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『シェルブールの雨傘』今も昔も同じ vol.307

常連にもなってきました映画会。

映画会主催のもろさんの映画レビューはこちら

今回のお題映画は『シェルブールの雨傘』

ここまで古い映画(1964年)は正直、初めてに近いです。

古くてもタイタニック(1997年)ぐらいでした。

うーん、そこまで古い映画から何か面白みは取り出せるのか、何か学びは生まれるのか、、、。

といった感情で見たのですが、2時間前の自分に鉄槌を下したい気分になりました。

古い映画だとしても、なぜその映画が賞を取っていたのか、なぜ今もなぜ語り継がれているのか。

それを知ることとなりました。

フランス北西部の港町シェルブール。自動車修理工の青年ギイと傘屋の娘ジュリビエーブは結婚を誓い合った恋人同士だったが、ギイに送られてきたアルジェリア戦争の徴兵令状が2人の人生を大きく翻弄する。

https://eiga.com/movie/54203/

あなたはいま幸せ?

この映画一般的な恋映画なんでしょうが、最後の一言が全てを持っていきました。

「あなた、幸せ?」

この言葉にはどんな思いが詰まっていたのでしょうか?

結果として生活やギイとの間にできてしまった子供のために、別の宝石商の男性と結婚をしたジュリビエーブ。

兵役2年間の間ずっとギイを思い続けていたが、戻ってきた時にはすでにジュリビエーブはおらず、自分を育ててくれた叔母の面倒を住み込みで見てくれている女性と結婚したギイ。

ギイは失恋をして、気持ちに踏ん切りがついた中で新しい恋愛を始め、一方でジュリビエールは踏ん切りがつかず、きっと頭の片隅にある中で生きてきたのでしょう。

そんな背景が一気に流れ込んでくる一言でした。

そして、そんなギイも実は自分の娘には、昔ジュリビエールと話して決めていたフランソワーズと名前をつけている。

なんとも、二人の心境を見え隠れさせる描写に溢れているなと感じました。

そう考えると一体、幸せとはなんだったのでしょうか?

立場や状況を考えると、2人とも同じく結婚して娘がいて、ギイは慎ましく暮らし、ジュリビエールは豊かな暮らしをしています。

側から見れば、ジュリビエールの方が羨ましがられそうな気がしますが、そうでもないのでしょう。

そこにはやはり、自分の気持ちや感情、思いにどれだけ素直になり、そしてぶつかってきたのかが大きいのだと感じます。

自分がこの二人のうちのどちらかを選択するのであれば、どちらの人生を選んでいたでしょう。

今も昔も同じ

これだけ古い映画を見たのは初めてに近かったので、色々と驚く点はありました。

まず、車や人の身なり、まぁこれは当然ですね。

そして、映画の全てが歌で進行するのです。

これはなんというジャンルなんだ、、、ミュージカル?

とにかく、昔にジェネレーションギャップを受けました。

映画としても歩いてもいないのに、二人の後ろで風景が勝手に動いていったりと、そんな荒さもありましたが、時代相当のものなのでしょう。

しかし、何よりも驚いたのはその時代の変化ではなく、これだけ時代が動いているのに、変わらぬものを題材に映画を作っていることでした。

正直、映画を見て昔ながらの雰囲気を感じなかったのです。

こと、恋愛という観点から見れば、今も昔も変わらないのでしょう。

今風に言えば、遠距離恋愛と転勤みたいなものでしょうか。

そこに親近感を感じて、映画自体もすんなりと入り込んできました。

特に素敵な描写があったり、するわけではないのですが、なぜか最後らへんの雨で切り替わる描写は、タイトルともリンクしてとても印象に残りました。

そしてそれが最後は雪になっていることも。

文学を見ても古典に価値があるように、映画も古い名画と呼ばれるものに価値があるのかも知れません。

また新たな興味の扉が開いた映画でした。

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