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小説:恒星観測員の仕事 第二話

第二話:未知の訪問者

ゼルナは、宇宙船の観測デッキに立っていた。彼女の目の前には、恒星番号105478が赤色矮星として静かに輝いていた。
AI搭載ロボットリゲルは、彼女の隣に立ち、
「ヘリウムの燃焼が終わり、冷却が始まっています。」
とデータを伝えた。
ゼルナはリゲルの報告を聞き、
「今のところ異常は観測できないね。基地に連絡して帰還命令を待ちましょう」
と言った。
リゲルはゼルナの言葉に頷き、「承知しました。」と返事をした。
その直後、宇宙船のレーダーが警告音を鳴らし始めた。ゼルナは急いでディスプレイを確認し、未確認飛行物体の存在を発見した。

「これは...?」
ゼルナはレーダを見つめながら状況の分析をはじめた。

リゲルもデータを解析しながら言った。
「この未確認飛行物体は、速度や形状からして私たちの知る宇宙船とは異なるもののようです。」

ゼルナは慎重に、未確認飛行物体から距離を置きつつ追跡を開始した。しかし、その未確認飛行物体は彼女たちの宇宙船には全く興味を示さず、死滅しつつある星に向かって進み続けた。

ゼルナとリゲルは、未確認飛行物体が観測対象の恒星へと消えていく様子を見守った。

「一体、あれは何だったんだろう...」ゼルナは低くつぶやいた。

リゲルがゼルナの方に顔を向け、「いかがいたしますか?追跡を続けますか?」と質問した。

ゼルナは少し考え込んだ後、首を振り、
「いいえ、この宇宙船の装備では着陸は無理だし、相手の宇宙船が戦闘機だった場合何もできないわ」
と答えた。

その後、ゼルナは船内の通信機器を操作し、社長へ連絡を取った。
「社長、ゼルナです。今、調査中の恒星番号105478で未確認飛行物体を検知しました。その物体は私たちの宇宙船を無視して、恒星に侵入しました。」通信の向こうから、社長の返事が返ってきた。
「報告ありがとう、ゼルナ。宇宙連邦警備隊に連絡し、現地に向かわせる。警備隊が来るまで待機してくれ。」
「了解しました、社長。」ゼルナは通信を終了し、リゲルとともに待機の態勢を取った。

ゼルナは宇宙船のコントロールパネルに手を置きながら、リゲルに話しかけた。
「リゲル、宇宙連邦警備隊が来るらしいよ。彼らについて教えてくれる?」リゲルは答えた。
「はい、ゼルナさん。宇宙連邦警備隊は、宇宙の安全と秩序を守るための組織です。彼らは数々の危機や事件、未確認物体の調査を担当しています。宇宙の法と秩序を守るため、彼らは高度な技術と訓練を持つ精鋭の部隊で構成されています。」
ゼルナは感心しながら言った。「彼らの存在があるからこそ、私たちのような探査隊も安心して任務を遂行できるってわけね。」
リゲルは頷き、「その通りです、ゼルナさん。彼らの助けとサポートがあるからこそ、私たちは安全に探査活動を続けることができます。」

数時間後、遠くの宇宙空間に点々と光る船団が見えてきた。それは宇宙連邦警備隊の船団だった。船団は、ゼルナたちの宇宙船に接近し、通信をしてきた。
宇宙連邦警備隊の船団は銀家系最先端の装備を持っているとはいえ、到着がはやすぎるな。とゼルナは思った。

「こちらは宇宙連邦警備隊、GSOの隊員の方、状況を詳しく報告してください。」通信機の向こうから、警備隊の指揮官の堅実な声が聞こえた。

ゼルナは通信機を操作し、先ほどの未確認飛行物体の映像記録を警備隊に共有した。
「これが先ほど私たちが観測した未確認飛行物体の映像です。物体は恒星番号105478の方向へと進行していきました。」

指揮官は映像を確認しながら、感謝の言葉を述べた。
「情報提供ありがとう、ゼルナさん。私たちがこちらで引き続き調査を行いますので、あなたたちは帰還してください。」

「了解しました。安全な調査をお祈りしています。」ゼルナは礼を言い、通信を終了した。

その後、ゼルナはGSOの基地へと帰還を開始した。

ゼルナはリゲルと共に、帰還の途中で多くのことを思い返していた。
星の終焉と未確認飛行物体。そして宇宙連邦警備隊の登場。
社長はなぜ、今回の任務を私に命じたのか?

宇宙船が基地に着陸すると、ゼルナはリゲルに微笑みを向けた。
「任務のサポートありがとう、リゲル。またね。」
リゲルは頷き、「はい、ゼルナさん。お疲れさまでした」と答えた。

二人(一人と一機)は宇宙船から降り、基地の中へと消えていった。そして、その背後には無限の星空が広がっていた。これは一つの物語の終わりであり、同時に新しい物語の始まりでもあった。

つづく

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