MEN'S CLUB休刊 〜 男のファッションメディアはどこに行く
長い歴史ある男性ファッション誌「MEN'S CLUB」が定期刊行を終了し、これからは不定期刊行になることが発表された。実質的な休刊だ。
時代の変化と言ってしまえばそれまでだが、かつて読者であり、また誌面に登場したこともある者として寂しさを感じる。
紙媒体に限らず、いま元気がいいのは女性ファッションメディアだ。X(Twitter)のタイムラインを眺めれば、利用者の嗜好にもよるが女性ファッションメディアの記事がズラズラと並ぶ。
対して男性向けメディアは埋没しがちで、中には首を傾げたくなる記事が目立ってきている。数年前の記事を時流と関係なくリサイクルしたり、明らかに事実と違った内容が放置されたり。
私見だが、男性ファッションの方がトレンドの影響を受けやすい、方向転換に時間を要するところがあるのもそういった迷走(あるいは停滞)の一因だろう。
男性ファッション誌全般の「現在の」フォーマットを作ったのは、岸田一郎氏が創刊編集長を務めた「LEON」だろう。
「モテ」「ちょいワル」「ラグジュアリー」など巧みなキーワードを配置し、従来の男性ファッション誌よりもやや上の年齢層の読者を獲得した。そして、MEN'S CLUBを含む多くのファッション誌が追随する。
岸田氏の薫陶を受けた編集者たちが各社に散って中核となっていたこともあろう。また多分に広告獲得の意図もあろうが、
とてもじゃないが手が届きそうもない商品ばかりが誌面を飾ることになる。
こうなるとカタログ雑誌どころか美術展の図録だ。LEONが自他ともに認める「オヤジ」をターゲットに確立したフォーマットを、異なる世代に提示したところで読者に響く(刺さる)とは考えにくい。
男性ファッション誌がそう(ある種のLEONの劣化コピーに)なっていく中で、当の岸田氏もLEONを離れて以降に数度新しい雑誌を世に出すが、いずれも長くは続いていない。いかな人物もってしても抗えない、「雑誌」というメディアにとっては厳しい時代が訪れていたわけだ。
私は資料として、古い雑誌も保存している。もちろんMEN'S CLUBもだ。
読者でもあったので確認するまでもないが、全盛期のメンクラは「モノよりヒト」のライフスタイルマガジンだったと思う。ファッションの蘊蓄話もあるが、同じぐらいに参加型スポーツや音楽、映画のような静的ホビーの領域にも相当の紙幅を割いている。
今では趣味や関心分野ごとに細分化された刊行物・メディアがあるのでファッション誌が以前のように守備範囲を広げる必要はないだろうが、強烈な表現だが「モノだのみのファッションバカ」を量産するだけなら未来への道は今以上に険しくなるだろうと思っている。