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VR社長消失事件 第一話「社長はどこに消えた!?」

時は近未来、舞台は東京の革新的なIT企業。
この時代、仮想現実(VR)技術は日常生活に深く根付いていた
青山孝司が開発を手掛けるVR会議システムは、社内で最も注目されているプロジェクトの一つだ。
青山が作り上げたこのシステムは、仮想空間でインタラクティブなコミュニケーションを実現し、遠隔地にいる社員同士の壁を取り払っていた。
しかし、その革新的な平穏は突如として崩れ去る。

ある日、青山が担当するVR会議は、企業にとって重要な意味を持っていた。VR空間に集まったのは、社長を含む社内の重鎮たちと、海外の大手クライアントの代表者たち。
彼らはアバターとして、仮想会議室の豪華な長机を囲んでいた。
青山の開発したシステムは、参加者の表情やジェスチャーまでリアルタイムに反映する、画期的なものだった。

会議は順調に進行していた。仮想空間の豪華な会議室に、世界各地から集まった高官たちのアバターが並び、重要な案件について話し合っていた。
青山はシステムの監視を担当しており、彼の開発したVR技術がこの会議を支えていた。しかし、突如として予期せぬ異変が発生する。

社長のアバターが、会議の最中に突然画面から消えたのだ。参加者たちの間に混乱が広がり、一瞬の静寂の後、慌てた声が飛び交う。青山は即座にシステムの状況を確認しようとするが、エラーログには何の異常も表示されていない。

その時、青山の上司である田中部長が、仮想会議室から抜け出し、青山のもとに急ぎ足で近づいてきた。「青山、何が起こったんだ? 社長のアバターが消失するなんて、お前のシステムに問題があるのか?」と田中部長は厳しい口調で問いかける。

青山は冷静に答える。「すぐに調べますが、システムに異常はないはずです。これは外部からの攻撃かもしれません。」と彼は推測する。
しかし田中部長は納得がいかない様子で、「とにかく、原因を突き止めろ。会社の信用がかかっている。」と厳命する。

青山がシステムのデータを精査している最中、突然、社内のセキュリティチームから緊急の連絡が入る。「申し訳ありません、部長。さらに悪い報告があります。どうやら、本日の会議の資料が何者かに盗まれたようです。」

田中部長の顔色が変わる。「なんだと? これはただの偶然か?」
彼は青山に視線を向ける。
「青山、これもお前のシステムのせいか?」

青山は迅速に反論する。「いいえ、部長。私のシステムにはセキュリティ上の問題はありません。これは外部からの攻撃、または...もしかしたら内部からの犯行かもしれません。」

田中部長は急に声を荒げる。「内部からだと? そんなことが許されるか! 青山、お前には真実を突き止めてもらう。会社の信用がかかっているんだ。証明して見せろ、お前のシステムに問題がないことを!」

青山は重いプレッシャーを感じながらも、落ち着いて頷く。「分かりました、部長。事件の真相を明らかにします。私のシステムが問題でないこと、証明してみせます。」

つづく

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