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桜を種から育てて開花させた記録

日本人は桜が好きな人が多いと思いますが、私もご多分に漏れず好きでして、春はカメラを携えてよく桜の写真を撮っております。
毎年のように撮っているとやはり桜を自宅でも見たくなるもので、いっそ自分で種から育って花を咲かせてやろうという気持ちになりました。

基本的に桜は挿し木や接ぎ木で増やすものなので、種から育てるという人は稀なのですが、物は試しでやってみました。
園芸初心者ながら、発芽から3年で開花させることができたので、この度その記録をここにまとめておこうと思います。


はじめに

本記事は園芸初心者が実生の桜を開花させるための奮闘記です。
園芸知識として間違っていることをやってることも多いですし、そうでなくてもベストなやり方ができているとも思えません。
種から桜を育てたい初心者さんの参考になればと思い筆を執っていますが、この記事に内容はあくまで参考程度に留めていただければ幸いです。

また、園芸に詳しい方、桜に詳しい方、アドバイスや間違いの指摘など大歓迎ですので、ぜひコメントをくださいませ。

アドバイスといえば、インターネットでは先人たちが試行錯誤を重ねていて、特にDivina Commedia様の情報は大変参考にさせていただきました。
この場をお借りしてお礼を申し上げます。

種の管理

種は2019年6月に自宅近くから拾ってきました。
あまり発芽率は高くないと思われたため、70~80個ぐらいは拾ってきたと思います。

2019/06 種の採取

種を洗い、乾燥し、湿度を保ちつつ冷蔵庫で保管しました。
冷蔵庫での保管の方が楽で、疑似的に冬の環境を再現できることから早めに発芽させることができるようなのですが、実はこの翌年には発芽させることができず、後から思えば、横着せずにちゃんと土に植えて自然な環境で管理した方が良かったかなと思います。

冷蔵庫保存のメリットデメリットをちょっと考えてみました。

種の冷蔵庫保存のメリット

  • 低温を維持して管理できる

  • 場所をとらない

  • 毎日水をあげたりする必要がなく管理が楽

種の冷蔵庫保存のデメリット

  • 毎日面倒を見る必要がないので、メンテナンスを忘れてしまいがち

  • ある程度湿度があるのでうっかりカビが生えやすい

  • 場合によっては発芽しない可能性がある

翌年に発芽しなかった原因の考察

採取した種は翌年に発芽せず、ダメかと思って土植えにしてからさらに翌年(2021年)に発芽しました。
まさか2年後に発芽するとは思わず驚いたのですが、もしかしたら採取してからすぐに冷蔵庫管理にしてしまったのが原因かもしれません。
自然界では冬の前に夏が来るので、一度25度以上の環境に一定期間置いてから10度以下の環境に置くと自然に近い状態になるので、発芽しやすくなるかもしれません。

個人的には、毎日水をあげながら様子を見て管理する方が性に合っていたと思います。(「定期的に」より「毎日やる」ことを習慣にする方が楽でした)

発芽

種の採取から2年後の2021年3月上旬に発芽しました。
そこから2週間ほどで以下のような状態です。

2021/03 発芽

思った以上に発芽したため、このタイミングで土から掘り出し1つずつピートポットに植え付けしました。
結構根が絡まり気味だったので、発芽したタイミングですぐ個別のポットに移した方が良さそうですが、発芽のタイミングはそれぞれなので、それもそれで手間はかかります。
1つずつポットに植えてから発芽させることができれば理想的ですが、その分場所をとるので考えどころです。

発芽は40個ほどだったので、約50%の種が発芽したことになります。
さすがに多すぎました…。
ちなみにピートポットに移す時に使った土はこちらです。
このタイミングでは根に負担がかからない栄養の少ない土が望ましいとされています。

鉢上げ

発芽から2,3か月後、5月下旬になるとピートポットの下から根が出てくるようになったため、少し大きめのポリポットに移し替えました。

2021/05 鉢上げ

苗の数が多かったためケチってしまいましたが、このタイミングでももっと大きい鉢に移した方が良いと思います。
とにかく成長が早いのでまたすぐ植え替えるはめになります。

また、写真ではポリポットをトレイに直置きしていますが、下から出た水が溜まると良くないので穴をあけておいたり、下駄をはかせて水浸しにならないように注意する必要があります。

