見出し画像

Classiがいつまでもユーザー目線に立てない理由

※この記事は、2023年1月時点での筆者の利用体験などを基に執筆したものであり、現在のClassiとは異なる部分がある場合があります。

Classiはみなさんご存知かと思いますが、
2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴って全国の学校が臨時休業した際に、
多くの学校で緊急導入が相次いだ教育機関向けSaaSのひとつです。

当時は想定外の契約数増加にサーバーが耐えきれず、
ログインできない、通知を受け取れない、課題を正しく送信できない、
さらには不正アクセスが発覚するなど多くの問題が発生し、
学生や保護者の間での評価は最悪なものとなりました。

では現在はどうでしょうか。
少なくとも先に挙げた致命的な問題は解消済みですし、
サーバーも増強されているようです。
しかしまだまだ、使いやすいサービスとは言い難いです。あくまで私の主観ですが。

私が通っていた高校には2022年度から導入されています。

それ以前はとある企業が運営するSaaSを契約していました。
これは当然有料サービスなのですが、保護者に利用料は請求されていませんでした。
しかし、ここでは多く語れませんが、いわゆる大人の事情でそれまで契約していたサービスの契約が切られて、Classiへの転用に至ったというわけです。

実際にClassiを使っていた私の不満ポイントは8つあります。

一つずつ詳しく説明していきますね。


「Classiホーム」アプリが結局はブラウザベースで、UIもイマイチな点

Classiは生徒向けに、「Classi生徒用」「Classi学習動画」「Classiホーム」
と複数のアプリが提供されていて、
どれを使えばいいのかが分かりにくい状況になっていますが、
運営側は「Classiホーム」アプリを使うようアナウンスしています。

もともと生徒向けには「Classi生徒用」、
保護者・先生向けには「Classiホーム」が提供されていたのですが、
全ユーザー向けに「Classiホーム」に統合されました。
これに伴って、「Classi生徒用」は2023年3月末に提供終了される予定で、
「Classiホーム」への移行を推奨する旨のアナウンスがありました。

前々からアナウンスされていたので、
私の学校で配布されたClassi導入のパンフレットには、
「Classiホーム」をインストールしてください、と書かれていました。
ただ、今どきの高校生はわざわざご丁寧にそんなパンフレット読むわけがありません。(私は読みましたが。)
仮に全員読んでいたとしても、Classiという名のつくアプリを入れればいいんだな、と概要だけ読み取り、
「Classi生徒用」を入れる人も少なくないでしょう。
私の周りには5:5の割合で、ちゃんとパンフレットを読んだ人と、読んでいない人がいます。

そもそも「Classi生徒用」が2023年3月末に提供終了と決まっているのなら、
アプリストアのアプリタイトルに【2023年3月末提供終了】と書いておけば、
誤ってこちらをインストールすることはないはずです。

また、「Classi生徒用」アプリ内での周知もできていないのでしょうか。
「Classiホーム」への移行を推奨するぐらいなら、
その周知の徹底はして当然だと思います。

この項の見出しと内容が合っていないですが、本題はここからです。
提供終了予定の「Classi生徒用」は使ったことがないので、
UI・UX面の感想は割愛させていただきますが、
レビューを見る限りそんなに良いものではないと思います。
しかしそれなりにデザインはよく、使いたくなるような見た目をしている印象です。

一方で、統合された「Classiホーム」のトップ画面は、
各機能にアクセスできるボタンが無機質に並んでいるだけです。
そしてそのボタンを押すと、アプリ内ブラウザが起動してその機能にアクセスできる。ただそれだけのためのアプリです。

自動ログイン機能があるよ〜 通知機能があるよ〜
はっきり言ってそれは必要不可欠な機能です。
それをさも自慢げに紹介されても、何の魅力も感じません。

ブラウザ版は、使うたびにブラウザを立ち上げてログインしなければならないし、
そもそも通知は来ません(ClassiはWeb Push Notification未実装のため)。
だからこんなにも自慢げに、必要不可欠な機能を謳い文句にできるのです。

トップ画面の各機能にアクセスできるボタンですが、
正直どのボタンも押したことはありません。
押すのはせいぜい通知のベルマークだけです。

私の学校はClassiを、
「学校側からのお知らせの配信」「ごく稀に使うアンケート機能」「欠席連絡」
だけのために導入したと言っても過言ではないレベルです。
おそらくClassiの営業さんから、
「御校で実施されている進研模試の成績データを一緒に管理できますよ。」とか
「ポートレートを使えば、生徒さんが成長を実感できるようになりますよ。」など、
上手く使うことができればいいサービスです、という理想論だけ語りあげられて、
いざ導入したら使いもしないくせに、上層の先生は納得して契約したんでしょうね。

