VR社長消失事件 第九話 「コンパスの示す先へ」

青山は、プロジェクト・エクリプスのVR空間の中で、1万年後の東京を散策していた。この無人の近未来都市は、かつて彼が携わったプロジェクトの成果物だった。彼の足元に広がるのは、超高層ビルが並び、ネオンライトで照らされた幻想的な街並み。しかし、そこには人の気配は一切なく、静寂が支配していた。

彼は無人の街を歩きながら、プロジェクト・エクリプスのシステムの核心に思いを馳せていた。そして、ふとした瞬間に、東京駅の時計塔の裏側にシステムの基幹システムがあることを思い出した。青山はその方向へと足を進めた。

時計塔の裏にある隠された部屋に到着した青山は、中に入るとそこには謎の女性が立っていた。彼女はプロジェクト・エクリプスで一緒に仕事をしたメンバーの一人だったが、彼はどうしても彼女の名前を思い出せなかった。

「君は誰なんだ?」青山は彼女に尋ねた。

女性は青山に座標データを渡し、悲しげに言った。「急いで。あなたに残された時間は…」彼女は何かを言おうとしたが、その言葉は途中で途切れ、彼女のホログラムは突然消えてしまった。

残された時間が少ないという謎の言葉に疑問を抱きながら、青山はプロジェクト・エクリプスの基幹システムにアクセスした。彼の指先はキーボードを素早く動かし、複雑なコマンドを打ち込んだ。そして、最後のコマンドを入力すると、仮想空間はゆっくりと消えていき、システムは静かに停止した。

青山の意識が現実世界に戻ると、彼は目を覚ました。目の前には、サーバールームの奥にある仮眠室の天井が広がっていた。彼はゆっくりと起き上がり、自分がどのようにしてここに来たのかを思い出そうとしたが、記憶は霧の中のようだった。

彼は、ホログラムの女性から受け取った座標データを手に取り、地図アプリに入力した。「この場所は…」と呟きながら、青山は地図上で指定された場所を見つめた。

青山は仮眠室を出て、サーバールームを後にした。彼は地図に従い、座標が指し示す場所へと向かうために建物を出た。彼の心は疑問と好奇心でいっぱいだった。この謎の地点には、一体何が隠されているのか。青山はその答えを見つけ出すために、決意を新たにして歩を進めたのだった。

つづく

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