上書き保存

 どうやら私は上書き保存が苦手なようだ。

 まだ21歳という世間的に見れば若い年齢ではあるが、それでも多少なりとも紆余曲折あった人生を歩んできたつもりだ。自分から書くのはあれだが、特に私は他の人よりも良くも悪くも濃密な経験を積んできたと思っている。しかし、不思議なことに、人生を振り返ったときに真っ先に思い出されるのは、悪い出来事ばかりなのだ。

 自分の人生の全てが悪いことで埋め尽くされているとは思っていない。むしろ人並みに嬉しいことも経験してきたとも思っている。しかし、パッと過去を振り返ったときに、医学部に現役合格したことや友達と充実した旅行をしたことなどよりも、小中のときに嫌われまくってきたことや高校の部活で鬱になったこと、恋愛で振られまくってきたことなど嫌だった記憶や恥ずかしい記憶の方が先に出てきてしまうのだ。

 人生を上書き保存に例えるとすると、自分はどうやら保存方法が下手くそなようだ。嬉しい出来事が起きたときにすぐに保存ボタンを押せばいいはずなのに、数少ない嬉しい出来事に過度に歓喜してしまい、ボタンを押すことを忘れてしまう。逆に、悪い出来事は何度も何度も経験してきたため、いつもの要領でボタンを押しまくってそのまま悪い出来事フォルダを見返してしまう。こうして今の悲しい性格が出来上がってしまった。

 この上書き保存の方法は長年染み付いたものなので、今さら変えるのは難しいと思っている。もし変えられるとしたら、嬉しい出来事のときにすかさず保存ボタンを押すか、悲しい出来事のときに押さないようにする、それが難しければフォルダを見返さないようにするしかないと思っている。もし変えられればの話だが。

 例えてしまったので分かりづらかったかもしれないが、要するに嬉しい出来事をよく思い出して、悪い出来事を忘れられるような性格に私は変わりたいのだ。絶対その方が生きやすいに決まっている。もう無駄なことでクヨクヨしたくない。幸いなことに私はまだ21歳。記憶の容量はたくさん残っている。今までは悪い保存の仕方をしてしまって、容量を無駄遣いしてしまっていた。なので、これからは効率よく、人生が明るくなるような容量の使い方ができればと思っている。皆さんもぜひ。今日はここまで。



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