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はじめの一歩 -アリオス、ユニバーサルはじめます-

いわきの文化の台所。
いわき芸術文化交流館アリオス で、なにやら新しいチャレンジがはじまるとのことで、igoku編集部(イガリ)、さっそくアリオスへ。広報グループの田中理紗さんにお話をうかがいました。


アリオス ユニバーサルデザイン検討推進委員会

アリオスでは昨年から、総務・広報・制作・施設管理・テクニカル(舞台・音響・照明)の業務を横断するかたちで「ユニバーサルデザイン検討推進委員会」を立ち上げたとのこと。話を聞いてみたら、なるほどなと思いましたが、文化芸術施設におけるユニバーサルって、

ユニバーサルな公演の演目は?
その演目をユニバーサルに広報するには?
問合せや受付のユニバーサルは?
ユニバーサルな物理的動線を確保するには?

と、制作・広報・総務・施設管理・テクニカルすべての業務が連携しないと、ユニバーサルにならないんですね。

そんな部局横断なユニバーサル推進委員会が、今回はじめてアリオス流ユニバーサルなプログラムをお送りするというわけです。


ユニバーサルは広い

アリオス広報担当の田中理紗さん

「ユニバーサルって広いじゃないですか」
田中さんはおっしゃります。

「フクシに特化するんじゃなく、もっと広いユニバーサルを目指したいんです。そして、このプログラムで多様な人が出会ってしまうようなものになれたらと思っています」

年齢・性別・国籍・障害 様々なことをフラットにしてみなさんと感動を共有したいとの思いから、観劇のユニバーサルデザインをはじめるんだ、アリオスの、そして田中さんの静かなる思いがひしひしと伝わってきます。


「非言語」のものがたり

そんな彼女の思いが選んだ今回のプログラムは「マイム」。
パントマイムです。お送りするのは、マイムパフォーマンスグループ『CAVA(サバ)』。

CAVA
丸山和彰 黒田高秋 藤代博之 細身慎之介 田中優希子

パントマイムをベースにストーリー性、音楽性に富んだステージを上演。フランス人音楽家パトリス・ペリエラスとの合作「BARBER」はカルカソンヌフェスティバルに招聘、世界最大の演劇祭エディンバラフェスティバルフリンジでは地元紙より「masters of mime」(パントマイムの匠)と評されるなど、国内外で公演を行っている。また、他ジャンルとのコラボレーションも多く、バレエ「ドン・キホーテ」(演出・振付首藤康之)、コクーン歌舞伎「四谷怪談」(演出串田和美)、日清カップヌードルミュージアム、「デザインあ展」展示映像、NHK音楽祭、衣服ブランドtoi-designsコレクションへの出演など、様々な分野で多岐に渡るクリエイション活動を行っている。

「マイム」なので、「ことば」はありません。
ことばがない。
ことばがないことによって、より多くのひとが楽しめるのかもしれない。
話を聞きながら、思いました。

たとえば、外国人のかた。
たとえば、障がいのあるかた。
たとえば、失語症のかた。
たとえば、小さなお子さん。


igokuツアーでの失語症の皆さんとの出会い

わたしたちigokuは、コロナ禍の前まで、埼玉県の高校生と一緒に、いわきをめぐりながら地域包括ケアを体感し考える「いごくツアー」を展開していました。

2019年のツアーでは、言語聴覚士の方々&「失語症友の会」の皆さまのご協力で、高校生と失語症の方々との交流プログラムをおこないました。”あえて”、事前に失語症の人であることや失語症とはどんな障がいなのかは知らせずに、交流をもってもらいました。失語症という障がいがあること、失語症を抱えている人がいることを知らない状態で、”フラット”に出会い、交流してもらいたかったからです。

最初は多少の戸惑いをみせた高校生たちも、”フラット”に真正面から向き合いました。筆談をしてみたり、ジェスチャーをしてみたり。会話が難しい失語症のかたが歌い出したときは、大きな驚きとともに歓声があがりました。

「どうして話せないのに、歌はうたえるの?!!!!!」


igokuツアーでの高校生と失語症の方々との交流プログラム

そんな経験のある私たちigoku。
今回のアリオスのユニバーサルなチャレンジに、シンパシーを覚えずにはいられません。


「物語を、無言で、つむぐ」

「CAVA」の皆さんの特徴は、単なるパントマイムではなく、
・ストーリーライン(物語)があること。
・音楽も楽しめること

どうです?気になりませんか?

