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精神科になるなら精神科専門医を取るべき?精神保健指定医で十分?

2023/5/25 追記:精神保健指定医しかない人はどれくらいいるか?
2023/5/25 追記:専門医を目指した方が医師として実力がつく?
2023/6/25 精神科専門医更新基準の出典追記
2023/10/21 精神科専門医更新基準について学会に質問してみた

最近は精神科専攻医数が増加していると話題ですね。

実は、私も「精神科に進もうかな」と考えたことがありました。そのため、精神科についてはかなりリサーチしていました。

そこで、精神科に進む人が一度は疑問に抱くことがあります。

「精神科専門医を取るべきか?精神保健指定医のみで十分か?」です。

なぜなら、精神科専門医までとるのか、精神保健指定医までにしておくのかで進路が大きく変わってくるからです。

専門医を取るには基本的には大学病院のプログラムに入る、つまり医局に入局する必要があります。(※地域によっては市中病院のプログラムもあり)

しかし、大学病院は忙しく、給料が少ないです。また、医局人事で田舎の病院に飛ばされることがあるので、入りたくないと考えている方がたくさんいます。

だから、「精神科単科病院に就職し、精神保健指定医だけとる方が楽」と考えている方も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は「精神科専門医を取るべきか?精神保健指定医のみでいいか?」についてさまざまなデータを元に考察していきたいと思います。

精神科に進もうと考えている医学生や研修医の方に役立つ内容です。診療科選びの参考になればと思います。


精神保健指定医と精神科専門医の比較

指定医と専門医の取得方法を比較

まずは精神保健指定医と精神科専門医の取得の難易度について比較していきたいと思います。

まずは、取得方法の違いについてみていきます。

どちらも求められる臨床経験は同じです。

しかし、精神科専門医は専門研修指導医の指導のもとでの研修プログラムに沿った研修が必要となっており、研修施設が限られています。

精神科の場合は市中病院でもプログラムがあるところもありますが、立地が悪いなど条件が悪いことが多いです。

そのため、大学病院のプログラムが主になります。

試験については、どちらもレポートと口頭試問があることは共通しています。

違いとしては、指定医は2-2.5日精神保健指定医研修会に参加すればいいので、かなり楽なのに対して、専門医は筆記試験があり、研修期間中に学会発表(第1演者としての発表を1回以上)を行うことが義務付けられています。

学会発表をするには、面白い症例を見つけ、資料を作成し、何度も指導を受ける必要があり、かなり大変です。

【専門研修プログラム整備基準】
30条 最先端の医学・医療を理解するとともに、科学的思考法を体得することは、医師としての幅を広げるために大切である。研修期間中に、臨床医学研究、社会医学研究、あるいは基礎医学研究に携わり、これらを発表し論文として報告する能力を養う。専攻医に対し、研修期間中に学会発表(第1演者としての発表を1回以上)を行うことを義務づける。また、論文を執筆することも望ましい。大学院での研究も可能であり、その際の研修年限は、プログラムの達成度による。

出典:日本精神神経学会 指導医・専攻医の方へ】学術総会での演題発表について


指定医と専門医の更新方法を比較

次は、更新方法について比較してみます。

更新頻度はどちらも5年に1回です。それほど負担にはならないでしょう。

指定医は、更新要件として、勤務時間の縛りなどはなく、指定医業務をしてなくても更新できます。

つまり、精神科医として勤務していなくても更新できてしまうのが実情です。

指定医は、めちゃくちゃ更新要件が緩いんですよね。

指定医は隔離や拘束などで人権を制限する資格なので、普通に考えると更新要件が厳しくなりそうなものです。

しかし、更新を厳しくして資格を取れない人が出てくると、精神科の現状の仕事がこなせなくなるから更新できない医師が出てくると大問題になるのです。だから、更新要件がめちゃくちゃ緩いのだと思います。

一方、専門医の更新要件はかなり厳しいです。まず勤務実態の自己申告(原則週4日32 時間以上勤務)が必要なので、週4日以上精神科医として実務をしている必要があります。

原則週 4 日(32 時間以上)勤務が必要という根拠はこちらです。

2023/6/25 追記
Ⅳ.専門医資格認定更新の特例
更新時の勤務日数に関しては原則週 4 日(32 時間以上)の常勤あるいは非常勤でも常勤相当の勤務を ベースとしていますが、申請時に勤務実績 35 年以上の専門医は、その他活動実績の報告により専門医委 員会が認めた場合に限り、常勤未満でも更新できることがあります。 また、連続して 3 回以上の更新を経た 65 歳以上の専門医は、4 回目の更新から更新基準の①診療実績 の証明(臨床経験レポート 2 例の提出)が免除されます。

出典:日本専門医機構認定精神科専門医更新基準

つまり、産業医などになっていたら更新できないんですね。また、臨床経験レポート 2 例の提出と更新単位40単位も必要なので、学会に参加して単位を集める必要もあります。

精神科専門医を更新するのは、正直かなり面倒で時間や労力、お金などのコストがかかるのです。

ここまでコストがかかると更新しない人も出てくると思うのですが、資格がなくても仕事ができるからこそ更新できなくても実務で困らないので、更新要件を厳しくできるとも考えられます。

実務への影響が少なくあってもなくてもいい資格だからこそ、更新要件が厳しいというのはなんとも不思議な現象ですね。指定医とは逆の事情になります。

次は、指定医、専門医のメリット、デメリットについて考えていきます。

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