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『グリーンブック』友情は金では変えない、偏見は友情で変わる vol.210

定例で参加させてもらっている映画会。

今回はグリーンブックを紹介してもらいました。

ちなみにグリーンブックとは、下の画像のようなものです。

1930年代から60年代にかけて、人種隔離政策がとられていた米国で発行された黒人のための旅行ガイドが「グリーンブック」なのです。

胸糞の悪くなる人種差別を痛烈に描きながらも、そこから生まれる友情を美しくもはかなく描いている友情映画です。

見終わったあとには胸が打たれ、自分の偏見や思い込みなどをつい疑ってしまうような思考にもなりました。

今日はこのグリーンブックを見ての感想を思うままに綴っていきます。

痛烈な黒人差別の時代背景

この映画が舞台としているのは1960年代です。

アメリカ北部のように奴隷制度撤廃が謳われている州もあれば、南部のように色濃く奴隷制度が残っている州もあります。

この映画の面白いところは、そんな時代背景がある中で幼少期から育ちが良く天才ピアニストとして活躍している黒人のドクが、そんな奴隷文化の色濃く残っている南部の方へツアーをしに行くという物語です。

南部へ行けば行くほど、差別もひどくなり夜中に表へ出てはいけない、泊まれるホテルが限られている、トイレもまともに使えない、レストランに入ることもできない。

そんなひどい差別に加えて、白人から向けられた視線は非常に冷たいもので、同じ人に向けるものとも思えません。

ちょっとしゃれた服装をしているだけで、リンチの的になってしまうのです。

黒人差別という文化は習うものではありますが、実際に目に見てこのような映画の形で見ると非常に心苦しいものがありました。

そして、内側から沸々と湧いてくる怒り。

しかし、彼らも差別をしているという自覚はそもそもないのかもしれません。

それよりもさらに前のアメリカでは黒人奴隷は当たり前のことでした。

日本でも同様に奴隷、外人を奴隷として扱っていた時期がありました。

そう考えると、文化としてすでに形成されてしまった風習を、根底から変えていく、そもそも変だと気付くには相当な視野の鋭さと、芯の強さが必要なのでしょう。

相手を知る=自分を知る

旅の中で、トニーとドクは少しずつ仲良くなっていきます。

お互いに見えていない世界が相手の中にあることは分かりつつも、そこに触れようとはしていませんでしたが、トニーは一人部屋でウイスキーを飲むドクをみて、ドクはねこばばをしようとするトニーを見て、かかわりを持ち始めようとします。

そもそも、なぜドクはそんな差別社会の南部へと向かおうとしたのでしょうか?

これは黒人の地位を上げるためという彼の思惑があったのですが、南部での奴隷として働いている黒人たちから向けられる冷たい視線に、ドクは悲しくなります。

その道のりの中で、ドクとトニーは喧嘩をします。

白人として黒人を差別する側にいるのに、育ちは良くなく黒人のことをより理解しているトニー、黒人で白人に差別される側でいるはずなのに、育ちが良く黒人にも疎まれてしまうドク。

その相反するけど、似たようなところがある二人が交わることで自分の生い立ちや存在を認識していくのです。

相手を知ることで、鏡となり自分自身をも俯瞰して見ることになるのです。

友の安心感が1歩を踏み出させる

そして、ドクは最後の演奏会会場に到着します。

そこでは、なんとそもそもの会場になっている食事会場に黒人が入れないという差別を受けます。

これまでであれば、黒人に対する不当な扱いに対してトニーが切れてしまっていたところを、ドクがスマートに解釈していましたが、ここでは今まで以上に食い下がります。

そして最後には演奏会に登壇しないことを決断して、その辺の音楽バーに入り込みます。

そこでにおいてあるピアノを演奏し、酒場は大盛り上がり。

ドクも心から音楽を楽しんで演奏することができました。

見てくれのためだけに自分の演奏を聴く金持ちとは違い、心から音楽を楽しみ、自分の音楽に同調してくれている人々を前にして、ドクは達成感を得るのでした。

これは、トニーがいなければ一生出会うことがなかった世界です。

そして、またトニー自身もドクの博に触れることであたらしい世界を知っていきます。

そうして互いの生い立ちを知った深い関係だからこそ、そこにできる友情も熱く最高のものになるのでしょう。

最後のクリスマスパーティーに招待する様子は、心動かされる最高の場面でした。

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