エッセイ

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#思い出

【エッセイ】息子は、私たちを育ててくれた。

1993年10月11日。私は電器店の一角で、ビデオカメラを手にしていた。にやけた顔して子どもを撮影しているような親父にはなりたくなかった。正直、バカじゃねえか、とさえ思っていた。ところがどうだ。息子が生まれた次の日に、しっかりとビデオカメラを握りしめていたのだ。あちぁ〜、である。親とはこんなものなのか。そんな自分を認めたくないながらも、せっせと撮影し続ける自分を素直に受け入れていた。 我が息子は「翔馬(しょうま)」と名付けた。嫁が、である。私は女の子が欲しかったので、嫁に任

【エッセイ】私のたこ焼き修行。

私は、兵庫県尼崎市生まれ。大阪人ではない。しかし、ヤンキーの街、ディープな下町、という視点から見ると、文化圏はまったくの大阪だと思う。けっして、神戸ではない。「上品」などという言葉を知らずに育ってきた。 食に関しても、大阪と同じ。おばちゃんが一人でやっている、お好み焼き屋。屋台や駄菓子屋で焼いている、たこ焼き。おやじから子どもまで出入りする、汚ったねぇホルモン焼き屋。飾り気のまったくない、うどん屋。 そんな環境で育った私は、生まれた時から、「食」への執着がすごかった。たこ