仮にいろんな機能を使うにしても、ボタンを押せば開くのはアプリ内ブラウザ。
このアプリはWebショートカットに過ぎず、
機能をほとんど使わないのなら、アプリを使わなくともブラウザでいいのです。

ブラウザ版新ログイン画面において、ログインするだけなのに何タップもしなければならない点

以上の理由から私はアプリをアンインストールし、ブラウザ版を使うことにしました。
通知はたまにしか来ないし、
来たとしても既知の情報などのどうでもいい内容ばかりです。
いざ大事な情報が配信されたときには、
朝のSTなどで担任がその旨を教えてくれるので(お知らせ機能の意味とは)、
そのときにアクセスすればいいだけの話です。

しかし最近になって、そんなに単純な話ではなくなってしまいました。
ログイン画面のUIが変更されたからです。

従来の「旧ログイン画面」では、
一つの画面にClassi IDとパスワードのテキストボックスが両方設置されていて、
それぞれ入力した上でログインボタンを押す流れでした。

ChromeやiCloudのパスワードキーチェーンにIDとパスワードが保存されていれば、
自動入力機能を使って素早くログインが可能です。

しかし、IDが存在しない、IDとパスワードが一致しないなど入力にエラーがあった場合、どちらに誤りがあるのか判別できないという問題がありました。

その問題を解決するため「新ログイン画面」では、
最初の画面ではIDだけを入力させ、その後の画面でパスワードを入力させる、
という2段階構成になりました。(Googleもこの構成ですね)

その結果、自動入力機能を使っても素早くログインできなくなってしまったのです。
ログインだけのために、
ID入力→[パスワード入力へ]を押す→パスワード入力→[ログインする]を押す
と何タップもしなければなりません。はっきりいって面倒です。

…とはいえ、UI・UXの観点からすればこの仕様変更は当然のことであり、私のような捻くれたユーザーのことは無視して、ユーザーフレンドリーな設計になっていると思います。

Classi IDを忘れたときに、自分で再発行ができない点

Classiが導入されたとき、
学校からIDとパスワードが書かれたプリントが個人にそれぞれ配られて、
それに書かれたアカウントを使ってログインします。

基本的にClassiのアカウントは学校のもの、という扱いであり、
パスワードこそ変更できるものの、IDの変更はできません。

万が一最初に配られたアカウント情報のプリントを失くして、
IDも忘れてしまえば、ユーザーはどうすることもできません。

Classiの問い合わせ窓口では一切対応してもらえず、
学校の担当の先生に相談しなければならないのです。
何故か分かりませんが私の高校では、生徒がIDを忘れた旨を相談すると、
Classiを管理している先生からこっぴどく叱られるようです。

疑問が残るので一つずつ挙げていきます。

まずClassiの仕組みについて。
なぜユーザーは自身でIDの再発行ができないのでしょうか。

恐らく、セキュリティ面を考慮してのことだと推測されます。
在籍学校名・学年・クラス・出席番号・氏名・性別・生年月日など
他人でも知りうる個人情報だけでIDの開示や再発行が可能になっていれば、
誰でも好き放題やり放題です。

また、発行されるIDはランダムに作成された英数字で、
こちらで指定することはできません。
これが仮に出席番号など法則性のあるものであれば、
アカウント乗っ取りのリスクが大きくなるからでしょう。

Classiのログインシステム的にも、ロイロノートと違って、
学校IDなどの組織を識別するものは存在せず、
単にIDとパスワードだけでサービスにアクセスが可能です。
そういった点からも、学校や個人の都合で自由にIDを変更することは、
恐らくできないのでしょう。

次に私の高校のClassiを管理している先生の対応について。
なぜIDを忘れてしまったぐらいでこっぴどく叱られなければならないのでしょうか。

GoogleもAppleも、基本的にどのようなサービスでも、
IDを忘れてしまった場合のオプションを設けています。
人間は忘れる生き物です。
IDを忘れてしまうことくらい、人生で何度もあるでしょう。
アカウント情報のプリントだって、大切に保管しておいたつもりでも、
時間が経てば保管場所を忘れてしまう可能性だっていくらでもあります。

学校の先生は過去に、
アカウントのIDやパスワードを忘れたことはないのでしょうか。
これからも絶対忘れることはないと言い切れるのでしょうか。

生徒に落ち度はないとは言いませんが、
しかし怒られる生徒はかわいそうだと思います。

・パスワードの再発行時に、未だに“秘密の質問”を用いている点
・2要素認証に非対応な点

IDはユーザー自身で変更できませんが、パスワードは変更可能です。
パスワードを忘れてしまった際もユーザー自身で再発行が可能なのですが、そのときに使用する認証方法が、まさかの“秘密の質問”です。