言葉がないけど、身体表現と音楽で物語をつむぐ。
いったい、どんな(表現)世界なんだろう?

ことばがないことで、より多くのひとが楽しめるかもしれない。
そして、単なるパントマイムではなく、ストーリーラインがあり、身体表現と音楽で、物語がつむがれる。

観劇のユニバーサルを目指す、アリオスの記念すべき初回の演目として、サイコーの公演&キャストと言えそうです。


今回の取り組み

演目&キャストは、ユニバーサルに楽しめそうです。
それ以外のユニバーサル・チャレンジポイントを田中さんに教えてもらいましょう。


ポイント1:with チケット

田中 おひとりだと来場が難しく、付き添いの方と一緒に来場される場合は、お二人分のチケット代ではなく、ご本人のチケット代に付き添いの方1名500円でご入場いただけます

-今回のチケットは一般の方で3,000円なので、これまでだと付き添いの方とご本人とでペア券の5,000円がかかりましたが、今回の「with チケット」だと、3,500円でご本人と付き添いの方が観劇できるというわけですね。ナイスユニバーサル!


ポイント2:車いす席、増席!

田中 通常のアリオス中劇場ですと、1階席後方に車いすスペースを設けますが、今回はそのスペース(23列目)に加え、12列目、客席ユニット、下手前方と、車いす席を増やします。
決まったスペースではなく、車いす席も、なるべくお好きな席をお選びください。

田中 さらに「おもいやり駐車場」を5台分ご用意しています。駐車場から館内に、段差なくお入りいただけます。


ポイント3:コミュニケーションの多様化!

田中 言葉によるコミュニケーションが難しいかた、異なる言語のかた、筆談のかたなどを想定して、

・コミュニケーションボード
・ポケトーク
・タブレット
を用意しています。

田中 また今回、初のこころみですが、英語版での本公演チラシも作成しました。

英語版チラシ(裏面)


制作・運営・施設管理・総務・広報と、部局を横断してのユニバーサルな取り組みの数々。全体を通してのユニバーサルな視点と検討が感じられます。


あくまで”はじまり”

田中さんがインタビューのあいだ、何度もおっしゃっていた言葉があります。

「あくまで、これがはじまりなんです。」
「次につなげたいんです。」

今回のプログラムを紹介するアリオスペーパーにもこう書かれています。

「年齢・国籍・障がい。様々なことをフラットにして、皆さんと体験を、感動を共有したいと思っています。
皆さんの声を聞いて試行錯誤しながら、
だれもが楽しめる公演を目指します」

アリオスはこれから、ユニバーサルな観劇を、ユニバーサルなアリオスをスタンダードにしようと思っています。今回の公演「だけ」がユニバーサルなのではなく、すべての公演が、そしてアリオス自体がユニバーサルであり続ける。それを当たり前のスタンダードにする。

そんな決意を感じました。
そのために、アリオスだけで「ユニバーサル」を考えるのではなく、皆さんの声を聞きたい。そのフィードバックを次につなげていく。

アリオスのユニバーサルは、アリオスが成しえるのではなく、私たちが一緒に作り上げていくんだと思います。


”You'll Never Walk Alone”
ひとりじゃないよ

今回のCAVA の演目は、なんと、今回のアリオス用の新作です。
タイトルは、"You'll Never Walk Alone”
CAVAを代表して丸山和彰さんは、
「(タイトルを)直訳すると、
”君はひとりぼっちじゃないよ”とか、
”どんなことをやっていても君はひとりではないよ”
という意味合いなのかなと思います。」とおっしゃっています。

ひとりじゃない。
そして、一人ひとりがもっと自由に楽しめるように、、、

アリオスの今回の新たなチャレンジを、
言葉のない物語の世界を、
いわきのユニバーサルを私たちがつくりあげていくためにも、

10月22・23日、どうぞアリオスへ足をお運びいただき、一緒に楽しみましょう。

【チケット&公演info】

https://iwaki-alios.jp/cd/app/?C=evt&H=default&D=03089


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