見出し画像

小説:恒星観測員の仕事 第一話

第一話:出動せよ!GSO

銀河系のとある地点に恒星観測を専門に行う会社
**Galaxy Star Observations Ltd.(GSO)**の本社がある。GSOは宇宙空間を漂う巨大な宇宙船であった。この宇宙船の中央部に位置する社長室は、船のコアとも言える場所にあり、部屋の一面には銀河系の星々を映し出す大きなモニターが設置されていた。このモニターからは、無数の星々や星間の物質、遠くの星雲までを一望することができ、それはまさに銀河系の中心からの絶景とも言える光景であった。

恒星観測員のゼルナは、社長室のドアの前で一瞬足を止め、深呼吸をした。彼女の掌には、光る通知が一つ浮かんでいた。それは、社長からの緊急の召集命令だった。
ゼルナは、社長室のドアをノックした。中から「はい、入って」と返事が返ってきた。

ゼルナが中に入ると部屋の中央には大きなデスクがあり、その背後の巨大なディスプレイには無数の星々のデータが映し出されていた。デスクの後ろでディスプレイを見つめていた社長は、ゼルナの足音に気付き、ゆっくりと振り返った。
「ゼルナ、恒星番号105478の寿命が間もなく尽きる。星の終焉を見届けてほしい。」と社長はゼルナに指示を出した。
ゼルナは一瞬の沈黙の後、「了解しました。」と応えた。そして、少し迷った後に質問を追加した。
「その星の終焉には、何か特別な現象や影響が予測されていますか?」
「この恒星の終焉は、近くの惑星やその他の天体に影響を及ぼす可能性がある。その影響の範囲や内容を正確に観測することが君の任務だ。」
社長は答えた。
ゼルナは頷いた。「了解しました、社長。」

彼女は社長室を出ると、速足で宇宙船のドックへと向かった。廊下には、他の恒星観測員や技術者たちが行き交っていたが、彼女の目は前方だけを追っていた。ゼルナの胸には、新たな任務への期待と緊張が交錯していた。
ドックに近づくと、ゼルナの乗ることになる宇宙船が見えてきた。その宇宙船は、最先端の技術で造られた、銀色に輝く流麗な形状をしていた。
宇宙船のエントランスには、チームのメンバーや技術者たちが集まっていた。彼らはゼルナの到着を待っていたのだ。彼女が近づくと、技術者の一人が「全てのチェックは完了しました。出発の準備は整っています」と報告した。
ゼルナは彼に感謝の意を示し、宇宙船へと乗り込んだ。
船内に足を踏み入れると、すぐにAI搭載ロボットが彼女の姿を捉え、近づいてきた。そのロボットは、銀色のボディに青く光る目を持ち、滑らかな動きでゼルナの前に立った。
「ゼルナさん、お待ちしていました。私はAIロボット、リゲルです。この任務でのサポートを担当させていただきます。」
ゼルナはリゲルの顔を見上げ、明るく笑った。「リゲル、よろしくね。一緒にこのミッションを成功させよう。」
リゲルは目を点灯させながら、「もちろんです、ゼルナさん。」と返答した。

船内の照明が一瞬、青く輝いたことで、出発の時間が近づいていることを全員が知った。ゼルナは、船の操縦席に座り、深呼吸をした。リゲルは彼女の隣に位置取り、各種のデータを表示するモニターをチェックしていた。
「リゲル、エンジンのチェックは完了した?」ゼルナが問いかけると、リゲルは即座に答えた。「はい、ゼルナさん。全てのシステムが正常です。」
ゼルナは操縦桿を握り、船のエンジンの起動ボタンを押した。一瞬の静寂の後、宇宙船のエンジンは深い低音を発して鳴り始め、その振動が船内全体に伝わった。外部のモニターには、宇宙船のエンジンから放出される青白い光が映し出されていた。

「発信します。」ゼルナの声に続いて、強力な推進力が宇宙船を前進させた。船体は軽く揺れ、宇宙の星々が窓の外で速く流れていくのが見えた。

リゲルは船の進行方向を確認し、「恒星番号105478へのコース、確定しました。」

ゼルナは小さく頷き、目の前の無限の宇宙を見つめながら、新たな任務への期待と緊張を胸に秘めていた。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?