秘密の質問なんて、とっくの昔に絶滅したと思っていたのですが、未だにClassiではこの方法が採用されています。

秘密の質問の脆弱性は8年前に既に指摘されていて、詳細なデータも公表されています。

同級生であれば生年月日やペットの名前は比較的容易に入手できるため、秘密の質問はセキュリティ効果を十分発揮できません。

「秘密の質問」は安全か?|NTTデータ

Google, “Secrets, Lies, and Account Recovery: Lessons from the Use of Personal Knowledge Questions at Google”

過去に不正アクセスされたことも踏まえると、セキュリティ面の改善は必須事項であり、メールアドレスやSMSなどを使った2要素認証の導入が必要でしょう。

学習動画を見ても、得られるものが少なすぎる点

新型コロナウイルス感染拡大に伴って全国の学校が臨時休業した際に、教育委員会がスタディサプリを団体契約し、生徒に無償提供してくれていたのですが、Classi導入と同時に契約が切られました。
Classiでは学習動画も配信されていて、学習動画が同梱されているプランを契約していれば利用できます。

Classiの学習動画のクオリティは高いとはいえず、比べてはいけないのかもしれませんが、スタディサプリのほうが圧倒的にわかりやすいし、得られるものも多いです。
あくまで学習動画の配信はおまけみたいなもので、期待しないほうがいいでしょう。

お金を払ってまで使いたいものでは無いので、学習動画非同梱のプランの月額料金が気になります…

このクオリティの低さ、学校側は認識しているのでしょうか?

アカウントスイッチャーが未実装な点(保護者目線)

これは保護者目線の話になるので生徒は関係ないですが、
同じ学校に兄弟姉妹2人以上を通わせていると、
それぞれに対して保護者アカウントが付与されます。

しかし、Classiにはアカウントスイッチャーが実装されていないため、
欠席連絡を登録する際には、一度ログアウトしてから、
欠席する子どもの保護者アカウントにログインし直さなければならないのです。

アカウントスイッチャーが実装されていれば、
わずか数タップでアカウントの切り替えが可能なんですが。

というより、保護者アカウントは統合できるようにすれば良いのではないでしょうか。
子供の数だけアカウントを持ちあわせるとなると、
パスワードなど管理が困難だし、ログインし直す手間が煩わしいはずです。

コストパフォーマンスがよろしくない点(保護者目線)

こちらもまた保護者目線の話になりますが、
上記の通り、正直お粗末なSaaSで、これがタダなら文句は言えないんですが、
しっかりお金とられています。当然、保護者負担。

気になるお値段ですが、生徒1人あたり3,600円/年(月額300円)です。
そこまで高くないじゃん、と言われたらそう思えるかもしれませんが、
Classiのクオリティに対してこの価格を突きつけられると、
個人的にはかなりの殿様商売な気がします。

例えば、最近よくある国内のサービスで、
LINEでお知らせが配信できたり、欠席連絡ができたり、的なサービスを見ると、
ピンキリだとは思いますが大体の年額が10万円/1契約です。
全校1000人規模の学校であれば、生徒1人あたりの年間負担額は100円で済みます。
これぐらいなら、学年費の余剰徴収分から落とせることもあるでしょう。

とはいえ、サービス提供元は大手ではなく、中小企業やベンチャー企業が多め。
Classiよりは信頼度が落ちるのでしょう。


Classiがユーザー目線に立てない理由

たとえどれだけ他社サービス(LINE@を活用したものとか、MS Teamsとか)のほうが利便性が高かったとしても、
Classiは国内で開発され、国内でサービスを提供していて、サーバーも国内にある。
加えて、親会社は進研模試でお馴染みのベネッセである。
たったこれだけの売り文句で、学校や教育委員会の契約を勝ち取れるからです。

ギガスクール構想が前倒しされて導入が急がれ、
学校としては、それなりに使えて、まあまあ安くて、
でも信頼できるものを、できるだけ速く導入したい。
そこにClassiは付け込んだわけです。

Classiのクライアントは教育機関です。ユーザーではありません。

実際に使うユーザーとは直接契約は交わさないので、
ユーザーからクレームが来ても「知らんがな」で終わらせることができます。
学校の顔だけ窺っていればいいので、ユーザーの声は反映されにくいのです。

“Benesse”という強靭な盾と、おじさん世代が大好きな”国産”ブランドを振りかざし、
契約数を大きく伸ばしたClassi。

今後も現状維持ですかね。これ以上の改善は見込めないし、
この調子だと、改悪され続けることだってあり得るかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?