用土

使用する土については諸説あると思います。
土の違いによる成長の違いを知りたかったため、いくつかの種類で試しました。

  • 「さし芽種まきの土」を続投

  • プロトリーフの「花と野菜の有機培養土」

  • 赤玉土、鹿沼土、培養土のブレンド

結論から言えば、正直違いが明確にはわかりませんでした。
どれも著しく桜に不向きな土というわけではないので、ちゃんと管理すればちゃんと育ちます。
また、真面目に検証したわけではないので、土による差が出づらく、どちらかと言えば桜の個体差による影響の方が大きいと感じました。
強いて言えば、やはり培養土のみの鉢は栄養分が多いためか育ちが良かったように思います。
(ちなみに開花した鉢は培養土のみで鉢上げした個体です)

虫と病気

どのような虫がついたりどのような病気になるかは地域によって変わると思います。
私がいた地域ではハダニが多く、桜以外の植物でもハダニ処理には非常に手を焼きました。

ハダニ対策ではカネマイトフロアブルがかなり効きましたが、使い続けると耐性がついてしまうのでいくつかの種類をローテーションすると良さそうです。
この辺りは他の園芸系サイトの方が詳しいので割愛します。

病気については、正直病気なのかどうかも良くわかっていないのですが、葉が斑点状に変色するということがわりとありました。
「せん孔褐斑病」というやつなのでしょうか…?

2021/06 桜の病気

狭いベランダで多数の鉢を置いていると、通気性も悪くなり病気も発生しやすかったのではないかと思います。
病気のような症状が出た鉢は他の鉢とは離して置き、症状のひどい葉を剪定するという対応をしました。
症状が出た葉はすべて剪定した方が良いと思いますが、それをすると全部葉を取らないといけないというものも出てくるので悩ましかったです。

病気の種類がわかっていれば具体的な対策もしやすかったのですが、よくわからなかったため何となく殺菌効果もあるスプレーを散布しました。
ベニカXファインスプレーとアタックワンALの2種類を試しましたが、アタックワンALの方が効果がありました。(ただし正確な検証はできていません)

ちなみに、バラ専用のものを使ったのは、桜がバラ科だからというテキトーな理由だったりします。。

2年目

発芽から1年たち、その間にダメになった個体もありました。

  • うまく根が定着しなかったもの

  • 生育が悪かったもの

  • 病気になってしまったもの

鉢が多すぎて管理しきれなかったため、上記のようなものは思い切って処分し、40程度あった鉢は30ほどまで減りました。

2022/04 2年目の春

最初の1年生きることができると、育ちの差はあれどれもしっかり育ってくれます。

本当はもっと大きな鉢で育てるべきでしたが、何しろ狭いベランダで30鉢も置かないといけないのは非常に大変でした。
この頃は土の差はそこまでないなと思うようになり、赤玉土と培養土のブレンドを使って植え替えていました。
割合をはっきり覚えていないですが、水はけの良さを重視していたので赤玉土:培養土=3:7ぐらいの割合だったと思います。
(培養土自体にも赤玉土が含まれていたりするので、赤玉土自体は全体の40%ぐらい含まれている気がします)

根張りについて

桜は根が傷つくとすぐダメになってしまう印象があったので、植え替えや根の処理には気を使いました。
スリット鉢を使っていたので根の張りも良く、加えて育ちも早かったので鉢の下から根が出てきて張ってしまうということが良く起こりました。
もっと大きい鉢を使わないといけなかったのは反省点です。

鉢の数が多いのを活かして、根の処理に関する実験をいくつかしました。

まず植え替え時ですが、どの程度根がちぎれてしまっても大丈夫なものなのか。
根が傷むのを恐れてほぐさなかったり、黒ずんだ根もそのままに新しい鉢に植えてしまいがちです。
しかし、白くて元気な根が多い場合はある程度傷ついても大丈夫なようです。
小さい鉢で根詰まりも起こってしまいがちだったのですが、竹串を挿して多少強めにほぐしていってもダメになったりすることはありませんでした。
もちろん、だからと言ってむやみに太い根をちぎったり元気な根を切るのはなるべく避けるようにしないといけないですが。

