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生産技術職で身についたスキル

皆様いかがお過ごしでしょうか。イガなおです。


昨日は夕食をやよい軒で済ませた。
最安定食であるしょうが焼き定食の食券を買おうと券売機に向かったところ、「あれ、こんなに高かったっけ?」という疑問が湧き、震えた。
僕の地元が田舎すぎたのだろうか、いやそんなことは決してないはずだ。

恐るベし東京、と思いながら泣く泣く買おうとすると、「食券お買い求めになりましたら、こちらのお席にどうぞ〜」という玉を転がすような声が聞こえた。顔を上げると、そこには本田翼似の天女のような麗人がいた。

僕は、味噌汁を豚汁へグレードアップさせていた。


今日は、前職の製造業技術職で得たスキルについて、書こうと思う。
誰に役に立つのかは分からない。分からないが、あまり世に知られている職種ではないため、ここで知っておいてもいいだろう。
また、これから就職する学生さんにとって、参考にもなるはずだ。


僕は、工場の生産管理・生産技術を職種として担当していた。
聞き馴染みのない方がいると思うので、言い換えると、
一言でいえば「工場のデザイナー」である。

顧客ニーズ・社内ニーズに合わせた生産量・品質を担保するために、工程において不適切な製造条件・設備を修正したり、新製品の製造に対応するために新規設備の導入を行う。
上記にあたっては、様々な部門・会社と共同で案件に取り組むが、最終的にプロパー生産に対して責任を負うのが生産管理・生産技術の立場だ。

ここで得たスキルは、以下の4点である。

【生産管理・生産技術職で得たスキル】
 ・課題設定・問題解決力
 ・情報収集力
 ・情報編集力
 ・交渉力・調整力

順に説明していこう。

課題設定・問題解決力

前職場では、カバーする工程の範囲が広かったこと、立ち上げから日の浅い設備が相手であったことから、課題とする案件の数が多かった。
従って、自分以外の誰も知らないような設備や作業工程があったりする。

よって、生産量や品質などの目標達成のために、何を課題とするのか、それをどう解決するのかは自分に委ねられる。

「ショートケーキ製造工場」で例えるなら、(そんなものがあるかは知らないが)「1日に〇〇個生産せよ」という上位からの司令を達成するにあたり、「いちごの位置がずれて不良品が発生する」という問題がネックとなるとする。これを通常レベルの品質に戻すのも生産管理・生産技術の仕事であり、「なぜ位置がずれるのか」の真因を追究するとともに、足元の生産に対応するための暫定策を考え実行する。

「イチゴを乗せるアームの制御カードの経年劣化」が真因とするならば、予備品交換の準備までの間、「ケーキの初期位置をずらして相対的にイチゴがズレないようにする」といった暫定対応をする、といったところだ。
これを効果的に行う力が問題解決力だ。

また、そもそもネックになっているのは「イチゴの位置がずれる」問題だけなのか、という問いも業務の範囲内にある。
もし「機器の定期メンテナンスにかかる時間が過度に長い」がよりクリティカルな問題とすれば、こちらを優先的に実行する、という判断も自分の役割だ。
これが課題設定力。

情報収集力

また「ショートケーキ製造工場」の例でいく笑。

「イチゴが傾いている」というトラブルがあったとする。
この原因を、直近の変化点としてコスト改善で「生クリームの素材を変更」しており、これにより生クリーム側の粘性が変化して、イチゴが傾きやすくなったこととする。

一方、これは初めてのトラブルではなく、従来はイチゴをセットするアームの不具合が原因であり、これの是正で解決していたという背景があった場合。ベテランはそうするように提言すれども、改善はしないだろう。

このように、真因を的確にとらえるためには、現場からの一次情報を抽出する必要がある。
こうして情報収集能力が向上した。

情報編集能力

前述のように、部署の担当する工程が広かったために、工程全体の全てを細かく理解できている人はいなかった。従って、案件推進にあたり社内承認をする管理者においても、自分の担当工程の中身をよく知らない場合も多かったため、初見の相手に対しても「分かりやすく」課題と実行内容を伝える必要があった。

「分かりやすく」とは、「相手にとって」分かりやすいということを意味する。従って、相手(管理者)が何を気にして仕事をしているか、相手の立場・役割を理解していないと「伝わる」説明はできない。従って、刻一刻と変化する社内・部署内の課題をきちんと認識し、説明しようとしている案件がどの位置づけなのかを理解していることも、こうした情報編集には必要な条件だ。

交渉力・調整力

僕の働いていた工場は非常に巨大であった。
規模が大きければ、色々な立場の人間がいる。イケイケオラオラな現場のおっちゃんもいれば、細かい所まで気がつくインテリ系の現場作業員もいたりする。関係者は社内にとどまらず、協力会社(作業の一部を業務委託する先の会社)やメーカーとも共同で案件を推進する。

当然、仕事に対するモチベーションにも差が出てくる。
特に、工程の規模が大きくなればなるほど、目の前の案件が社内や社会のどんな課題を解決するためのものなのかが見えづらくなってくる。ここがぼやけていれば、やる気が上がりにくいのも想像に容易いだろう。

僕は、最終的なプロパー生産に責任を持つ自分の所属の立場上、こうした関係者を取りまとめて旗振り役になることが多かった。
ここで、上記の理由により案件がうまいことスムーズに進まないこともしばしば。

現場のマンパワーも決して余裕がある訳ではない。新しい案件を進めるということは、作業が増えるということに繋がる。快く思わない気持ちも理解できる。

このような背景の中で求められる行動は、ゼロ番地として、案件を進める意義を伝えること。「なんのために自分たちはショートケーキを造っているのか」ということを改めてチームで共有するのだ。

次に、現場で実行可能か、という擦り合わせを現場と行うことも重要である。自分の頭の中で考えていることが、現場のマンパワーや現状の設備の状態で可能かどうかを現場作業員と対話する。現場の感覚、というやつだ。

こういった交渉力・調整力もずいぶん身についたな、と思う。

おわりに

非常にニッチな内容となった気がしなくもないが、メーカーというと世間からすれば研究職が花形のイメージがある気がするので、こんな職種があるということも頭の片隅に置いておくと、何かの役にたつかもしれない。

また、これから生産技術・生産管理職を志す理系学生諸君には、是非参考になればと思う。

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