第三話 ◯旅館・廊下(夜) 暗くなった屋敷の廊下で、髪を振り乱した白着物の女が立っている。 美耶「彼女は……映画に登場する霊です……」 幾郎「はあ……!?」 白着物の女はゆっくりと近づいてくる。 幾郎「あいつの作ったユーレイが、なんで現実に出てくるんだよ!」 美耶「分かりませんよ!」 女がぼそぼそと何かをしゃべっている。 女「……さない……」 幾郎「幽霊風情に、何ができるっていうんだ」 庇うように美耶の前に立つ。 美耶「ダメです!」 美耶は幾郎の腕を掴
第二話 ◯旅館・廊下(夜) 幾郎「……姉さん」 赤い着物の少女に歩み寄る幾郎。 幾郎「姉さん!!」 少女の姿は霞んでいく。駆け出す幾郎。手を伸ばす。しかし、あと少しのところで少女は消える。 幾郎「待てよ!! 姉さん! 姉さん!! やっと……見つけたのに」 膝をつき、項垂れる幾郎。 突然、屋敷中がガタガタと鳴り始める。 客室で寝ていた客も飛び起きる。 客「なんだ?」 客「じ、地震?」 別の客室でも同様のことが起こる。 バン、と突然何かが手で窓を叩く。 客
あらすじ 人里離れた山奥に佇み、広大な敷地をもつ“桐屋敷旅館“。 実力派若手監督として脚光を浴びている音無睦月は、友人であり、この旅館の12代目当主である主人公・桐屋敷幾郎に頼み、この旅館を舞台に新作となるホラー映画を制作する。 撮影中に主演女優が大怪我を負うなど、公開前から「呪われた映画」として話題を呼ぶ映画であったが、幾郎が映画の中身を見せてもらえないまま、ついに完成披露試写会の日を迎える。 しかし、その上映中に事件が起こり、会場にいたはずの音無は忽然と失踪してしまう。