次にスリット鉢の下から出てきていつの間にか鉢の下で大量に張ってしまった根の処理について。
ほぐしてきれいに抜いて植え替えたり、鉢を壊して植え替えたりというのが正攻法ですが、そこまで元気な個体の場合、鉢から出た根を全部切ってしまってもダメにはなりません。
切ったところから腐ってしまったり、木が衰えてしまう可能性は当然あるので普通はやってはいけません。
ただ、元気な個体は多少手荒なダメージにも耐えられるということがわかりました。
(ここまで生き残ってる時点で強い個体ばかりなので、生存バイアスかかってる可能性があります)

桜は繊細ですが、元来強い植物なのだなと考えを改めるきっかけになりました。
と同時に、根の成長もすごく早いので植え替えるときは想定以上の鉢にしておかないといけないということも体感しました。(園芸ど素人で申し訳ない)

3年目

3年目の春を迎え、いよいよ丈も100cmを越えようかというぐらいまで成長しました。
前年と同様に、生育が悪いものやダメになってしまったものを処分し、鉢は20程度になっていました。

2023/04 3年目の春

また、この年の5月は引っ越しもあり、すべての鉢を持っていくのは難しかったので、思い切って鉢を10まで減らすことにしました。
育ちが良く根や幹が丈夫なものを選び、残念ながら他のものには涙を呑んで別れを告げました。

春の強剪定

引っ越しに向けて鉢を減らす過程で、駄目元の実験をしました。
桜ではタブーとされている春の強剪定です。
ただでさえ桜は剪定に弱く、するにしても冬にやるのが定石です。
春はそれまで蓄えてきた養分を使いつつ成長するので、養分を使った後に強剪定すると樹勢は一気に悪くなります。

知識では知っているものの、実際やるとどうなるのか。
地上部分の幹20cm程度を残して葉1枚も残らない程バッサリ剪定しました。
そのまま夏を越せず枯れてしまうのかと思っていたのですが、さすがはここまで生き残った精鋭株、しばらくすると脇から芽が出てきて葉がつくようになりました。
とはいえかなり弱ったのは事実で、1,2年分は育ちが後退したと思います。

やはり剪定は計画的にしましょう。

環状剥皮

3年目でも幹(というほど太くはないですが)はそれなりに大きくなってきていて、根に近い部分は1cmを超えるぐらいの太さになりました。
高さも150cm近くになり、そろそろ花芽をつけることを意識したいタイミングです。
果樹などでは花芽分化を促進するために行われたりしますが、桜でも有効なようです。
正直1cm程度の枝で環状剥皮はするものではないと思いますが、これも物は試しということでやってみました。

やり方については他のサイトさんにお任せするとして、他の選定した枝などで練習した後、根に近すぎずある程度太さのある枝に施しました。
幅は1cm弱程度だったと思いますが、短すぎるとすぐに癒合してしまうし、長すぎると癒合せず木の成長に影響してしまうらしく、いい塩梅の長さにする必要があります。

皮を剥いた後は癒合材を塗ってビニールテープで塞いでおきました。
しばらくしたら癒合して膨らんできたのでビニールテープは外しました。

4年目

3年目の冬に枝を見た感じ、花芽のようなものがついていなかったので4年目も咲かないかと思いつつ春を迎えました。
4月下旬は旅行の予定がありしばらく家を離れていたのですが、帰ってきたらなんと花が咲いていたのでした。

2024/04 開花

合計で13, 14輪程と少量で、帰ってきたときには散りはじめていましたが、まさか咲くとは思っていなかったので非常に感慨深かったです。

親木について

今回開花した桜の親

親木の花と比較してみました。
上の写真は一眼レフで撮ったのでやや味付けが入っていますが、母木はピンクのグラデーションが非常に美しい花を咲かせます。
品種については詳しそうな方に聞いたのですが不明とのことだったので、この木も無名の雑種なのかもしれません。

うちの桜と比較してみると結構違いがあるように見えます。
母木の近くにオオシマザクラがあるので、そちらとの交雑種のように感じます。

今後の育成

ひとまず発芽から3年で開花を達成することができたので、1つの目標をクリアできたのは嬉しいことです。
今後はより花付きをよくすることと、樹形を整えて鉢で継続的に育てていける状態を維持することを目標にしたいと思います。
(まだ開花していない株の開花も継続的に)

また、今まで土は赤玉土を多めに使っていたのですが、リン酸を吸収してしまい花付きに影響しそうなので、赤玉土の割合を減らし、堆肥の割合を増やしていこうと思います。

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