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小説「魔王と社長の憂鬱」第七話

「魔王モルダンの帰還」

魔界に戻ったモルダンは、田中が残していった側近たちを一目見るなりため息をついた。特に、一人の悪趣味な装いの女性側近が目についた。彼女の得意げな笑顔と、魔界の中での新しい地位に酔っている様子を見て、モルダンは鼻で笑った。
また、人間界から連れてきたであろう鎖でつながれた女性など、田中が魔王の地位と権力を利用した痕跡が感じ取られ、嫌悪感がモルダンの体中に走った。
「ふん。」
と鼻から息をはき、モルダンは右手をかざした。
一瞬で部屋の生物は蒸発し、モルダン一人となった。
「おぉ、久しぶりにつかった魔法は心地がいいのぉ。」
その後、モルダンはかつての僕を呼び戻し、人間界の侵略をはじめたのだった。

モルダンは、人間界で学んだ経営術を活かし、人間との戦争を過熱させた。彼女の戦術は冷酷であり、情け容赦がなかった。魔物たちを寝ずに働かせ、彼らの能力を最大限に引き出し、戦争をさらに熾烈に進めた。そして、ついにその日が来た。勇者との最終決戦の日。モルダンは魔界の軍団を率い、人間界との境界に立った。彼女の目は、勝利への確信とともに燃えていた。

最終決戦の日、戦の合間の静けさの中、勇者はモルダンの前に立った。彼の目には、純粋な悲しみとともに、問いかけるような光が灯っていた。
勇者:「モルダン、君は変わった。この間までの君とは全く別の人のようだ。本当に人間に情がないのか? 我々と共存する道は、本当にないのだろうか?」
モルダンは一瞬、勇者の言葉に沈黙するが、すぐに高笑いを始めた。
モルダン:「ハハハ! 勇者よ、私は魔王モルダン。私の使命は、人間を滅ぼし、この地上を我々魔族で埋め尽くすことだ。それが私の本能だ。あぁ、人間の言葉で言うと企業理念というやつかな?ハーッハッハッ!」

勇者は深く息を吸い込み、モルダンの目を真っ直ぐ見つめた。
勇者:「だったら、私は君を止めるために、全てをかける覚悟ができている。」
モルダン:「よかろう、全力で相手をするとしよう。」

二人の間に緊張が走り、最終決戦の火蓋が切られた。

つづく

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